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朝食を終えた二人は、まず市内で一番大きいワイナリーへ向かう。
真子は拓にこのワイナリーを是非見て欲しかった。
なぜなら、そのワイナリーでは醸造所を見学する事が出来るからだ。
拓はガラス窓から見える醸造所内の様子に見入っている。
お酒が好きな拓は、ワインが作られる行程に興味津々だ。
一通り見て歩いた二人は一旦外へ出た。
醸造所には直売所も併設されていたが、そこは後で覗く事にする。
拓はぶどう園も見たいというので、二人はぶどう園が見える場所まで歩いて行った。
途中、このワイナリーの名物である赤ぶどうと白ぶどうのソフトクリームが売っていた。
拓はそれを一つずつ買ってくれた。
「真子はどっちがいい?」
「赤がいい」
「ん、じゃこれな」
拓はそう言ってソフトクリームを渡した。
「あっちにテーブルと椅子があるよ」
真子がそう言ったので、二人はそこまで歩いて行くと椅子に座った。
晴れ渡る空は真っ青に澄み切っていた。吹く風は清々しく、時折鳥の群れが横切って行く。
ソフトクリームを食べながら、二人は目の前に広がる広大なぶどう園を眺めた。
「フランスにでもいるみたいだな」
「でしょ? この風景好きなんだ」
「この町はちょっと郊外に行くと『ザ・北海道』って感じだな」
「そう…そこがいいんだよ。でも札幌にも気軽に行けるしね」
「便利だよな。でも冬は雪が凄いんだろう?」
「うん、凄いよ。雪が多い年は道路に壁が出来ちゃうし」
「すっげぇな。やっぱり豪雪地帯なんだな」
「うん。でもね、冬の静けさもいいよ。早朝に除雪車の音がして、あー今北海道にいるんだーって実感するから」
「へぇ…俺、除雪車の音なんて聞いた事ないよ」
「フフッ、雪国に住んでいないとわかんないよね」
「だな」
二人は同時に微笑んだ。
「ねえ、白ぶどうのアイスもちょっとちょうだい」
真子が言ったので、拓はアイスのカップを差し出す。
「赤ぶどうも美味しいよ。食べてみて」
二人は互いのアイスを一口ずつ交換した。
そこで拓が言った。
「なぁ…真子はなぜこの町に残ったんだ? ご両親が帰る時に一緒に帰れただろう? なのになんであえて残ったんだ?」
拓はずっと疑問に思っていた事を聞いた。
すると真子は微笑みを浮かべたまま言った。
「一番の理由は、草木染に適した土地だからかな?」
「草木染?」
「うん。自然の中にある天然の植物を染料にして染める方法なの。それがやりたかったんだ。この町には自然がいっぱいあるでしょう? 染料になる材料があちこちに溢れているんだよ。だから残ったの」
「ふーん、ナチュラルに染めるって感じなのかな?」
「うん、そう。今って自然派志向が結構ブームでしょう? だからそういうのに興味がある人が結構多いんだよ」
「なるほどね。ネット販売も結構売れてるって言ってたもんな?」
「うん。リピーターが結構多いよ」
拓は、真子がこの町に残った理由が少しわかったような気がした。
「でもね、理由はそれだけじゃないんだ」
「?」
拓は真子の方を振り向く。
「この町で出会った人達がみんな素敵なの」
「出会った人?」
「うん、そう。今一緒に工房をやっている友人とか、手術をしてもらったお医者様とその奥様とか……あ、あとは、お医者様の奥様に紹介してもらった染色家の女性とかね。彼女はもう70代なんだけれど、時々工房のお手伝いをお願いしているし…とにかく沢山の素敵なお友達がいるんだ。だからここを離れたくないって思っちゃうの」
真子はそう言って微笑んだ。
「そうかー、真子はこっちに来てから凄くいい出会がいっぱいあったんだな。そいういう友達は一生大切にした方がいいな」
「うん、私もそう思う」
その時拓は、ふいに涼平が言っていた事を思い出す。
それは、涼平の妻の祖父の事だ。そこで真子に聞いてみた。
「そう言えばさ、涼平さんの奥さんのおじいさんがこの町にいるって聞いたんだけれど、知らないよな? その人画家らしいんだ」
「画家?」
「そう。東京にいる時は美大の教授をしていたらしい」
そこで真子は急に身を乗り出した。
「なんていう名前?」
「江藤進一」
その名前を聞いた真子は、びっくりして目を見開く。
「嘘! 知ってるよ。さっき話した染色家のご主人よ!」
「マジか?」
拓も驚いて声を上げる。
「うん。染色家の女性は江藤秋子さんっていうの。秋子さんも昔ご主人と同じ大学で教えていて、定年後にこの町に戻って来たんだよ。で、進一さんが秋子さんに会いに来てその後結婚したんだよ。うわー凄い、そんな偶然があるなんて…やっぱりこの町は『奇跡の町』なんだわ」
「奇跡の町?」
「うん、そう。秋子さんと進一さんはこの町で再会して結婚したでしょう? でね、私の担当医だったお医者様とその奥様も、この町で再会して結婚したんだよ。だからこの町は『奇跡の町』って言われているの」
「奇跡の町? じゃあ俺達もだな。俺達もこの町で再会したし」
「そうだね」
真子はその時こう思った。
『奇跡の町で再会した男女は、永遠の幸せを手に入れる事ができるのかもしれない』
真子が嬉しそうに微笑んでいるのを、拓は優しい瞳で見つめていた。
真子が隣にいて笑っているだけで、なぜか心の中が満たされていく。
拓はその時この幸せを絶対に手放したくないと思っていた。
その後直売所へ寄り拓が赤ワインを買った。
それから二人はワイナリーを後にした。
その後二人は市内にある大きな公園に寄った。
ちょうど公園ではローズフェスタが開催されていた。
バラ園には様々な種類のバラが一斉に咲き乱れていた。
辺りにはバラの良い香りが漂っている。
真子はあちこちの花の香りを嗅いで歩く。そして時折スマホで写真を撮っていた。
「真子はバラの香りをつけるくらいだから、バラ好きなんだろう?」
「うん。お花の中ではピンクのバラが一番好き」
真子は嬉しそうに笑った。
その瞬間、真子の身体からはこの前と同じローズの香りが漂ってきた。
その後二人は一度商店街へ戻ると、最近オープンしたばかりのカフェへ向かう。
そこは真子が行きたいと言った店だ。
スープカレーが名物のカフェなので、二人はそれを注文した。
サラサラしたスープ状のカレーには、市内で採れた新鮮な野菜がゴロゴロと入っている。
拓は初めてスープカレーを食べたので、その美味しさに感動していた。
食後はコーヒーをゆっくりと飲み、二人は午後の楽しいひと時を過ごす。
店内は空いていて長居をしても大丈夫そうだったので、二人はコーヒーをお代わりしてからそのままお喋りを楽しんだ。
コメント
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ワイナリー🍷で拓君とデート❤️美味しいワインとこれまでの経緯を話して江藤先生と秋子さんや岸本先生と瑠璃ちゃんの「奇跡の町」の話もちゃんと聞いてくれる真摯な拓君の姿勢がすごく好感持てて良きだわ〜👩❤️💋👩❣️