テラーノベル
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───天乃は、とっくのとうに死んでいた。
この事実だけが頭の中をぐるぐると動き回り、思考回路をめちゃくちゃにした。
「な、なんで、どうして?! じゃあ今ここにいるお前は何なんだよ?」
自身は相手の胸ぐらを掴みながら、まるで尋問のように相手に問い詰めた。きっと、相手だってよくわかっていないだろうに。
「今ここにいる俺は、本来迎えるべき運命だった天乃絵斗だと俺は予測してるけど……実際は俺にもわからない」
困り果てたような顔で俯きながら、次の瞬間にはいつものような笑顔が帰ってきた。
「もしかしたら、神様が何か返してくれたのかもね? 俺の日頃の良い行いとか、命が代償だったのは少し重かったとか!」
そんなわけないだろう。
そんな自分の心の声を汲み取ったかのように、相手は少し寂しいような笑みを浮かべた。
「……それか、こうやってらだぁに何回もやられないと叶えられない願いだったのかもね」
本来迎えるべきであった運命をねじ曲げた彼に対する罰なのだろうか。それとも、これは彼の行動に気づけなかった自分自身への罰なのだろうか。
神様は、問いには答えてくれない。
「……それ、お前が幸せじゃないだろ」
「なんで? 幸せだよ?」
振り絞るような声で言ったというのに、相手はその努力を軽く飛び越えるような勢いを持って、淡々と返事をした。
「死んだあの日、俺の魂が完全に消える前に思ったんだ。”こんなに早く死ねたんなら、らだぁもきっとすぐ幸せになれる”ってね。だから後悔はないよ」
きっと痛かっただろう。
きっと皮膚が引きちぎれただろう。
きっと体から温度が抜けていくのを体験したのだろう。
きっと、最後は俺のことを思いながら死んでいったのだろう。
そう思うと胸が痛くなり、動悸が激しくなる。
「じゃあ、鬼になった俺は……」
誤魔化すように、ほぼ答えが出ているようなものをわざと質問として聞いた。
「うん、もうずっと昔に消えた。というか、お前が鬼になる前だったから、お前が願ったところで意味はなかったのかもね」
少し申し訳なさそうな、でも、俺が鬼にならなかったことへの安心感が、彼の顔からは滲み出ていた。
かといって、鬼ではなかったというわけでもない。ちゃんと理性も無くなって、自分を人として見れなくて、なんとなく力が抜けた。
きっとその時は、自分は鬼になっていたはずだ。
その疑問を問えば、相手はまるで神の思うことがわかるかのようにすぐに返事をくれた。
「ちょっとの期間鬼になっちゃったのは、神様もお前に本来迎えようとしてた醜い結末を、一度は味わせなきゃならなかったんだろうね」
ああ、神様。なんという酷い仕打ちを。
自身が鬼になるということは、必ずしも惨い結末を迎えるというわけではない。
むしろその逆だ。
きっと潔く鬼になっておけば、こんな複雑にならなかっただろうに。
「───今、ここにいるお前はどうなるの?」
存在するべきでなかった、刑事の天乃。そんな彼が生きれるかなんて問われれば、その答えは一つしかない。
それを相手も自分もよく分かっている。相手は”そんなの、分かってるでしょ?”と寂しそうな笑みで答えた。
「死ぬよ」
「……」
「だって、それが本来迎えるべき運命だったんだから」
なんで、と小さく言葉に出た。 悔しさでもあったし、怒りでもあったし、悲しみでもあった。
とにかく天乃をこんなことにさせた自分が悔しくて、天乃のした行動が許せなくて、天乃がいなくなってしまうことが悲しかった。
「じゃあ、今が……」
「うん、最後に話せるチャンス」
チャンス、と聞けばいいものに聞こえるのだろう。けれどこのチャンスは、逆転できるような意味のチャンスではない。
後悔しないためのチャンスであって、運命を変えられる大逆転のチャンスなんかではないのだ。
「何か話したいことはある?」
階段のそばから、生徒の覗く視線があるのには気づいていた。
それでも今は、とにかくチャンスを逃したくなかった。
「なんでお前は……───!」
嗚咽が漏れた。
#○○の主役は我々だ!
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推しで世界を支配する
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