テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
思いがけない出会いから、少しずつ交流が始まった二人。 今後の二人の関係がどう変わっていくのかなぁ....ワクワクします🎶
セルリアンブルーの海🌊詩帆ちゃんの憧れのそんな写真を見たら欲しくなっちゃうよね📕 まさかその様子を涼平さんに見られてご飯まで💦警戒する詩帆ちゃんの気持ちもわかるけど涼平さんは大丈夫よ😉💞
次の週、詩帆は午前十時からのシフトに入り、夕方仕事を終えた。
今日は給料日だったので、詩帆はカフェを出ると同じ建物内の書店へ向かった。
毎月のお給料日に、詩帆は自分へのご褒美として本を一冊買う事にしている。
書店に入ると、詩帆はいつも覗くコーナーを一つ一つ見て歩いた。
絵本や写真集、小説の挿絵や扉絵など、書店には絵の参考になるものが溢れている。
それらを見て回るのは勉強になるし、今流行っているものや人気のものを知る術にもなる。
だから詩帆にとって書店で本を見て歩く事はとても大切なルーティーンだった。
そしてこの日、詩帆は写真集のコーナーである写真に目を奪われていた。
その写真集には、海外の美しい海ばかりが載っている。
詩帆はその中の一ページに心を奪われていた。
詩帆が見入っていた海は、セルリアンブルー色の海だった。
詩帆はこの『セルリアンブルー』の色が大好きだった。
『セルリアンブルー』の意味はラテン語から来ていて、
『空の色』を意味するらしい。
その色は、わずかに緑みを帯びた鮮やかな青だった。
その青と緑の混ざり合う絶妙な色合いが何とも言えず美しい。
詩帆は絵の勉強を始めてからその色を知った。
初めて買ったアクリル絵の具の中に、そのセルリアンブルーはあった。
それ以来、詩帆はその色の虜になっている。
そしてもう一つ、その『セルリアンブルー』には忘れられない思い出があった。
詩帆が写真集を食い入るように見つめていると、いきなり後ろから声がした。
「その海、綺麗だよね」
詩帆がびっくりして顔を上げると、そこには涼平がにっこりと笑って立っている。
詩帆は驚いて、
「あっ…この前は、ありがとうございました」
と言って慌ててお辞儀をする。
すると涼平が言った。
「その後大丈夫だった? 変な事はない?」
「はい、大丈夫です」
「それは良かった」
涼平はニッコリ笑うと、俺はあっちを見て来るよと言ってその場を後にした。
詩帆は涼平の後ろ姿を見つめながら、ホッと息をつく。
そして再び写真集に視線を戻す。
写真集の裏を見て値段を確認すると4800円もしたので詩帆は諦める。
そして写真集をそっと棚へ戻した。
それから小説コーナーへ移動すると、以前から気になっていた小説を一冊手に取りレジへ行って購入した。
会計を済ませた詩帆は、カフェの裏口に停めてある自転車へと向かう。
自転車を押しながら道路まで出た所で、ばったり涼平に会った。
涼平も今出て来たばかりのようだ。
「また会ったね。ところで夕飯は食べた?」
「いえ、これから家に帰って食べます」
「近くにいい店があるんだ。今から行くんだけど、もしよかったら一緒にどう?」
涼平に誘われた詩帆は戸惑う。
加藤と食事に行ってあんなことになったばかりだ。
涼平は加藤とは違うタイプの人間だとわかっているけれど、カフェの常連である事に変わりはない。
だから誘いに応じるのはあまりにも非常識過ぎると思っていた。
詩帆が悩んでいると涼平は更に言う。
「その店は『辻堂の父』みたいな知人のサーファーがやっているんだ。奥さんもすごくいい人で、もしかしたら今日は奥さんも
いるかもしれない」
涼平は詩帆の心の中を見抜いていたようで、あえて詩帆を安心させるように言った。
「俺は下心はないから安心して。近所の友人として誘っているだけだから」
さらにそう付け加えた。
詩帆はそんな涼平の気遣いに申し訳ない気持ちになり、その誘いに応じる事にした。
「自転車で行った方が早いから乗って行くよ。ついておいで!」
涼平はそう言って自転車に跨ると、颯爽と緩い坂を下りて行った。
詩帆は慌てて追いかける。
その通り沿いには地元の人が経営しているオシャレな店がいくつもあった。
この辺りは観光客はほとんど来ない。
どちらかというと、地元のサーファーが集う店が多い。
この辺りの詩帆の知り合いといったら、職場の人しかいないので、
もな
213
14
#鬼滅
ユイ
108
こうした地元の人が集うようなローカルな店には入った事がない。
入りたくても敷居が高くてとても入る勇気がなかった。
だから今日行く店がどんな店か少し楽しみでもあった。
自転車で軽快に走る涼平を見ながら、詩帆の頭には遠い昔の記憶が蘇っていた。
子供の頃は兄の自転車を追いかけて、よくこうして後ろからついて行った。
兄はいつも詩帆に優しかった。
詩帆はそんな兄が大好きだった。
詩帆は前を走る涼平の姿に兄の姿を重ねていた。
兄も高校生の頃サーフィンをやっていたので、余計に涼平と重なる。
すると次第に詩帆の目がぼやけて来た。
その理由は、詩帆が大好きだった兄は詩帆が中学生の時に交通事故で亡くなっていたからだ。
涼平が自転車のスピードを緩めた時、目的の店に到着した。
店は国道134号線に出る少し手前の住宅街にあった。
店は、ブルーグレーの木造の外観で、木肌の色あせた感じがとてもオシャレだ。
店の前には白いウッドデッキもありテーブル席が三つある。
入口にはランタンがぶら下がり、辺りを柔らかく照らしていた。
店の看板には『Grand Swell』と書かれていた。
二人は店の前に自転車を停めると、店の入口へ向かった。
涼平が白いドアを開けると、カランコロンという柔らかな音色が辺りに響き渡った。