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草凪葉月🌙⭐️🐈⬛@活休中?
月咲やまな
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(ど、どうして速攻でこんな事に?何でこうなった⁈)
柊也は今、直立不動の姿勢のまま固まっている。額からは汗がダラダラと流れ、手汗も酷く、緊張している事が誰の目から見ても明らかだ。
「あはは。そう緊張なさらずに。『まさか最速で王の前に連れて来られるとは思いもしなかった』と顔に書いてありますよ?」
「す、す、すみません!」
真っ直ぐな背筋を更に無理矢理伸ばし、柊也が大きな声で謝った。
「貴方は既に私の家族みたいなものと言っても過言では無い存在だ、そう緊張せずに。ね?」
金色の髪をサラリと揺らし、柊也の目の前で玉座に座るレーニア国王が優しく微笑む。お子さんが二人もいる身とはとても思えぬ若々しい外見をした彼に微笑まれ、周囲にいる家臣達の胸がちょっとだけきゅんっとしたレベルの温かな笑顔だった。だがしかし、残念な事にレーニア国王が砕けた話し方と笑顔のコンボで緊張を解こうとしているというのに、柊也は緊張度合いが急上昇する一方だ。
入城から真っ直ぐ連れて来られた『謁見の間』をちらっと観察する余裕など一ミリたりとも無い。美しい美術品や、芸術的価値を知りたくも無い華々しい装飾に囲まれ、息をするのすら怖い。足の下にある赤い絨毯を靴で汚す事すら恐れ多い気持ちになってしまっていて、緊張のし過ぎで倒れるのでは?と、隣に立つルナールは柊也が心配でならなかった。
そんな状態な為、レーニアの発した『既に家族みたいなもの』という発言を柊也は疑問にすら思っていなかった。ちゃんと聞いていたのかも怪しい。
レーニアの言った通り、柊也とルナールは王城へ辿り着いたと思ったら、そのまま謁見の間まで直接連行された。その間ずっと『お待ちしておりました!』『レーニア国王がお待ちです!』『さぁ急いで!』と周囲を囲む警備兵やメイド達に口々に声をかけられ続け、彼らからやっと解放されたと思ったら目の前に国王が鎮座しているという状況に叩き込まれ、一連の流れに柊也の頭がついていけていなくても無理はないだろう。
だからといって、ここまで彼が緊張してしまうとは……と、レーニアが少し困った顔になった。だが、その事にすら気が付いていない柊也に向かい、レーニアは出来る限り柔らかな笑顔を向け続けた。
「改めて自己紹介をさせて下さい。私はレーニアと言います。妻の名はラモーナ。今はちょっと色々と準備が忙しいらしく、妻は後ほど来るそうです」
緊張を更に助長しそうなワードを敢えて避けて、レーニアは言葉を続ける。
「隣に居るのは息子のライエンです」
レーニアの紹介を受けて、父に似た金色の美しい髪をサラリと揺らしながらライエンが軽く会釈した。
「はじめまして」
そう言った顔は少し強張っていて、無理をして笑っている感じがある。だが、柊也がその事に気が付くような余裕はもちろんなかった。
「はじめまして!九十九柊也と申します。自己紹介が遅れてしまい、大変失礼致しました」
「トウヤ様の従者、狩人のルナールと申します」
震えた声の柊也に続き、会釈しながらルナールも自己紹介をした。
「ツクモ・トウヤ様ですか、よい名前ですね。私も彼の様に『トウヤ様』とお呼びしても?」
「もちろんです!あ、でも……様付けは畏れ多いので勘弁して下さいぃ」
レーニアに言われては断る事など出来るはずがない。柊也は速攻で了承はしたものの、本心がダダ漏れだった。
「では、トウヤ」
「はい!」
「私達は貴方がこちらの世界へ来て下さる日を、首を長くしてお待ちしておりました」
瞼を閉じ、ふぅとレーニアが一呼吸置く。
一瞬の沈黙の中に、彼がどれだけこの日を待ち望んでいたのかが滲み出ていた。
「……トウヤ、私は息子であるユランの完全なる解呪を望みます。その為に、貴方様の力を我々にお貸し頂きたい」
力強い眼差しでそう言ったレーニアの言葉を聞き、謁見の間に居る家臣達が一斉にどよめいた。この場に居る家臣達は皆、国王がその様な発言をするなど想定していなかったみたいだ。
「レーニア国王、その様な話は初耳ですぞ!」
「“孕み子”の誕生を歓迎する国も今では数多くあるというのに、ここを最後の誕生の地にするですと⁈た、他国に何と言えばよいのか!」
「何故我々にも事前にそれをお話しにならなかったのですか?早く知っていれば、対策も色々と——」
口々に不満を口にし、家臣同士でああでもないこうでもないと議論を始める。そんな周りの様子を見て、柊也が動揺し、ルナールの服の袖にしがみついた。
「トウヤ様……大丈夫ですよ。私がついていますから」
「ルナール……」
お互いを見詰め合い、このまま二人の世界へ柊也達が入り込みそうな状態になった時、閉まっていたはずのドアが勢いよく両扉ともにバンッ!バキィィィッと開き——壊れた。
謁見の間に怒号にも似た声が響き渡り、一斉に視線が声の主へと向く。案の定そこには司祭であるウネグが鼻息荒く、戦士の面持ちで仁王立ちしていた。