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鋼谷は支部の廊下を駆け抜けていた。虚王の力によって施設全体が崩壊し始めており、壁の一部は完全に歪んで崩れ落ちていた。背後から聞こえる爆発音が、時間の猶予が少ないことを示している。
「こんな状態でまともに戦うのは無理か…」鋼谷は歯を食いしばり、瓦礫を乗り越えながら出口を目指した。
突然、目の前の空間が歪み、虚王の姿が現れた。まるで空間そのものが折りたたまれたかのような現象だった。
「逃げるだけでは何も変わらないぞ、鋼谷。」虚王はゆっくりと手を差し出し、笑みを浮かべた。
「私の力を試す準備はできたか?」
鋼谷は立ち止まり、虚王を睨みつけた。
「お前の目的は何だ?冥王の残したものを全部壊すことか?」
虚王は軽く首を振る。
「壊すだけではない。私はこの世界を再構築する。そのために、まずはお前のような無駄な抵抗をする者を排除する必要がある。」
虚王が手を上げた瞬間、空間全体が奇妙に歪んだ。鋼谷が周囲を見回すと、天井が床になり、瓦礫が浮き上がり、すべてが上下逆転しているようだった。
「これが私の力、『反転の領域』だ。」虚王は冷たく言い放つ。
「ここにいる限り、あらゆる法則は反転する。攻撃はお前自身を傷つけ、逃げようとすれば戻ってくる。さて、どうする?」
鋼谷は一瞬考えた後、拳を握り締めた。
「その力がどれほどのものか、確かめてやる!」
彼は虚王に向かって拳を振り下ろしたが、拳は途中で止まり、自分自身の胸に激痛をもたらした。
「言っただろう、鋼谷。ここではお前の行動すべてが逆転するのだ。」虚王は薄笑いを浮かべた。
「だが安心しろ。このゲームに勝てるチャンスも与えてやる。」
虚王はポケットからコインを取り出し、それを空中で弾いた。
「これは単なる運試しだ。表が出ればお前が一撃を加えられる。裏ならば私が一撃を与える。」
鋼谷は虚王の言葉を黙って聞きながら、周囲の歪みを観察していた。
「法則が反転する…つまり、こいつの力を利用できるかもしれない。」鋼谷は小声でつぶやいた。
虚王がコインを弾こうとした瞬間、鋼谷は地面の瓦礫を蹴り上げ、その反転した動きが虚王の顔をかすめた。
虚王は驚きの表情を見せたが、すぐに笑みに戻った。
「なるほど、反転を利用するつもりか。それでどこまでやれるか見ものだ。」