テラーノベル
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昼休み。教室の片隅、3人。話題は何気なく、しかし、妙にひっかかる内容。
蓮司(お菓子を開けながら)
「さっきさ、ゴミ箱に数学のプリント丸ごと突っ込んであるの見た」
日下部
「誰の?」
蓮司
「名前なかったけど……折り方がちょっと、こう……“怒りをこらえた丸め方”してた。綺麗にギュッて」
遥(沈黙。視線が一瞬だけ泳ぐ)
日下部(じっと遥を見る)
「……それ、お前じゃないよな」
遥(目を逸らす)
「……知らない」
蓮司(ふっと笑って)
「別に責めてないよ。誰かがやっただけ。よくあるでしょ、やる気なくなるやつ」
日下部
「でも“突っ込んで捨てる”って、相当だろ。出せないってことじゃなくて、“出したくない”に近い」
蓮司
「うん。だから逆に、先生のコメント見たのかもね。“やるだけ無駄”みたいなこと、平気で書く教師いるし」
遥(ぼそっと)
「……“前回よりはマシです”、って書かれてた。……“期待はしてませんが”、とも」
蓮司(声を潜めて)
「……マジで書いてあった?」
遥
「……うん。赤で、でかい字で」
日下部(拳を握る)
「ふざけんな……」
蓮司
「教師のくせに手加減ゼロか。……まあ、でも“期待してない”って言えば、何でも許されると思ってるからな、あいつら」
遥(机に肘をついて)
「……だから、いらなかった。全部。捨てた」
蓮司(冗談めかして)
「……それ、お前だったんかい」
遥(目を伏せて)
「……知らないけどね」
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