そしていよいよ結婚式の時刻になった。
優羽は花嫁を連れて食堂の入口で待機していた。
その時新郎の内田がジーンズの上に白シャツを着てやって来た。
シャツはオーナーの山岸に借りたのだろう。少しサイズが大きいようだ。
内田はライトシルバーの蝶ネクタイをつけている。これも山岸に借りたようだ。
内田はひとみを見るなりびっくりした表情に変わる。
普段ほとんど化粧をしないひとみのかなりの変貌ぶりに驚いているようだった。
「すごく綺麗にしてもらったんだね。とっても綺麗だよ」
内田は愛おしそうにひとみを見つめると言った。
そんな内田の言葉に、ひとみは頬を染めて嬉しそうに言った。
「ありがとう」
その時食堂のドアが開き中から舞子が出て来た。
舞子は小さなブーケを持っていた。ブーケは夏らしいミニひまわりと白い可憐な花を咲かせたカモミールで出来ていた。所々グリーンの葉が散りばめられ、とても素敵なブーケに仕上がっていた。
そのブーケを見た優羽は思わず言った。
「素敵!」
すると舞子は微笑みながらひとみへおめでとうと言ってブーケを渡した。
可愛らしいブーケを受け取ったひとみは、
「ありがとうございます。とっても素敵なブーケで嬉しいです」
と舞子にお礼を言うと、そのブーケを嬉しそうに新郎の内田に見せていた。
そこで山荘の扉が開きチャイムがカランコロンと鳴る。
四人が一斉に入口の方を振り向くと、そこには優羽の兄の裕樹が立っていた。
「お兄ちゃん、どうしたの? こんな時間に」
「お前宛ての郵便物があるっていうから持って来た。なんか同窓会関係のハガキもあるから母さんが早めに持っていけってさ。
流星の顔も見たかったしな」
そう言ってから、裕樹は優羽の隣にいる三人を見て驚いた顔をする。
「あ、どうも。今日は何かあるのですか?」
「今からこのお二人の結婚式があるんです」
舞子の言葉を聞いた裕樹は、
「へぇ、それはおめでとうございます。山荘でのウエディングなんてきっと一生の思い出に残るだろうなぁ」
そこで優羽は「あれは私の兄なんです」と新郎新婦へ説明する。
すると新郎の内田が、
「折角ですから、お兄様も是非参列していただけませんか?」
「いえいえ、僕はついでに寄っただけですから」
裕樹が恐縮して言うと、ちょうど奥から山岸夫妻がやって来て裕樹を見つけた。
「あら優羽ちゃんのお兄様いらっしゃい。今からちょうど結婚式があるんですよ。よろしかったらご一緒に参列していただけま
せんか?」
山岸夫妻はニコニコして裕樹を誘う。
優羽はとんでもないと思い慌てて言う。
「いえ、兄はもう帰りますから。いきなり人数が増えたら三橋シェフも困ります」
すると紗子が笑いながら言った。
「大丈夫よ優羽ちゃん。料理はね、急なお客様の為にいつも数人分多く作っているの。だから気にしないで。さ、お兄様食堂の
方へどうぞ!」
紗子は裕樹を食堂へ行くように促した。
「そこまで仰って下さるなら是非参列させていただきます。あ、もちろんお料理の代金はお支払いしますから」
「今日はおめでたい日なので、そういった事はどうぞお気になさらずに。さ、行きましょう」
紗子は裕樹の申し出をやんわりと断ると、裕樹の背中を押して中へ連れて行った。
その様子と見ていた新郎新婦は、嬉しそうに見つめ合っていた。
その時、奥から流星が走って出て来た。
流星は今日はフラワーボーイの大役を担っているので、保育園の入園式で着た半ズボンと白いポロシャツに着替えていた。
優羽が花嫁のメイクで忙しかったので、代わりに三橋の妻が着替えさせてくれていた。
流星はバラの花びらが入った小さなかごを手にしている。
結婚式での手順は、事前に紗子が練習させてくれたようだ。
「ママ! ぼくはおはなをまきながらあるけばいいんだよね?」
「うん、そうよ。ゆっくり歩いて花嫁さん達をしっかり案内してあげてね」
優羽がそう説明すると流星は笑顔で返事をする。
「うん、わかった!」
すると、ひとみが、
「流星君、よろしくね」
と言って流星の頭を撫でたので、流星ご機嫌な様子で、
「ぼくにまかせてね!」
と誇らしげに言った。
そしていよいよ山荘での挙式が始まった。
コメント
3件
キャァー(*´艸`*)✨ 素敵な結婚式の始まり〜✨👰🤵💍 流星くんのフラワーボーイ姿見たぁい😆💖
もうゎ‹ゎ‹(*´ㅂ`*)ゎ‹ゎ‹🎵 アットホームで温かいお式に間違いない✨ *♡೫̥͙*:・ℋɑppყ Ϣәԁԁıɲɠ゚・:* ೫̥͙♡*
流星君がとても素直でかわいい😍フラワーボーイの大役もしっかり果たせそう✨そして皆さんのお祝いの気持ちをすごく感じる素敵な新郎と綺麗な新婦👰♀️の心に残る山荘での結婚式💍いいわぁ〜🥹💕