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6話 スポットワーク
机の上に、
薄い紙の束が広がっている。
角が少し折れていて、
触ると指にざらつく。
リカは、
床に座っている。
長めの袖。
膝を抱える形。
腰元で、
電子マネーのキーホルダーが
動くたびに触れ合う。
「まだこれ、
あったんだ」
軽い声。
鞄の横で、
ぬいぐるみほどのサルが
机の縁にぶつかる。
紙の表紙には、
大きな数字が並んでいる。
有名なスポット。
聞いたことのない観光地。
建物一つ分だけの場所。
ページをめくるたび、
番号が増える。
「10億番ってさ」
指でなぞる。
「逆に何もなさそう」
笑い声。
「じゃあ、
1番は?」
誰かが言う。
「原っぱとか?」
「入口だけとか?」
想像は軽い。
髪をきちんとまとめた友達は、
端末を置いて、
紙を覗き込む。
指先で、
数字の並びを追っている。
もう一人は、
少し派手な服装のまま、
床に寝転ぶ。
複数のキーホルダーが
胸元でじゃらっと鳴る。
「ほら」
ページの端。
小さな欄。
細い文字。
過去五ヶ月、
使用履歴なし。
「これ、
遊びにちょうどよくない?」
冗談半分。
誰も否定しない。
リカは、
紙をめくる手を止める。
さらに端。
別の欄。
除外済みスポット。
番号が並んでいる。
淡々と。
感情のない文字。
そこに、
見慣れた数字がある。
129。
一瞬、
部屋の音が遠くなる。
誰もすぐには気づかない。
サルのキーホルダーが揺れ、
金具の音がする。
誰かが笑う。
別のページをめくる。
リカは、
その数字から目を離す。
紙は軽い。
でも、
指先に残る感触が消えない。
冗談の続きを聞きながら、
キーホルダーを握る。
番号は、
まだここを示している。
それだけが、
確かだった。