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#一次創作
ruruha
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放課後。
教室には数人だけ残っている。
廊下から聞こえる部活の声も、少し遠い。
生徒は椅子に座ったまま窓の外を見ていた。
しばらくして口を開く。
「取り戻したいんです」
遥は向かいの机に腰掛けている。
制服のネクタイは少し緩んでいた。
「何を」
短く。
生徒は少し困った顔をした。
「分からないです」
一拍。
「でも」
言葉を探す。
「なんか、自分の人生ずっと誰かのためだった気がして」
教室が静まる。
遥は黙って聞いている。
「家でも、学校でも。怒られないようにとか、面倒にならないようにとか」
一拍。
「そういうのばっか考えてた気がする」
沈黙。
「だから最近」
生徒は言う。
「自分の人生取り戻したいなって思うんです」
遥は聞く。
「何をしたい」
短く。
生徒は止まる。
数秒。
それから苦笑した。
「それが分からないんです」
教室に静かな空気が落ちる。
「好きなことも、やりたいことも、将来も」
一拍。
「空っぽで」
視線が落ちる。
「取り戻したいのに何を取り戻すのか分からない」
遥は窓の外を見る。
グラウンドではサッカーボールが転がっている。
「別に変じゃない」
短く。
生徒は顔を上げる。
遥は続ける。
「長い間」
一拍。
「生き残る方を優先してたらそうなる」
教室が静まる。
「……生き残る」
遥は言う。
「怒られない、目立たない、問題起こさない」
一拍。
「そういうので頭いっぱいだったら」
短く。
「自分の好みなんか後回しになる」
沈黙。
生徒は黙る。
心当たりがあった。
遥は続ける。
「だからお前」
一拍。
「やりたいことが分からないんじゃない」
教室が静まる。
「忘れてるだけだ」
短く。
生徒は少し止まる。
「……忘れてる」
遥は言う。
「長く使ってないからな」
一拍。
「感覚が鈍ってる」
沈黙。
生徒は机を見る。
「じゃあ」
小さく言う。
「どうしたらいいんですか」
遥は少し考える。
「大きいこと考えるな」
短く。
「人生取り戻すとか、自分探しとか」
一拍。
「その辺、一旦やめろ」
教室が静まる。
生徒は苦笑する。
「結構大事な話してたんですけど」
遥は気にしない。
「大体そういう時」
短く。
「話がでかすぎる」
沈黙。
遥は続ける。
「まず」
一拍。
「嫌なものを増やすな」
生徒は眉を寄せる。
「……え」
遥は言う。
「好きなもの探す前に嫌なもの減らせ」
短く。
「無理な付き合い、無理な我慢、無理な役割」
一拍。
「そこからだ」
教室が静まる。
生徒は考える。
確かに。
好きなものを聞かれても答えられない。
でも。
嫌なものならいくつも思いつく。
遥は続ける。
「人生取り戻すって」
一拍。
「急に何か始まることじゃない」
短く。
「まず、自分を削るもの減らす」
沈黙。
「その後で」
少し間。
「残った感覚を見る」
教室の空気が少し変わる。
生徒はゆっくり頷く。
「……俺」
一拍。
「ずっと逆やってたかも」
遥は聞く。
「何を」
短く。
「好きなこと探そうとしてた」
生徒は笑う。
「でも毎回分からなくて余計焦ってた」
遥は机に指を置く。
「分からなくて当然だ」
短く。
「今まで聞いてなかったんだから」
沈黙。
教室の外では運動部が片付けを始めている。
生徒は窓の外を見る。
少しだけ肩の力が抜けていた。
人生を取り戻したい時、人はすぐに「やりたいこと」を探そうとする。
でも本当に必要なのは、失ったものを探すことより先に、今も自分を削っているものに気づくことかもしれない。
コメント
1件
うわあ、この回、すごく沁みました……。「好きなもの探す前に嫌なもの減らせ」って、遥さんの言葉がずしんと来ましたね。主人公が「空っぽで」って言うところ、すごくリアルで、自分にも覚えがあるなって思いました。人生取り戻そうと焦るより、まず削るものを減らす——その順番、すごく大事な気づきだと思います。続きが気になります!