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瑠璃子は大輔の車に乗ると言った。


「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそ。じゃ、行こうか」


そして車は札幌に向かって走り始めた。


車はすぐに高速に乗ると順調に走り始める。

瑠璃子が前にここを通ったのは晩秋だった。しかし今目の前に広がるのは一面の銀世界だ。

1~2ヶ月でこんなにも景色が変わるものかと瑠璃子は驚く。


「そういえば先生の家って薪ストーブでしたよね。あの薪って斧で割るの?」

「本当はその方が運動になっていいんだけど、僕は手を怪我したら仕事が出来ないから薪割り機を使ってるよ」

「薪割り機? 機械で薪を割るのですか?」

「そう。あれなら君でも簡単に薪が作れるよ」

「えー、面白そう。やってみたい」

「じゃあ来年一緒にやる? 今季の分はもう作っちゃったから」

「はい、是非!」


その時瑠璃子は大輔が言った『来年』という言葉に未来をイメージして嬉しくなる。


お喋りをしながら順調にドライブを続けていると札幌北インターの出口が見えてきた。車はそこで高速を降りると今度は一般道を走り出す。そして札幌中心部を目指した。

北国の日没は早い。まだ午後4時だというのに徐々に暗くなってきた。

札幌の繁華街へ到着すると大輔はコインパーキングに車を停める。そして車を降りる時に瑠璃子に言った。


「寒いからあったかくして」


瑠璃子はダウンのファスナーをしっかり閉めるとストールを身体に巻き付ける。そして手袋を出そうとバックの中を覗いたが手袋はない。どうやら家に置いてきたようだ。仕方がないのでそのまま車を降りる。


外は凍てつくような寒さだった。雪はやんでいたが冷え込みがかなり厳しい。

瑠璃子は手をポケットに入れると大輔の後をついて行った。


「時計台に行ってみようか?」

「あ、はい。一度間近で見てみたかったから嬉しい」


駐車場からはすぐだったので二人は時計台を目指した。


時計台へ着くと瑠璃子が叫ぶ。


「うわぁー、なんて素敵なのー」


間近で見る時計台は思ってた以上に小さく感じた。

建物にはクリスマスの飾り付けがされとても華やかでライトアップもされている。

可愛らしい建物は青白い光を浴びて夜の暗闇に浮かび上がっていた。

入口の脇にあるもみの木は青と白のイルミネーションで上品な光を放っていた。


「あ、時計の下に赤い星マークがあるんですね、可愛い」

「あの星は北海道の開拓使のシンボルマークなんだよ。多分北極星なのかな?」

「へぇ……そうなんだ」


そこで瑠璃子はバッグから携帯を取り出すと時計台の写真を何枚か撮った。

その時大輔は瑠璃子が手袋をしていない事に気付く。


「手袋は?」

「忘れちゃいました」


瑠璃子がバツの悪そうな顔で言うと、大輔は左手にはめていた手袋を瑠璃子に差し出す。瑠璃子は恐縮しながらその手袋を自分の左手にはめた。大輔の大きな手袋は瑠璃子の手にはぶかぶかだった。

そして大輔は今度左手で瑠璃子の右手を握ると自分の上着のポケットに手を突っ込む。その瞬間瑠璃子の右手がほわっと温かくなる。

瑠璃子は少し恥ずかしかったが、大輔は特に気にする様子もなく二人はそのまま手を繋いで歩き始めた。


「次は大通り公園に行ってみようか。イルミネーションとクリスマスマーケットがあるからね」

「クリスマスマーケットって、もしかしてドイツで見るようなマーケットの事ですか?」

「そうだよ」


そこで瑠璃子の瞳が輝く。


「わーっ、楽しみ!」



大通り公園は多くの人達で賑わっていた。

広場には大小様々なイルミネーションが並んでいた。夜の闇に浮かぶ光の芸術はとても色鮮やかで美しい。

イルミネーションのモチーフは雪の結晶や花、月、星、そして動物の形をしたイルミネーションもある。

華やかな光の周りでは子供達がはしゃいでいる。


「うわー、先生、すごく綺麗!」


瑠璃子は感嘆の声を上げるとすぐに携帯を取り出して撮影を始める。

そこで大輔が言った。


「撮ってあげようか?」


その言葉に瑠璃子はうんと頷くと、周りをキョロキョロ見回してから傍にいたカップルに声をかけた。


「お撮りしましょうか?」


そして瑠璃子はカップルを撮影する。

何枚か撮ってあげると今度は男性が瑠璃子に言った。


「お返しにお撮りしますよ」


そこで瑠璃子は慌てて大輔を呼ぶ。

そして二人並んで何枚か写真を撮ってもらった。


「「ありがとうございました」」


二人でお礼を言った後、瑠璃子が嬉しそうに言った。


「やった。初めて先生と写真が撮れました。後で送りますね」

「ハハッ、楽しみにしてるよ」


それから二人はクリスマスマーケットへ移動する。

可愛い雑貨が並んだ露店がぎっしりと連なっているのを見て瑠璃子は興奮していた。

瑠璃子は雑貨が好きなので途端にテンションが上がる。


「先生、端から見て回ってもいいですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます」


瑠璃子は早速端の店から覗いていく。その後ろを大輔がついて行った。


何軒目かの店で突然瑠璃子が立ち止まった。瑠璃子の前には沢山の種類のスノードームが並んでいる。瑠璃子はそのスノードームが気に入ったようだ。

様々な色や種類がある中、瑠璃子はスノーマンとツリーが入ったホワイトのスノードームを選ぶ。そしてそれをレジへ持って行った。

瑠璃子がバッグから財布を取り出そうとしていると、突然大輔が手を伸ばして先に会計を済ませてしまった。


「え? 先生?」

「今日の記念にプレゼントするよ」


大輔は笑顔で言うとスノードームの入った袋を瑠璃子に渡した。

すると瑠璃子はみるみる笑顔になる。


「嬉しい! 先生ありがとうございます」


瑠璃子は嬉しそうに袋を抱えた。


その後瑠璃子が残りの店を見ていると大輔がいなくなる。

しかし瑠璃子はそれに気付かないまま最後の店を覗いている。そしてその店から出ようとした時大輔が向こうから歩いて来るのに気付いた。大輔はホットチョコレートを二つ手にしていた。


「ほら、これを飲むと温まるぞ」

「え? ホットチョコレート? うわー、あったかーい」


大輔が買って来てくれたホットチョコレートはとても甘くて美味しかった。


少し身体が温まったところで大輔が次に移動しようかと言った。

そして二人はまた手を繋いで大通りへ向かう。


通りに出ると大輔はタクシーを拾った。


「ロープウェイ乗り場までお願いします」

「ロープウェイって?」

「藻岩山のロープウェイだ。上から綺麗な夜景が観えるから一度は行っておいた方がいいよ」

「へぇ……」


瑠璃子は札幌にロープウェイがある事を知らなかったので驚いていた。


ロープウェイ乗り場に到着するとすぐに二人でロープウェイに乗った。


クリスマスイブのロープウェイはかなり混雑していた。乗っているのはほとんどがカップルだ。

ロープウェイが動き始めるとぐんぐんと高度が上がる。やがて眼下に札幌の夜景が見えてきた。


ロープウェイから見える札幌の夜景はまるで宝石箱のようだ。冬の冷たく澄んだ空気がその輝きを一層引き立てていた。

瑠璃子はその美しい光景に目を奪われていた。そんな瑠璃子を見て大輔は満足そうな表情を浮かべている。


しばらくしてから瑠璃子が言った。


「先生……北海道って…素晴らしいですね……」

「うん……だから僕はずっとここにいるんだ」


大輔は瑠璃子と共に美しい夜景を見ながら誇らしげにそう答えた。

ラベンダーの丘で逢いましょう

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