テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「おねぇちゃん、楓子さんと付き合ってください」
仕事から帰ってくるなり、天国美が訳の分からないことを言い出した。
私はひとまず天国美のおでこに手を当てて熱を測った。
「違いますおねぇちゃん熱で頭がおかしくなったとかそういうんじゃないんです」
そう言って天国美が私から離れる。
私は天国美の横にいる楓子さんの方を見て
(どういうことですか楓子さん?)
と目で訴えた。
「……..地獄子ちゃんが困惑するのもしょうがないよね。でも天国美は真剣なんだ。まずは、彼女の話を聞いてほしい」
と、楓子さんが真剣な顔で言う。
「ひとまず作戦会議を開きます!!」
天国美がどこから取り出したのか分からない眼鏡を装着しながらキリッとした声でそう言った。
午後10:30。部屋で作戦会議が始まった。
天国美はパジャマに着替え、どこからともなく召喚されたホワイトボードに
《皆でハッピー大作戦》と油性インクで書いた。
私と楓子さんと、小守はクッションに座りながら天国美の話を待った。
私と楓子さんは正座、小守はあぐらをかいて
頬に手を当てて(まーたこいつ変なこと考えてんな)という顔で天国美をじっと見た。
「コホン、皆さん夜分遅くに集まっていただきありがとうございますそれでは第一回《皆でハッピー大作戦》会議を始めます」
コホンと咳払いをした後、天国美はそう言った。
「現在タイムリミットまで29日。おねぇちゃんを助けるには私を殺すか、真実の愛を見つけるしかありません。しかしおねぇちゃんは今、呪いの影響で一般人には見えず、マッチングアプリなどで運命の相手を見つけるのは難しいでしょう」
「確かに…….」
私は頷いた。
「そしておねぇちゃんは超がつくほどの人見知りでコミュ障です」
「悪かったわねコミュ障で」
私が天国美をジト目で見る。
「そこで私は考えました。おねぇちゃんに真実の愛を教えること相手は誰か?おねぇちゃんと親しくて、おねぇちゃんの魔力が暴走しても対処できる人間なんじゃないでしょうか?___つまり、楓子さん。あなたです」
そう言って天国美は楓子さんをビシッと指差した。楓子さんは神妙な面持ちで天国美を見ている。
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ天国美!?
楓子さんはあんたの恋人でしょ!?あんたはそれでいいわけ!?」
「……私は、おねぇちゃんにいなくなってほしくないんです」
「天国美…….でも……」
「それに、大好きな楓子さんがおねぇちゃんと付き合うところを想像すると……なんだか興奮します」
恍惚とした表情で天国美が言った。
「お前…….だいぶ性癖拗らせてんな」
小守が呆れた口調で溜め息をつく。
「つーか気に入らねぇ。勝手にオレのママを姉妹感でシェアしてんじゃねぇよ。……ママはいいのかよ?天国美のこと、スマホ画面の待ち受けにするぐらいは好きなんじゃねぇのかよ」
小守が楓子さんに顔を向けた。
「……私は、天国美のことが今でも好きだよ。だからこそ、彼女の意志を尊重したい」
そう言って楓子さんは立ち上がり、私の方を見た。
「地獄子ちゃん、急にこんなことを言ってすまない。だけど、私も天国美も、気持ちは同じなんだ。君にいなくなってほしくない。
君を助けたいんだ」
「だから、私と付き合ってほしい」
楓子さんは私に手を差し出した。
私は、天国美の方を見た。
天国美は瞳を潤ませ、唇をぎゅっと噛み締めている。
知らなかった。天国美がずっとそんなことを考えていたなんて。
天国美の思いを、無駄にするわけにはいかない。
「こ、こちらこそ、よろしくおねがいします
…….」
私は立ち上がり、楓子さんの手を握った。
こうして私と楓子さんは恋人になった。
「なんか逆に話が拗れちまったような気がするけどなぁ…….」
小守はそう言って唇を尖らせた後、
「まぁいいや。地獄子!!今日遅いしおまえん家泊まってもいいか」
と聞いてきた。
「えぇ、流石に四人で寝泊まりするにはこの部屋狭くない?」
「あ?お前忘れたのか?」
そう言って小守がポンっとコウモリの姿に変身した。
「寝る時だけこの姿になればいいだろうが」
小守の機転に、私は素直に感心した。
「それじゃ寝る前にUNOやりましょ!!UNO!!」
天国美が手をあげてそう言う。
「いいね、黒魔術は使ってもいいかい?」
「だめですよー。それアリにしたら楓子さんの一人勝ちじゃないですか」
私と楓子さんが付き合った後も、二人の温度はさほど変わっていないようだ。
それから私達は深夜1:00まで皆でUNOをした後布団を敷いて眠りについた。
私の右側に楓子さんが、左側に天国美が眠っている。
「ウケケ、こうして見るとハーレム主人公みてーだな。オレも混ざってやろうか?」
天井に逆さまになって張りついてる小守が私をからかう。
「うっさいわね、ゴートゥーへルするわよ」
私はそう言って、私に腕組みしながらすーすー寝息を立てる天国美を見た。
天国美は、眠りながら涙を一筋流した。
「…….楓子さん。私、天国美のためにもぜったいに呪いを克服します」
「うん、私も君の師匠として___恋人として、君をサポートするよ」
楓子さんは静かにそう言った。
タイムリミットまであと29日。
コメント
1件
いや待ってこれ……めっちゃ面白い展開になってるやん! 天国美が自分の姉のために、好きな人を差し出すって発想、性癖拗らせてるけど愛情が重すぎて泣けるわ。 楓子さんの「恋人としてサポートする」って台詞も覚悟感じるし、小守がコウモリで寝るって機転に笑った。 タイムリミット29日、この歪な三角関係(+コウモリ)がどう転ぶかめちゃ気になる🔥
99
comi
1,258
81