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12話 26934スポット はじめての平日
朝の音が、
違って聞こえる。
窓を開けると、
空気がそのまま入ってくる。
遠くで水の音。
近くで足音。
リカは、
靴を履く。
少し大きめの通学用。
紐はきつく結ばれている。
長めの上着。
袖は手の甲まで。
腰元で、
電子マネーのキーホルダーが
一度だけ鳴る。
外に出ると、
人とすれ違う。
挨拶は短い。
視線だけ交わす人もいる。
道は広い。
でも、
交差点が少ない。
曲がる回数が少なく、
迷わない。
川沿いを通る。
水面は動き続けている。
同じ場所なのに、
同じ形はない。
学校までの距離は、
地図だと長い。
でも、
歩いてみると
思ったより短い。
団地から出ていた頃より、
足が止まらない。
帰り道。
鞄の中は軽い。
余計なものを
持たなくなった。
途中で、
小さな店に入る。
必要なものだけ取る。
支払いはすぐ終わる。
現金。
手渡し。
受け取り。
外に出ると、
空がそのまま続いている。
近所の人とすれ違う。
髪を後ろでまとめた人。
作業着のままの人。
買い物袋を提げた人。
誰も急いでいない。
家に戻る。
階段は低く、
三階まですぐ。
扉を開けると、
部屋の温度が
ちょうどいい。
リカは、
鞄を置く。
キーホルダーを外し、
机の上に置く。
音が止まる。
129より、
ずっと広い。
でも、
今日歩いた距離は
短かった。
それが、
少しだけ
安心につながる。
リカは、
椅子に座り、
窓の外を見る。
ここで過ごす平日が、
もう始まっている。
静かに、
確かに。