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さぶた@気分屋
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うわ、めっちゃ心に来た……蒼真が「誰にも言わないで」って頼むときの声の震え方、文章から伝わってきて息が詰まりそうだった。悠生が「今は言わない」って答えるところも、守ろうとしてるのが分かるから余計に切ない。最後の「この笑顔だけは壊したくない」って蒼真の決意、もうすでに重いのにこれから先が気になりすぎる……。続き読みたいです😢
その日の放課後。
蒼真は学校に残っていた。
誰もいない教室。
窓の外は、もう暗くなり始めている。
机の中から、紙を取り出す。
何枚もある。
折り目のついた紙。
何度も握りつぶして、それでも捨てられなかったもの。
蒼真は一枚を開いた。
そこには、また自分をからかう言葉が書かれていた。
もう驚かなかった。
紙を閉じる。
鞄へ入れる。
帰ろうとした。
そのとき。
廊下から足音が聞こえた。
蒼真は反射的に身構える。
足音が近づく。
「蒼真?」
悠生だった。
「……何でいるの」
「忘れ物」
「そっか」
悠生が教室へ入ってくる。
蒼真は鞄を持った。
「帰る」
「待って」
「何」
「最近、ずっと帰るの一人じゃん」
「そう?」
「そうだよ」
悠生は蒼真を見る。
「今日も一人で帰るつもり?」
「うん」
「じゃあ俺も一緒に帰る」
「……いいよ」
蒼真は断ろうとした。
でも。
うまく言葉が出なかった。
校舎を出る。
二人で歩く。
いつもの帰り道。
けれど、以前みたいに話せない。
悠生も何も言わない。
少し歩いたところで、蒼真が口を開く。
「悠生」
「ん?」
「俺さ」
言葉が続かない。
「……何でもない」
「そう」
悠生はそれ以上聞かなかった。
それが、ありがたかった。
公園の前まで来た。
蒼真が足を止める。
「ちょっと待って」
「どうした?」
「……何でもない」
そう言った瞬間。
足元がふらついた。
悠生が腕を伸ばす。
「蒼真」
その手が触れる前に、蒼真は後ろへ下がった。
「触らないで」
声が震えた。
悠生が止まる。
蒼真自身も驚いていた。
「……ごめん」
「いや」
悠生は手を下ろす。
「俺こそ、ごめん」
蒼真は俯いた。
しばらく何も言えなかった。
「……最近」
悠生が静かに言う。
「何かされた?」
蒼真の呼吸が止まる。
「されてない」
「蒼真」
「されてない」
声が大きくなる。
「本当に、何も」
悠生は黙る。
蒼真は顔を上げられなかった。
しばらくして。
蒼真が小さく言った。
「……昨日」
悠生が待つ。
「学校で、嫌なことがあった」
「うん」
「俺が悪かったわけじゃない」
「分かってる」
「でも」
声が震える。
「俺が何かしたみたいに思われるのが嫌で」
悠生は何も言わない。
蒼真は続けた。
「誰にも知られたくない」
「……うん」
「紬にも」
「分かった」
「先生にも」
「うん」
蒼真は目を閉じた。
「だから」
少し間が空く。
「誰にも言わないで」
悠生はすぐには答えなかった。
蒼真が顔を上げる。
「お願い」
「……分かった」
悠生の声は低かった。
「今は、言わない」
蒼真は少しだけ息を吐いた。
「ありがとう」
帰り道。
二人とも、ほとんど話さなかった。
蒼真は何度も後ろを振り返った。
誰もいない。
それでも落ち着かなかった。
悠生は、それに気づいていた。
けれど何も言わない。
ただ、蒼真より少しだけ後ろを歩いた。
近づきすぎないように。
離れすぎないように。
家の前。
「じゃあ」
蒼真が言う。
「また明日」
「うん」
蒼真が玄関へ入る。
ドアが閉まる。
悠生はその場から動かなかった。
蒼真が頼んだ。
誰にも言わないで。
約束した。
でも。
あの顔を見てしまった今。
何もしないことが正しいのか、悠生には分からなかった。
部屋に戻った蒼真は、鏡の前に立った。
短く切る前の髪が、まだ頭の中に残っている。
長かった髪。
昔の自分。
可愛いと言われても、何も嫌じゃなかった頃。
紬と笑っていた頃。
悠生と三人で遊んでいた頃。
もう戻れない気がした。
蒼真は髪に触れる。
「……これも嫌だ」
自分でも何を指しているのか分からなかった。
髪なのか。
昔の自分なのか。
それとも。
あの日から、自分を見る目そのものなのか。
翌朝。
紬が蒼真の髪を見る。
「やっぱり短いのも似合う」
「そう?」
「うん」
「じゃあ、切ってよかった」
蒼真は笑った。
紬も笑う。
その笑顔を見ながら、蒼真は思う。
この笑顔だけは。
絶対に壊したくない。
だから。
紬には言わない。
何があったのかも。
なぜ髪を切ったのかも。
ずっと。
自分の中にしまっておく。
そして、その決意が。
何年経っても、三人の間に残り続けることになる。