テラーノベル
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午後になり、奈緒がパソコンに向かっているとピコンッという電子音が響く。
パソコン画面の右下には、社内チャットのメッセージが届いていた。
奈緒は他の部署からの業務連絡だと思い、すぐにメッセージを開いた。
すると三上からのメッセージが来ていたので驚く。
【先日は失礼しました。改めまして仕切り直しという事で、今夜食事でもいかがですか?】
奈緒はすぐにメッセージを開いた事を後悔した。
このメッセージツールは、一度既読になると未読に戻せない。
奈緒がうろたえているところへ、ちょうど恵子が通りかかり奈緒の異変に気付く。
「奈緒ちゃんどうした? 何かわからないところでもある?」
「いえ……」
奈緒が口ごもっていると、恵子が奈緒のパソコン画面を覗く。
そして三上からのメッセージを見つけるなり大声で叫んだ。
「さおりさんっ! ちょっと来て下さい! これ見て下さいよ」
驚いたさおりは慌てて二人の傍へ来る。そしてパソコン画面を覗いた。
「ふーん、あいつかなり調子に乗ってるわねぇ」
さおりは呆れたように言った。
そこで奈緒が質問をする。
「これって一度既読にすると未読には戻せないんですよね?」
「そうよ、戻せないの」
わかってはいたが、奈緒はがっかりする。
その時ノックの音が響いた。
「はーい」
恵子が返事をすると、中に省吾と原田が入って来た。
「あっ、深山さん! 今朝は北海道のお土産をありがとうございました」
「深山さんごちそうさまー。お菓子早速昼休みにいただきましたー」
「どういたしまして」
「あら? 原田さんがここに来るなんて珍しいですね。何かご用ですか?」
さおりが聞くと、原田が少し照れたように言った。
「ここに来ると、喫茶店みたいな美味しいコーヒーがいただけると聞いたので」
「俺達に美味いコーヒーを飲ませてくれ~」
省吾はそう言って丸テーブルの椅子にドカッと座った。
「あらら、ここをカフェだと勘違いしている人がいるわねー。しょうがないなー」
「だったらメニューでも置きます? 昼間はカフェにしてがっぽり稼いじゃうとか?」
「いいわねー恵子ちゃん名案だわー! どうせだったらぼったくりカフェにしてガッツリ稼ごうよ」
「おいおい勘弁してくれよぉ。身を粉にして働いている俺達からまだ搾り取るつもりかぁ?」
「さおりさんも恵子さんもがめついなぁ~」
省吾と原田が参ったなという顔で言ったので、笑い声が響く。
奈緒がコーヒーの準備をしていると、さおりが奈緒のパソコンを指差して言った。
「深山さんちょうど良かった。ちょっとあれ見て下さいよー」
そこで奈緒が慌てる。奈緒はこれ以上省吾に心配をかけたくなかったので、この事は黙っているつもりだった。
「あっ、さおりさんっ」
しかし既に遅かった。
省吾は奈緒のパソコンの前まで行くと、画面に表示された三上のメッセージを見た。
そして大きくため息をつく。
気になった原田もそのメッセージを見た。そして呆れたように言った。
「あいつ全然凝りてないなぁ。すみません、後で俺からきつく言っておきます」
原田は申し訳なさそうに頭を下げる。
「いや、原田さんのせいではありませんが、一度しっかり注意していただけると助かります。直属の上司に注意されれば三上もわかるでしょう」
「承知しました。本当に申し訳ない……」
「奈緒はこのメッセージには返信するなよ。このまま無視していいから」
「わかりました」
返事をした奈緒は、淹れたてのコーヒーをテーブルへ運ぶ。
そこでみんなが丸テーブルへ移動した。
最近、このスペースには役員達がよく訪れる。
誰かが来れば手の空いている秘書がすぐに美味しいコーヒーを淹れてくれるので、いつの間にか役員達が頻繁に訪れるようになっていた。
今日は、今まであまり顔を出さなかった原田までもが省吾に連れられて来た。
美味しいコーヒーと共に五人は北海道土産の菓子をつまみつつ、しばらく談笑した。
省吾と原田はコーヒーを飲み終えると、漸く仕事へ戻ろうと立ち上がる。
部屋を出る際、省吾が奈緒の方をチラリと見たので二人の視線が絡み合う。
奈緒と目が合った省吾は穏やかに微笑むと、軽くウンと頷いてから秘書室を後にした。
コメント
19件
省吾さんの反撃期待しちゃいます❣️
きゃ〜もうね、目の中は2人とも❤️マークね。
三上が不気味過ぎる💦 省吾さん達に丁度伝わって良かった😮💨 それにしても省吾さんの熱視線💕💕奈緒ちゃんもときめいてるよね😆きゅーん💕