コメント
5件
流星くんホント人の心鷲掴みする可愛い子だわ。賑やかな食卓に優羽ちゃん何か感じたりしないのかな?
サンタさんの弟子ってとの出会い、素敵ですね😃⤴️❤️
わぁ〜(*´艸`*)✨✨✨岳大さん滞在中に2人の関係がどうなるのかメッチャ楽しみ😆
それから優羽と流星は、室堂の散策コースを少し歩きながら、まだ雪が残る山々や可憐な高山植物を観察した。
流星は先程泣いていたのが嘘のようにはしゃいでいる。
親子二人での久しぶりの行楽を終えた二人は、あまり遅くならないうちに山を下りる事にした。
流星は帰りもまた乗り物にいっぱい乗れるとはしゃいでいたが、
最後のバスに乗るとさすがに疲れていたのか、信濃大町に戻る頃にはぐっすりと眠っていた。
二人が山荘に帰り着くと、フロントにいた紗子が出迎えてくれた。
「おかえり流ちゃん! どうだった? 楽しかった?」
すると先ほどまで眠たくてぐずっていた流星は、ごきげんな様子で紗子の質問に答える。
「うん、とってもたのしかったよ! あのね、おっきなおやまをたくさんみたの! あとはね、サンタさんのでしにもあったん
だよ!」
「サンタさんの弟子? まあそんな人に会えたのね! 凄いわね、流ちゃん」
紗子はそう言って流星の話に合わせてくれた。
それから優羽に向かって小声で聞いた。
「サンタさんの弟子って?」
「山から下りて来た人が、転んだ流星を助けてくれたんです。その方の髭がもじゃもじゃだったので…」
優羽がそう言って笑うと、「まあそうだったの!」と紗子も釣られて笑う。
すると今度は食堂のから三橋が出て来て言った。
「流ちゃん、おかえり! お腹が空いたろう? おやつを召し上がれ。夕飯まではまだ少し時間があるからね」
三橋は笑顔で流星を食堂へ呼んだ。
すると流星は、
「みっちゃんのおにぎりすごくおいしかったよ!」
そう言ってぴょんぴょん跳ねながら食堂へ入って行った。
「優羽ちゃんも疲れたでしょう? 明日から仕事開始だから今日はゆっくり休みなさいね」
紗子がそう言ってくれたので、優羽はありがとうございますと言ってから一旦自室へ戻った。
部屋で少し休んだ後、優羽は食堂へ向かう。
三橋が用意してくれるまかない飯が用意されていたが、優羽は先に料理の盛り付けを手伝う事にする。
この日は日曜日という事もあり山荘は満室に近い状態だったので、配膳の手伝いもしようと思っていた。
優羽はテーブルを拭いてからコップや箸を並べていく。
部屋ごとの人数を確認しながらテーブルの上を整えていると、食堂に一人の男性が入って来た。
「あれ、少し早かったかな?」
その男性はそう呟くと踵を返して部屋に戻ろうとしたので、
「もうご用意は出来ていますので、どうぞお掛けになってお待ち下さい」
と、優羽は男性に声をかけた。
そして男性と目が合った瞬間思わず声が漏れる。
「あっ!」
その男性は、先ほど室堂で会った『サンタさんの弟子』だった。
『サンタさんの弟子』は、昼間あった時とはかなり様子が違った。
頬まで伸びた無精髭は、口周りに少し残すのみであとは綺麗に剃られ、かなりすっきりとしていた。
おそらく温泉に入って来たのだろう。
先ほど見た岳大よりも、かなり印象が若く見える。
その時岳大が言った。
「君はさっき室堂にいた…」
「はい。昼間は息子がお世話になりました」
優羽はもう一度岳大に礼を言う。
「いえ…それにしてもびっくりしました。奇遇ですねぇ…」
日焼けした岳大は目尻に皺を寄せて微笑んだ。
その時オーナーの山岸夫妻が食堂へ入って来た。
「あれ? 二人は知り合いかい?」
「あ、いえ、今日たまたま室堂でお会いしたんです」
岳大は微笑みながら夫妻に説明する。
それを聞いた紗子は、
「サンタさんの弟子って、佐伯さんの事だったのね」
と言ってフフッと笑った。思わず岳大と優羽も笑う。
オーナーの山岸だけが何がなんだかわからないという顔をしていた。
それから優羽に岳大を紹介してくれた。
「こちらは山岳写真家の佐伯岳大さんだ。彼が北アルプスに来る時はいつもうちを定宿にしてくれるんですよ。昔からのお馴染
みさんでね…これから雑誌の撮影があるらしく、しばらくうちに泊まっていただく事になるので優羽ちゃんもよろしくね」
そして今度は岳大に向かって優羽を紹介する。
「こちらは今度新しく入った住み込みのスタッフで、森村優羽さんです。明日から仕事開始なんでまだ慣れない点もあるかと思
いますが、どうか大目に見てやってください」
「森村です。よろしくお願い致します」
「こちらこそ! この山荘には二十歳の頃からお世話になっているので、今では実家のようなものなんです。これから撮
影でバタバタしてご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします」
それから岳大が席に着くと山岸夫妻も一緒に座った。
岳大の仕事仲間が到着するのはまだ数日先なので、山岸夫妻は今夜岳大と一緒に食事をする事にしたらしい。
食事の時間になると、優羽は三橋の妻と共に配膳を始めた。
その調理場から流星が出て来てめざとく岳大を見つけた。
「あっ! サンタさんのでしがいる!」
岳大が髭を剃っていても、流星はすぐに気付いたようだ。
「今日からここに泊まる事にしたよ。僕の名前は『たけひろ』です。君のお名前は?」
「ぼくは『りゅうせい』だよ。わーい、サンタさんのでしといっしょのおうちにすめる!」
流星は再び大はしゃぎする。
「流星、お部屋に戻っていなさい」
優羽が息子に注意をすると、岳大が言った。
「いいじゃないですか! 僕は全然構いませんから」
そして岳大は流星においでと手招きをする。
山岸夫妻も、流ちゃんこっちにいらっしゃいと声をかけたので、
流星はニコニコしながら岳大の隣にちゃっかりと座った。
優羽は諦めたように、
「すみません」
と頭を下げてから、再び料理を運び始める。
その晩岳大がいるテーブルでは、流星の楽しそうな笑い声がいつまでも響いていた。