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22話 26934スポット 季節の変わり目
朝の空気が、
前の日と違う。
窓を開けると、
冷たさとやわらかさが
同時に入ってくる。
リカは、
立ち止まる。
長めの上着。
袖は手の甲まで。
靴は同じなのに、
足裏の感触が違う。
腰元で、
電子マネーのキーホルダーが
軽く揺れる。
川沿いの道へ出る。
昨日までと、
景色は同じはずなのに、
音が変わっている。
葉が触れ合う音。
水の速さ。
風の通り方。
少しずつ、
配置が動いている。
学校へ向かう途中、
木の下で
立ち止まる人がいる。
おかあさんも、
歩く速さを落とす。
肩までの髪をまとめ、
周囲を見渡す。
表情は、
悪くない。
「早いわね」
それだけ言う。
昼。
校庭の端で、
地面を見下ろす。
昨日はなかったものが、
今日はある。
誰かが気づき、
誰かは気づかない。
全部が、
一斉に変わるわけじゃない。
帰り道。
朝とは、
また違う空気。
リカは、
歩きながら
それを受け取る。
移動しなくても、
場所は変わる。
ここでは、
それが早い。
キーホルダーを握る。
番号を確認する必要はない。
この変化は、
ここにいる人全員に
同じ速さで届いている。
マンションが見える。
窓の位置は変わらない。
階段の段数も同じ。
でも、
戻ってくるたびに
少し違う。
それが、
悪くない。
部屋に入る。
机に鞄を置き、
椅子に座る。
リカは、
窓の外を見る。
変わっていくことを、
追いかけなくていい。
ここでは、
立っているだけで、
ちゃんと感じられる。
それを、
少し楽しんでいる自分に
気づいていた。
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