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放課後。
教室には部活帰りの声が遠くから聞こえていた。
相談者は机の角を指でなぞっている。
「俺、一人で気まずくなることが多いんです」
遥はノートを閉じる。
「何があった」
「何もないんです」
少し笑う。
「だから困ってて」
教室が静まる。
「昨日も普通に話して、相手も笑ってたし、別に変な空気でもなかった」
一拍。
「でも次の日になると、何か話しかけづらくなる」
視線が落ちる。
「向こうは普通なのに俺だけ変に意識してる」
沈黙。
遥は相談者を見る。
「何を考える」
相談者は少し考えた。
「昨日、変なこと言ったかなとか。嫌な思いさせたかなとか。もう迷惑だったかなとか」
苦笑する。
「全部想像です」
教室が静まる。
「相手は」
遥が聞く。
「何か言ったか」
「何も」
「避けられたか」
「それもないです」
「態度が変わったか」
「変わってないです」
一拍。
「変わってないのは分かってるんです。でも、俺だけ勝手に気まずくなる」
遥は少し黙った。
「相手を見てるようで」
静かに言う。
「自分を見てる」
相談者は顔を上げる。
「え」
「相手の表情より自分がどう見られたか、そればかり考えてる」
教室が静まる。
相談者は黙る。
思い当たることがあった。
「俺」
小さく笑う。
「相手のこと全然見てなかったかもしれません」
遥は頷く。
「気まずさは」
少し間。
「二人で作るものもある。でも、一人で作ることもある」
相談者は静かに聞いている。
「昨日で終わった会話を今日も頭の中で続けてる。だから」
一拍。
「自分だけ昨日から動けない」
教室が静まる。
相談者は長く息を吐いた。
「それです。相手はもう終わってるのに俺だけ何回も考え直してる」
遥は鞄を肩にかける。
「考えるなとは言わない」
少し間を置く。
「でも、考えたことを事実にはしない方がいい」
夕日が教室を静かに染めていた。
相手はいつも通りなのに、自分だけ気まずくなってしまう。
そんな時は、相手との距離が変わったのではなく、自分の中で会話が終わっていないだけなのかもしれない。
だから、次に会った時は、昨日の続きを考えるより、今日の相手を見ることから始めてもいいのかもしれない。
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水白幻レイ
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コメント
1件
うわ、この話すごく刺さりました……。 「気まずさは一人で作ることもある」って、遥のあの言葉、ずしんと来たなあ。 相手はもう終わってるのに、自分だけ昨日の会話を引きずってる感覚、めっちゃわかる。 「考えたことを事実にしない」っていう締めも、優しくてちゃんと響いた。 遥の距離感、静かで温かい。ruruhaさんの言葉、今日も受け取りました🤍