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#ハッピーエンド
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廊下に一歩出たレンブラントの表情は、硬く厳しいものに変わっていた。
軍靴を響かせながら、足早で廊下を歩く。そして屋敷のとある一室の前で足を止めると、ノックもせずに扉を開けた。
「待たせたな」
レンブラントがそう言ったと同時に室内で待機していた部下達──ラルク、ロヴィー、マース、モーゼスは、一糸乱れぬ動きで軍人の礼を執った。
そんな中、同じく部屋で待機していたフローチェがドレスの裾をバサバサと言わせながらレンブラントに詰め寄った。
「ねえ、予想以上に遅かったけど、あなたベルちゃんに変なことしてないでしょうね!?」
「……ああ」
出鼻を挫かれたレンブラントは、苦々しい顔をしながらも頷くが、決してフローチェと目を合わせようとはしないない。
レンブラントの嘘を瞬時に見破ったダミアンが、レンブラントとフローチェの間に割って入った。
「ねえフローチェ、そんなことを言っては駄目だよ。レンだってさすがに熱を出しているベルちゃんを困らせるほど、不埒なことはしてないはずだよ。うん、多分」
余計に誤解を生む発言をした腐れ縁の彼に、レンブラントは心底苦い顔をする。
「……ダミアン。口を閉じろ」
「なんで?!」
せっかくフォローしたのにと悲しい顔をするダミアンを無視して、レンブラントは部屋の中央まで歩を進めた。
そして気持ちを切り替えるために長い前髪をかき上げた。
「改めて、皆、無事で何よりだ。ダミアン、フローチェ、二人にも感謝する。では、今後の予定を伝える」
「はっ」
部下達は生真面目な表情を作り、レンブラントの指令に耳を傾けた。
「ロヴィーとマースは俺と同行。ラルクとモーゼスは、ここで待機。ベルの警護に当たれ」
すかさず「はっ」と軍人らしい返事をする彼らに、レンブラントは一つ頷く。
しかし、これで終わりではない。彼らへの指令はまだ続きがあった。
「フローチェ、ドレスの予備は?」
「たぁーくさんあるわよ。それにうちのメイドの中には、優秀な針子もいるから安心して」
パチリと可愛らしいウィンクをフローチェがしたと同時に、ラルクは自分の役割を瞬時に察してしまい、この世の終わりのような顔になる。
「……隊長……また……ですか?」
ラルクはどうか間違いであれと祈りながら、レンブラントに尋ねる。
何を食べても、どんなに身体を鍛えても、華奢な体格を維持してしまうラルクは女装に適した人材だ。
とはいえラルクは、女装要員として軍人なったわけではない。
そんな気持ちを隠さないラルクに、レンブラントは無情な言葉を吐く。
「いい加減慣れろ」
「慣れませんよっ」
食い気味に噛みつくラルクを黙殺したレンブラントの頭の中は、別のことを考えるのに忙しい。
全員が無事に合流できたのは、レンブラントがここフローチェの別宅に到着してから半日後。
そこでレンブラントは、部下たちから今回の事件の黒幕はクルトではなく、現ケルス領の領主でありベルの継母であるフロリーナであると報告を受けた。
軍事国家であるこの国で、軍人に刃を向けるのは愚行でしかない。しかしそうしなければならないほど、現ケルス領の領主は追い込まれている。
それは領印を破壊したことを知ってしまったからなのか、もしくは国王がケルス領の一斉摘発に乗り出すことを察したからだろうか。
どちらにしても、これからより一層気を引き締めなければならない。ここからが正念場だ。
一刻も早く面倒事を片付けて、ベルとの約束を果たさないといけない。
軍人嫌いの理由を語ってくれたのは、意地っ張りで天邪鬼な彼女が、精一杯、レンブラントに心の中を見せようとしてくれたからだ。
ベルしか知らない。とても大切な話を聞かされ、レンブラントは彼女の心の中に自分の居場所を作って貰えたような気持ちになった。
(たまらなく愛おしい)
今頃きっと着替えをしないまま、再び眠りに落ちているであろうベルの寝顔を想像して、レンブラントはぎゅっと目をつぶった。
コメント
1件
いやあ、もう胸がいっぱいです……!レンブラントが部下たちと合流してからの、あの切り替えの速さと軍人らしい統率力、かっこよすぎます。でも頭の中ではずっとベルのこと考えてて、「たまらなく愛おしい」って締めくくるところがもう、こっちまで幸福感でいっぱいになりました。ラルクの女装コールもお約束で笑っちゃいましたけど(笑)。次が楽しみです!