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水白幻レイ
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放課後。
相談者は椅子に座ったまま、何度もスマホの画面を消してはつけている。
「俺、相手の機嫌が悪いと、すぐ自分のせいだと思うんです」
遥は顔を上げる。
「何かした覚えはあるか」
「ないです」
「じゃあ、何でそう思う」
相談者は少し考える。
「例えば、友達が朝から無口だったら。俺、昨日何か言ったかなって考える。返信が短かったら、怒らせたかなって。ちょっと顔が怖かっただけでも、俺が何かしたのかなって」
教室が静まる。
「本人に聞いたことは」
「あります」
「何て言われた」
「別に何もないって」
「それでも気になる」
「はい」
相談者は苦笑する。
「『大丈夫』って言われても、無理してるだけじゃないかって考えます。結局、相手の機嫌をずっと見てる」
遥は少し黙った。
「相手が機嫌悪い理由を自分一人で決めてるんだな」
相談者は顔を上げる。
「……確かに。でも、俺が原因の可能性もあるじゃないですか」
「ある」
遥は答える。
「でも、ない可能性もある」
一拍。
「そこを飛ばして、自分のせいにしてる」
教室が静まる。
相談者はスマホを伏せた。
「自分のせいだったら、直せるから」
遥は相談者を見る。
「だからか」
「はい」
「相手が不機嫌な理由が自分なら、謝ればいい。でも自分じゃなかったら、どうしたらいいか分からない」
遥は頷く。
「分からないものを」
少し間。
「自分の責任にすると、少しだけ安心することがある」
相談者は黙る。
「自分が悪いことにした方が原因が分かるから。でも」
一拍。
「分かった気になってるだけだ」
相談者はゆっくり息を吐く。
「俺、相手の機嫌まで、自分が管理しようとしてたのかもしれません」
遥は鞄を持つ。
「相手の機嫌は相手のものだ」
短く。
「自分にできることまでやったら、それ以上は背負わなくていい」
相談者は少し黙ってから頷いた。
「次から、まず、何か事実があるか考えてみます」
遥は頷く。
「それでいい」
教室の外を、生徒が二人通り過ぎていく。
誰かの機嫌が悪い。
誰かの返事がそっけない。
誰かが黙っている。
それだけで、「自分が悪いのかもしれない」と思ってしまうことがある。
でも、相手の感情には、自分には見えていない事情がある。
全部を自分の責任にしなくても、相手を大切にすることはできる。
コメント
1件
第28話、読み終えました…。 「相手の機嫌が悪いと、自分のせいだと思ってしまう」って、めっちゃわかるなって思いました。自分が悪いことにした方が原因がわかるから、安心する…っていう心の仕組み、すごくリアルで刺さりました。 遥さんの「相手の機嫌は相手のもの」って言葉、優しくて、でもちゃんと線引きしてくれてて、胸が楽になる感じがしました。 自分のせいじゃないかもしれない、って考えられる余裕、私も持ちたいです🤍