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夏樹さんとの出会いは、私が二十二歳の時、実家の近くにあるチヨダ自動車学校に通い始めたのがきっかけだった。
大手自動車メーカー、チヨダ自動車直営の教習所、というのもあり、教習車は全てチヨダ、教習生も当時は多く在籍してたように思う。
それまで、車の免許は欲しいと思わなかったけど、母親に『車の免許は持ってた方がいい』と勧められて、渋々通い始めた。
技能教習で、夏樹さんが担当になったのは、卒業検定に進むまで六回あった。
初めて夏樹さんが担当になった時、強面のせいか、指導も厳しくて怖いんだろうな、と思っていた。
私が予想していた通り、厳しくて、教習中も何度か急ブレーキを踏まれたし、きつい事も言われたけれど……。
『村下さんって、彼氏いるの?』
『えっ? あっ…………はいっ……いっ……一応いま……す……』
夏樹さんの担当が三度目になった時、唐突に質問され、辿々しく答えた私。
『彼氏とは、うまくいってんの?』
『えっ……ええ……まぁ、それなりに……』
この頃から、夏樹さんと私は、教習の合間の雑談で、プライベートな事も少しずつ話すようになっていた。
仕事の話、それに、夏樹さんに彼女がいる事も。
時折、彼が強面の表情から覗かせる目を細めた面差しに、私は、恋人がいながらも、いつしか夏樹さんに惹かれていた。
第二段階で路上教習に入ってからも、夏樹さんが担当になった事が三回あった。
配車の手続きをする際、自動機から排出される紙に『担当指導員 橋本夏樹』と記載されているのを見るたびに、胸の奥がギュッと摘まれ、頬が緩む。
けれど、これ以上、夏樹さんに好意を持ってはいけない。
卒業したら、接点もなくなって会う事なんてないし、私には恋人がいるんだ。
抑えている気持ちとは裏腹に、夏樹さんへの想いが恋焦がれていく。
教習中、軽く雑談する事はあったけれど、彼の言葉に返事をする程度。
持て余している恋慕を抱えたまま、私は卒業検定に合格して教習所を卒業し、これで全てが終わったかのように思えた。
卒業してから数ヶ月後、立川駅近くで夏樹さんと偶然にもすれ違った。
私は仕事終わりで自宅へ向かい、彼は勤務先の教習所から駅へ行く途中なのだろう。
これ以降、駅周辺で何度か彼とすれ違う事が増えた。
だったら偶然を装い、夏樹さんと話すきっかけを作るチャンスを、増やしてみればいいかもしれない。
私は、彼とすれ違う時間をチェックすると、そのタイミングに合わせて帰宅するようになった。
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コメント
1件
うわ、この第6話めっちゃ刺さった……。夏樹さんに惹かれていく主人公の気持ちの揺れ方がすごくリアルで、「抑えなきゃ」と思えば思うほど恋心が大きくなってく感じがたまらなかったわ。最後の「すれ違う時間をチェックして合わせる」ってとこ、切なすぎるでしょ。気づいたら自分もドキドキして読んでた。続きが気になる〜!