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旅に出て三日目、四人は小さな町に着いた。
門番が勇者証を見て姿勢を正す。
「勇者様ですか!」
陽和は少し驚いた。
ちゃんと通じるらしい。
門番は言った。
「こちらへどうぞ」
案内されたのは武具屋だった。
中に入ると、大柄な店主が腕を組んで立っていた。
「勇者か」
声が大きかった。
「はい」
店主は棚を指した。
「好きな武器を選べ」
予想外だった。
陽和は言った。
「いや、戦わないので」
店主は聞かなかった。
「剣は基本だ」
長剣を渡される。
重かった。
レオルがうなずいた。
「いい剣です」
陽和は言った。
「持たないと思います」
店主は次を出した。
「短剣」
断りきれない。
受け取る。
さらに出てくる。
「鎧」
胸当てを押しつけられる。
「盾」
持たされる。
「予備剣」
もういらない。
気が付くと全身装備だった。
重い。
歩くだけで疲れる。
ミナが言った。
「意味あるのそれ」
陽和もそう思う。
フィルが言った。
「勇者様は堂々としていらっしゃいます!」
たぶん装備のせいだった。
店主が満足そうに言った。
「これで勇者だ」
すでに勇者だったはずだが。
外に出る。
歩く。
重い。
レオルが言った。
「勇者様」
「はい」
「少しゆっくりお願いします」
歩く速度が落ちた。
ミナが言った。
「遅い」
陽和が言った。
「重いんです」
そのときだった。
道の先の茂みが動いた。
レオルが剣を抜く。
「止まれ!」
ゴブリンが三匹出てきた。
陽和は止まった。
レオルが前に出る。
ミナが立ち上がる。
フィルが祈りを始める。
陽和はどうすればいいのか分からない。
レオルが言った。
「下がってください!」
下がろうとした。
動けない。
装備が重かった。
ゴブリンが走る。
速い。
一匹が陽和に向かってくる。
避けようとした。
転んだ。
鎧が地面に当たる。
音がした。
ゴブリンが短剣を振る。
当たる。
止まる。
刃が胸当てに当たっていた。
通らない。
ゴブリンがもう一度振る。
当たる。
やっぱり通らない。
陽和は言った。
「助かりました」
誰に言ったのか分からない。
レオルが斬る。
一匹倒れる。
ミナの火球が飛ぶ。
一匹倒れる。
最後の一匹もすぐ終わった。
静かになった。
レオルが剣を収める。
「ご無事ですか」
陽和は起き上がる。
重かった。
「大丈夫です」
ミナが言った。
「その装備」
陽和を見る。
「正解だったわね」
フィルが言った。
「祝福が守りました!」
違うと思う。
レオルが真剣な顔で言った。
「勇者様」
「はい」
「装備は外さないでください」
陽和は言った。
「重いんですけど」
レオルは言った。
「命より軽いです」
反論できなかった。
その日の夜。
陽和は鎧を着たまま座っていた。
脱ごうとした。
レオルが言った。
「着たままで」
フィルが言った。
「安心です!」
ミナが言った。
「動けない勇者って新しい」
陽和は思った。
暖かくする能力より先に、
どうやら装備が評価され始めているらしい。