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13話 1900スポット ウイング小学校 席が決まる
黒板の前に、
番号が並ぶ。
順番に、
名前が呼ばれる。
人が多すぎて、
流れ作業みたいになる。
リカは、
机を移動させる。
長めの上着。
袖は手の甲まで。
少し大きめの椅子に座ると、
足が床につく。
腰元で、
電子マネーのキーホルダーが
軽く鳴る。
周りを見る。
知らない顔ばかり。
覚える気は、
あまり起きない。
前の席。
後ろの席。
遠くの列。
視線を合わせても、
すぐに逸れる。
隣の席に、
誰かが座る。
鞄を静かに置く音。
髪は短く、
整えすぎていない。
動きは少しゆっくり。
服装は、
特に目立たない。
「よろしく」
声は小さい。
リカは、
一拍おいて頷く。
「よろしく」
それだけで、
十分だった。
先生の声が響く。
説明が続く。
進行は早い。
板書を写す音が、
教室中で重なる。
隣の子は、
書くのが丁寧だ。
行がまっすぐ。
リカは、
それを横目で見る。
休み時間。
立ち上がる人。
席を離れない人。
リカは、
そのまま座る。
隣の子も、
動かない。
「この教室、
広いね」
突然、
そう言われる。
「うん」
短い返事。
それで会話が終わる。
でも、
気まずさはない。
昼。
机を少し寄せる。
弁当の包みを開く音。
周りはにぎやか。
リカは、
自分のペースで食べる。
隣の子も、
同じくらいの速さ。
午後。
席はもう、
動かない。
ここが、
しばらくの場所になる。
名前は、
まだ知らない。
全部覚えなくても、
困らない。
帰りの準備をして、
立ち上がる。
隣の子が、
先に鞄を持つ。
「またね」
自然な声。
リカは、
少しだけ驚いてから、
頷く。
「また」
教室を出る。
人は多いまま。
それでも、
隣だけは、
ちゃんと残っていた。
それで、
今日は十分だった。
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