コメント
31件
色仕掛けする方も 引っ掛かる方も、決して 許されない。 結局、奈緒ちゃんを裏切ったことに変わりは無い....😢
おゝ五月はみどり 妹は小松みどり(二回目) 三輪みどりの名前が出る度に歌いそうや。
なんだか複雑だね。直接尋ねたくとも徹亡くなってるわけで。 せっかく前を向いて歩きだした時だからね。 三輪みどりは許せないけど徹にもやりきれない思いだ。 奈緒ちゃんには過去を振り返らず幸せになって貰いたいな💕
昼食を終えた三人が店を出てオフィスに向かっていると、突然奈緒の名を呼ぶ声が響いた。
「麻生さんっ!」
声の主は、奈緒が以前勤めていた会社の営業推進本部時代に一緒に働いていた倉本結衣(くらもとゆい)だった。
倉本は当時派遣社員として奈緒と同じフロアで働いていた。
「お久しぶりです……私の事覚えていらっしゃいますか?」
「もちろんよ! 倉本さんでしょう?」
「そうです!」
倉本は嬉しそうに微笑んだ。
営業推進本部時代、奈緒は派遣されたばかりの倉本からよく質問を受けていた。
本当は倉本の指導員は三輪みどりだったが、倉本はなぜかいつも奈緒に質問をしてくる。
もちろん奈緒は質問をされる度に、その都度丁寧に教えてあげた。
そしてある日奈緒が化粧室へ行くと、たまたま泣いている倉本に遭遇する。
奈緒が事情を聞くと、指導員である三輪みどりに質問をしても教えてもらえないどころか、無視される事が度々あるという。それを聞いて奈緒は驚いた。なぜならみどりは普段社員達に愛想がいいからだ。
それ以降、奈緒はなるべく倉本の事を気に掛けるようにした。そして何かわからない事があればなんでも聞いてと倉本に伝える。
そんな奈緒のお陰で、倉本は辞める事なく派遣期間の二年を無事に全うした。
「今はこの辺りの会社に来てるの?」
「はい。今はそこのビルに入ってる会社です。あの……よろしければ少しだけお時間いただけませんか? 私、麻生さんにお話ししたい事があって……」
その時、さおりが言った。
「奈緒ちゃん、折角だからゆっくり話してきたら? 10分位なら遅れてもいいわよ」
「そうそう奈緒ちゃん、ゆっくりお喋りしておいで~」
「すみません、なるべく早く戻りますから」
笑顔で立ち去る二人に、奈緒と倉本はペコリとお辞儀をする。
それから二人は公園の一角にあるベンチへ行き並んで座った。
窪んだ区画にあるその場所は、人目につきにくく落ち着いて話しが出来そうだ。
「で、お話って?」
倉本は少し緊張した面持ちで口を開く。
「麻生さんが退職されたと派遣仲間から聞いてすごくショックで……。それってあの事故が原因ですよね?」
奈緒は驚く。まさか倉本からそんな話が出るとは思ってもいなかったからだ。
「倉本さん知ってたのね。そうよ、あの事故があってからなんだか会社に居辛くなっちゃってね……で、転職したの」
「やっぱり……麻生さんは何も悪くないのに……ひどい……」
「倉本さん……ありがとう……」
「私、麻生さんにとてもよくしていただいて本当に感謝しているんです。もしあの時麻生さんがいなかったら私はあの会社を辞めていました。でも麻生さんが助けて下さったから、なんとか最後まで頑張れました。それなのに何も悪い事をしていない麻生さんが会社を辞めるなんて……許せません! だから私、麻生さんにずっと真実を伝えなくちゃって思ってて……そうしたら今日偶然会えたので……」
奈緒は倉本がそこまで思っていてくれたと知り、正直驚いていた。そして倉本が奈緒に伝えたがっている内容が気になる。
「心配かけてごめんなさい。で、その話っていうのは?」
「あ、はい。私がどうしても伝えたかった事っていうのは、江崎さんは麻生さんを愛していたという事です。それは真実で私が保証します! あんな事になっちゃったけど、江崎さんは麻生さんの事をとても大切に思っていました。だから江崎さんはきっちりけじめをつけてから麻生さんと結婚したかったんだと思います」
「え? ちょ、ちょっと待って! あなたは徹と三輪さんの事を知っていたの?」
「はい、知ってました。三輪さんが江崎さんを狙っていた事を……」
「狙っていた? それはどういう意味?」
「三輪さんは江崎さんに恋人がいる事を知りながら、江崎さんにちょっかいを出していたんです」
「…………」
その衝撃的な内容を聞き、奈緒は言葉を失った。あまりにも衝撃的過ぎて頭が真っ白になる。
そんな奈緒にはお構いなしに倉本は続けた。
「年度末の打ち上げの時、麻生さんはお母様の手術でご実家に帰られていましたよね?」
「うん、たしかあの時は千葉の実家に泊まりで帰ってたわ」
「その時私見ちゃったんです。打ち上げの二次会で……」
「見たって何を?」
「三輪さんが酔い潰れて江崎さんに抱き付いているところを。三輪さんは江崎さんに家まで送ってと甘えるように言って離れなくて……それで仕方なく江崎さんはタクシーに三輪さんを乗せると、一緒に乗って帰って行きました」
「…………」
「そしてその翌日、会社で三輪さんが取り巻きの女子社員達と話をしているのを聞いてしまったんです。三輪さんは自分の色仕掛けに江崎さんが見事に引っかかったと自慢気に話していました。そして私達は付き合う事になったからと宣言していました」
「!」
奈緒は更に衝撃を受ける。三輪が徹を狙っていた? 徹が三輪の色仕掛けに引っかかった?
頭の中が一気に混乱する。
その時奈緒は急にハッと思い出した。仕事中たまに感じる三輪みどりの冷たい視線を。
みどりは時々奈緒に刺すような冷たい視線を向ける事があった。
奈緒は気のせいだと思うようにしていたが、あれは奈緒に対する敵対心の表れだったのだと今になって気付いた。
しかし、仕事中徹には変わった様子はなかった。もちろん二人が親密そうにしている場面も見た事がない。
だから奈緒も今まで気付かなかったのだ。
もしかしたら二人の関係は、奈緒の知らない水面下でずっと続いていたのかもしれない。
そう思うと、奈緒の身体は言いようのない悲しみで小刻みに震えていた。