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仁はまず当たり障りのないメッセージを綾子に送った。


【こんばんは。今日神楽坂先生と会ったのでサインの件話しておいたよ。あと神楽坂先生の次のドラマは純愛モノらしい】


その時綾子はソファーで刺繍の続きをしていた。そこへ『God』からのメッセージが届く。

綾子はスマホを見るとすぐに返信した。


【こんばんは。神楽坂先生の次のドラマは純愛モノなんですね。凄く楽しみです】

【あ、でもねーちょっと君には辛い内容かもしれない】

【え? そうなんですか? でも内容知りたいです。教えて下さい】

【そう? じゃあ教えるけど今度のドラマのヒロインは子供を亡くした後夫と離婚をした女性の話なんだって】


その時綾子はスマホに添えていた指の動きを止める。そしてメッセージをじっと見つめた。

しかしその後すぐに返信する。


【教えてくれてありがとうございます。でもそれくらいなら全然大丈夫ですよ】

【それなら良かったよ。あ、でもこの事はまだ極秘なので口外しないでね】

【承知しました。そんなスペシャルな内容をコッソリ教えていただき感謝です】

【まあ先生は気まぐれだから急に全く違う内容に変わる可能性もあるのであまり期待しないように】

【はい】

【あ、あと先生が今週中には本を送るって言ってたよ】

【わぁ、嬉しいです。神楽坂先生にはくれぐれもよろしくお伝え下さい】

【了解! あ、あと一つ聞いてもいい?】

【何ですか?】

【先生とドラマの設定について色々と話しをしたんだけれど結構君と重なる部分が多くてね、それでふと思ったんだ。なぜ君は軽井沢に住もうと思ったの?】


そこで綾子は再び指の動きを止めた。

綾子が軽井沢へ来たのは理人の夢を見た事がきっかけだった。夢の中で理人は泣きながら雪の中を彷徨い綾子を探していた。

しかしこの事は今まで誰にも話していない。家族にも、叔母のたまきにも、そしてカウンセラーにもだ。


綾子はふと窓辺に飾ってある理人の写真を見つめる。


(ねぇ理人、ママ夢の事『神様』に話してもいいかな?)


その時写真の中の理人がかすかに微笑んだように見えた。まるで理人が許可をくれたような気がしたので綾子は『God』に話す事にした。


【理人…あ、息子は理人という名前なのですが彼がいなくなってから私はしばらく鬱状態でした。東京の実家で暮らしていたのですが死にたいという気持ちが日に日に強くなっていました。そんな時夢を見たんです。理人が軽井沢の雪の中で泣きながら彷徨っている夢を。息子は私を探しているようでした。それでここへ来る決心をしました。事故現場に理人の魂がまだ彷徨っているような気がしてどうしてもここに来なければと思ったんです】


長い文章を打ち込むと綾子はすぐに送信した。そしてホッと息を吐く。

今まで誰にも話せなかった事を初めて言えたので少し気持ちが軽くなったような気がした。


一方、仁は綾子からの返事をじっと見つめていた。

仁はなんと返していいのかわからなかった。メッセージの内容があまりに物悲しく切ない内容だったので作家の仁にも適切な言葉が見つからない。そしてしばらく悩んだ末こう返信した。



【ママが迎えに来てくれたので理人君もきっと喜んでいるんじゃないかな】



『God』からの返信を見た綾子は思わず泣き出した。今まで抑えていたものが堰を切ったように溢れ出す。


自分は誰かにこの言葉を言って欲しかったのかもしれない。 綾子が軽井沢に来た事で理人は救われたんだと。誰かが一言そう言ってくれさえすれば綾子も救われる。

『God』は綾子が待ち望んていた言葉をくれた。

その時綾子は『God』というメールフレンドに出逢えた事に感謝した。


ひとしきり泣いて涙を拭いた後、綾子は『God』に返事を送った。


【ありがとうございます。そう仰っていただき報われたような気がしました。この事は今まで誰にも言えずにいたので聞いて貰えて凄く嬉しかったです】


綾子から返事が来たので仁はホッとする。

そしてメッセージを見て呟いた。


「人に話す事で癒える傷もあるんだぞ……」


仁は再びメッセージを送った。


【辛い事があったらなんでも僕に言いなさい。僕は『神』だからいつでも君を癒してあげられる】


それを見た綾子はフフッと笑う。

綾子はその時初めて『God』という男性の事をもっと知りたいと思った。


年齢、職業、住んでいる町、それに仕事……大まかな事はわかっている。しかしもっともっと『God』について知りたいと思っている自分がいる。

綾子はこのメールを終わらせたくなくて慌てて返信した。


【言いたい事はいっぱいあるんです。愚痴とか怒りとかやるせなさとか。それはもう『God』さんが呆れるくらい】

【何でも遠慮なく『神』に話したまえ(笑)】


その返信に綾子はクスッと笑う。

聞いてくれる人がいる、それだけで綾子の心は安心感に包まれていった。今まで誰にも言えなかった心の中のもやもやを『God』が聞いてくれるのだと思うと嬉しさがこみ上げてくる。

そこで綾子は思っている事を正直に文字にした。


【私の元夫は人殺しなんです】


仁はその一言に衝撃を受ける。そして綾子が真実を話そうとしている事を悟った。


【人殺しってどういう意味?】

【元夫は不倫相手と車に乗っていた時に事故を起こしました。その車の後部座席に理人は乗っていたんです。そして理人だけが亡くなりました】


(おっ、心に閉じ込めていたものを漸く吐き出したな)


仁は確かな手応えを感じ綾子にこんなメッセージを送った。


【良かったら電話で話しませんか? 僕の番号は090-✖✖✖✖-✖✖✖✖です】


綾子はいきなり電話番号が書かれたメッセージが届いたので驚いた。 そして少し悩む。


数分後仁の電話が鳴った。


(声だけじゃばれねーだろう?)


仁はそう自分に言い聞かせると電話を受けた。


「もしもし、初めまして、Godです」

「あ、初めましてエンジェルです」

「一度切りますね。僕からかけ直しますよ」

「あ、すみません」


そこで仁は電話を一度切ると綾子の番号へかけ直した。するとすぐに綾子が出た。


「どうも、突然ごめんね。でも電話の方が手っ取り早いかなと思って」

「あ、いえ、すみませんお忙しいのにお手間を取らせて」

「大丈夫ですよ。で、続きを話そうか? エンジェルさんの元旦那さんは不倫をしてたの?」

「はい。事故を起こした時助手席に不倫相手が乗っていました。その日私は友人の結婚式に出席していてその帰り道に事故の知らせを受けました」

「そっか…それは大変だったね。で、その車には君の元旦那さんと不倫相手と理人君が乗ってたんだね」

「そうです」

「離婚したのは不倫と事故が原因?」

「はい」

「夫婦関係を再構築する事は考えなかったの?」

「考えませんでした。元々愛し合って結婚した訳ではないので」

「え?」

「私が今から言う事は聞き流して貰えますか?」

「ん?」

「ちょっと過激な事を言うかもしれないので」

「____うん、わかった」

「私、元夫の事は愛していませんでした」

「愛していなかったのに結婚して子供を作ったの?」

「いえ、妊娠させられたので仕方なく結婚しました」

「妊娠させれられた?」


仁は驚く。


「はい。この事は親にも言っていないので本当に聞き流していただけると助かります。ずっと黙っていて苦しくて……でも誰かに言えば少しスッキリするかなと」

「うんわかったよ。こういう時は匿名同士だと何かと便利だね」

「ありがとうございます。元夫との出会いは私が勤めていた画廊に彼が立ち寄った事がきっかけでした」

「うん、それで?」

「彼はその後毎日のように画廊に電話をしてきてデートに誘って来たんです。でも私は彼には関心がなかったので断り続けました」


(そりゃあんだけ美人なんだ、松崎隼人も一目で惚れるだろう)


仁はそう思いながら続けた。


「で? それからどうしたの?」

「ある日画廊を出てすぐに彼に呼び止められました」

「待ち伏せか」

「はい。そしてわざと大声で叫ぶんです。今夜一度だけ食事に行ってくれたらもうしつこくしないからって。周りにいる人に聞こえるように大声で」

「なるほど。君を困らせてうんと言わせる作戦か」

「そうなんです」

「で、彼に付き合ったの?」

「はい、彼の言葉を信じた私が馬鹿でした」

「って事は?」

「はっきりした証拠はないのですがおそらく何かの薬を飲まされたんだと思います。私はお酒は強い方なのですが飲み始めてすぐに眠くなりそこから記憶がなくなりました。起きた時には……」

「ベッドの上?」

「はい。どうしてわかったんですか?」

「なんかテレビ業界界隈でそういう話が最近多いって聞いたばかりなんだ」

「そうなんですか?」

「うん。まあ一般人の間でも流行ってるんだとしたら怖いけどな」

「あ、彼は一般人ではなくたまにテレビに出たりしています。あまり詳しくは話せませんが」

「有名人なんだ?」

「はい」

「そっか。で、彼とはその一回限り?」

「はい。その夜の記憶が全くなかったのでまさか自分が妊娠しているとは思っていなくて。後日妊娠に気付いて仕方なく彼に連絡を取りました」

「で、結婚しようと言われたの?」

「はい。でもそれは私を愛していたからではなく彼はうちの実家の財力に魅力を感じていたのかと」

「ほう、君はお嬢さんなんだね」

「お嬢さんという訳ではないですが父が会社をやっているので」

「そうか。いや、でも最初彼は君に一目惚れしてしつこくしてきたんだろう? だから惚れていたんじゃないか?」

「それはないと思います。おそらく彼は自分に振り向かない女性を何がなんでも落とそうとするタイプなんだと思います。その過程が好きなんじゃないかと。だから一度手に入れたら興味を失う人なんです。結婚生活は最初から破綻していましたから」

「そうなんだ……」

「それで…あの……」

「ん?」

「つい最近まで私は殻に閉じこもっていました。でもこうしてGodさんや職場の人と話すようになって気付いたんです」

「気付いた? 何に?」

「私はずっと彼らに怒りを抱いていたんだと」

「…………」

「息子を殺した二人に対する怒りが収まらないんです。それに今やっと気づきました。あの二人は何事もなかったかのように今はしれっと生活しているんです。それに対してもの凄い怒りが……」

「なるほど…君の気持ちは凄くよくわかるよ。だったら君が二人に制裁を加えてやればいいんじゃないかな?」

「制裁ですか?」


綾子は驚いた。まさか神である『God』からそんなアドバイスを貰うとは思ってもいなかったからだ。


「僕にいい案がある。だから君の元夫と不倫相手についてもっと詳しく教えてくれないか?」


そこで綾子は覚悟を決めた。


「わかりました」


綾子は詳細を『God』に話し始めた。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

7

ユーザー

綾子さんの衝撃的な過去を知り 彼女の心を救いたくて、 彼女の本心も知りたくて、 とうとう直接電話でのやり取りを提案した仁さん📲😃❤️ そして、直接 真実をGod(仁)さんに話すことで救われた気持ちになる綾子さん✨👼✨ やはり二人はお互いを求めあっていますね....💖✨ 今後の二人の関係の進展は❓️そしてGodさんの身元を明かせる日はやって来るのか⁉️ 松なんちゃら&愛人への復讐⚔️も気になります((o(^∇^)o))♪

ユーザー

あやつらに制裁を!は仁さんからの提案だったとわ!!! 綾子さんはGod仁さんと話すようになって失った感情を取り戻し、そして最後まで取り戻せていなかった怒りという感情を今、God仁さんと直接話したことで喜怒哀楽全てを取り戻せたと思う。 そして綾子さんは殻という名の扉を🚪開けて大きな一歩を踏み出した。その前にはまだ見えてない神楽坂仁が腕を大きく広げ待っている。しっかりと受け止めてくれる。綾子さんこれからです😊進もう‼️仁さんと✨😭

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