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町を出てしばらく進んだころだった。
街道の脇に、小さな荷車が止まっていた。
車輪が外れていた。
近くに女が一人と、子供が二人いた。
女は困った顔をしていた。
レオルが足を止める。
「どうしました」
女は言った。
「車輪が外れてしまって」
荷車には薪が積まれていた。
重そうだった。
レオルがしゃがみ込む。
「直せそうです」
陽和たちは待つことにした。
子供がこちらを見ていた。
鎧を見ている。
一人が言った。
「勇者様?」
陽和は言った。
「候補です」
子供は言った。
「すごい」
何がすごいのか分からない。
風が吹いた。
冷たかった。
空は曇っていた。
陽和は言った。
「寒いですね」
子供がうなずく。
「夜が寒いんだ」
女が言った。
「山の近くでして」
ミナが言った。
「宿は?」
女は首を振った。
「ありません」
少し黙る。
レオルが作業を続けていた。
まだ時間がかかりそうだった。
子供が陽和の近くに来た。
しばらく立っていた。
それから言った。
「ここ暖かい」
陽和は言った。
「少しだけですけど」
もう一人も来た。
女も近づいてきた。
「本当ですね」
風は冷たかった。
だが周囲だけ少し違った。
ほんの少し。
レオルが言った。
「もう少しかかります」
女は言った。
「急ぎません」
子供が座る。
陽和も座った。
しばらく誰も話さなかった。
ただ風の音がしていた。
子供が言った。
「夜が怖いんだ」
陽和は言った。
「寒いから?」
子供はうなずいた。
「火が弱いと眠れない」
陽和は少し考えた。
それから言った。
「少し一緒にいます」
女が言った。
「そんな」
陽和は言った。
「時間はあります」
本当かどうかは分からない。
だが言った。
しばらくしてレオルが言った。
「直りました」
荷車が動くようになった。
女は何度も礼を言った。
出発しようとする。
子供が言った。
「もう行くの?」
陽和は少し考えた。
それから言った。
「少しだけ」
日が傾くまで一緒にいた。
火を起こした。
小さな火だった。
それでも暖かかった。
だがそれだけでは足りなかった。
子供が陽和の近くに座る。
少し安心した顔をしていた。
暗くなるころ。
女が言った。
「助かりました」
陽和は言った。
「何もしてません」
女は言った。
「そんなことありません」
子供はもう眠そうだった。
帰り道。
ミナが言った。
「珍しいわね」
陽和は言った。
「何がですか」
「自分から残るなんて」
陽和は言った。
「寒そうだったので」
レオルが言った。
「勇者の仕事です」
フィルが言った。
「祝福は人を守るためにあります!」
陽和は歩いた。
暖かかった。
少しだけ。
その暖かさが、
今日は少し違って感じた。
陽和は思った。
勇者の仕事は、
戦うことではないのかもしれない。
ただそこにいて、
少し暖かくすることでも、
いいのかもしれないと思った。