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ruruha
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きゆう
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📩 相談
中学2年・Mさん
学校では普通にしています。
友達と話すし、笑うこともあります。 授業も受けるし、先生に当てられたら普通に答えます。
だから、自分でも「別に大丈夫なんじゃないか」と思っていました。
でも、家に帰ると何もしたくなくなります。
制服を脱ぐのも面倒で、鞄を置いたままベッドに座って、そのまま動けなくなることがあります。
学校にいる間は普通だったのに、帰ってきた途端に全部嫌になります。
それで「学校では普通にできてるんだから、こんなの大したことない」と思ってしまいます。
本当にしんどい人なら、学校でもつらいはずですよね。
でも、毎日これを繰り返しています。
自分が大げさなのか、本当に疲れているのか分かりません。
遥「……これ、俺も分かる」
蓮司「どこが?」
遥「学校にいるときは、普通にできてるから大丈夫だと思っちゃうところ」
日下部「でも、家に帰ると動けなくなる。そこまで含めて一日の状態だろ」
M「でも学校では普通なんです。笑えるし、友達とも話せるし」
蓮司「だから何?」
M「え?」
蓮司「笑えたから、疲れてないことになるのか?」
M「……そういうわけじゃ」
蓮司「でも、おまえはそう扱ってる」
M「……」
蓮司「『学校で普通にできた』を証拠にして、『だから自分は大丈夫』って結論にしてる」
遥「それって、学校で笑ったことまで嘘にしてるわけじゃないんだよな」
M「どういうこと?」
遥「学校で楽しかったなら、それは本当に楽しかったんだと思う。友達と話して笑ったことも、本当なんだと思う。
でも、それと帰ってから動けなくなることは両立するんじゃない?」
M「……両立」
遥「うん。学校では楽しかった。でも疲れた。だから帰ったら動けない。どっちも本当でいいんじゃないかな」
日下部「学校で普通に過ごせることと、疲れていないことは別だ」
M「でも、授業中ずっと泣いてるとか、そういうわけじゃないです」
日下部「泣いていなければ疲れない、という基準はない」
M「……」
日下部「外では動ける。帰宅すると動けない。それだけなら、少なくとも『何もない』とは言えない」
蓮司「むしろ、おまえが見てるのは一日の半分だけなんだよ」
M「半分?」
蓮司「学校にいる自分だけ見て、『普通にできてる』って判断してる 。
でも家に帰ってからの自分は、判断材料から外してる」
M「……確かに」
蓮司「それで毎日倒れてるなら、そっちも見ろって話」
遥「あと、学校で普通にしてること自体に、結構力を使ってるのかもしれない」
M「力……」
遥「友達と話すのも、授業受けるのも、笑うのも、全部嫌ってわけじゃない。でも、ずっと人の中にいると疲れることってある」
M「あります」
遥「じゃあ、帰ってきたら何もしたくなくなるのも、そんなに変じゃないと思う」
M「でも、それを認めると……」
日下部「何が困る」
M「……自分が弱いみたいで」
蓮司「出た」
M「……」
蓮司「結局そこじゃん」
M「はい」
蓮司「『疲れた』って認めると、『自分は弱い』になる。だから『いや、学校では普通だった』って証拠を探す」
M「……」
蓮司「でもそれ、疲れてるかどうかを確認してるんじゃなくて、自分を責める理由を探してるだけじゃないか」
遥「……それ、きついな」
蓮司「きついけど、そういうことだろ」
遥「うん……。
俺も、できてることがあると、それを理由にして『じゃあ大丈夫だろ』って考えることある」
M「遥くんも?」
遥「ある。
できたから大丈夫。笑えたから大丈夫。誰かと話せたから大丈夫。学校に来られたから大丈夫。
でも、本当はそれで全部決まるわけじゃないんだよな」
日下部「『できた』と『楽だった』は別だ」
M「……」
日下部「学校に行けた。授業を受けた。笑った。友達と話した。全部事実だ。
同時に、帰宅したら動けない。それも事実だ」
日下部「どちらかを消す必要はない」
M「でも、家で何もできない自分を見ると、学校で普通にしてた自分が嘘みたいに思えてきます」
遥「それも違うと思う」
M「……」
遥「学校で普通にしてた自分も本物で、家で動けなくなってる自分も本物なんじゃないかな。
どっちかが嘘なんじゃなくて、そのくらい一日の中で違う状態になるってことなんだと思う」
蓮司「あとさ」
M「はい」
蓮司「『本当にしんどい人なら学校でもつらいはず』っていうのも、おまえが勝手に作った基準だろ」
M「……そうかもしれないです」
蓮司「学校にいる間はなんとか保って、帰った瞬間に切れる人だっている。
逆に学校ではしんどそうに見えても、家では普通にしてる人もいる。
外から分かりやすい形になってるかどうかなんて、しんどさの条件じゃない」
M「……」
蓮司「だから、『学校で笑えてるから大したことない』は、根拠として弱い」
日下部「見るなら、帰ってから何が起きているかも含めればいい」
M「何を見ればいいんですか?」
日下部「何もしたくなくなる時間がどのくらいあるか。眠れているか。食事は取れているか。翌日に影響しているか。
それから、学校に行く前はどうなのか」
M「朝は……ちょっと重いです」
日下部「なら、それも含めて考える」
M「……今まで、学校にいる間だけで判断してました」
日下部「一部分だけ切り取って、自分の状態を決める必要はない」
遥「それにさ」
M「はい」
遥「帰ってから何もしたくないって、別に『甘えてる証拠』じゃないと思う」
M「……」
遥「学校で頑張ってた分、家で止まってるだけかもしれない。
だから、家で止まってる自分まで嫌わなくてもいいんじゃないかな」
M「……それ、難しいです」
遥「うん。俺も簡単にはできない」
蓮司「でも、少なくとも『学校では普通だった』を理由に、自分の疲れを無かったことにする必要はない」
日下部「今日はそこまででいい」
M「……はい」
蓮司「明日から急に元気になる必要もないしな」
遥「帰ったあと何もできないなら、何もできない日があってもいいと思う」
M「……」
遥「学校で笑ったことも、帰ってから疲れたことも、どっちも本当だったってことにしていいんじゃないかな」
Mは少し考えてから、相談用紙の端を指で押さえた。
M「……じゃあ、学校で普通にできてるからって、自分に『大丈夫』って言い聞かせなくてもいいんですか」
日下部「それでいい」
蓮司「大丈夫かどうかは、笑えてるかだけで決めるもんじゃない」
遥「疲れてるなら、疲れてるって認めていいと思う」
M「……分かりました」
相談室を出る直前、Mは一度だけ振り返った。
M「明日も学校では普通にすると思います」
蓮司「別にそれでいいだろ」
M「でも、帰って疲れたら……」
日下部「疲れたと判断すればいい」
遥「それだけでも、前とはちょっと違うんじゃないかな」
Mは小さく頷いて、扉を閉めた。
蓮司「……普通にするって、結構便利な言葉だな」
日下部「便利すぎると、何も見えなくなる」
遥「……俺たちも気をつけないとな」
蓮司「何に?」
遥「自分ができてることだけ見て、大丈夫って決めること」
三人とも、それ以上は言わなかった。
🗝 三人からのことば
遥
学校で笑えたことも、帰ってから疲れたことも、どっちも本当でいい。
「できた自分」がいるからって、「疲れてる自分」を消さなくていい。
蓮司
「普通にできた」は、「何もつらくなかった」とは違う。
できてることを証拠にして、自分のしんどさまで否定しなくていい。
日下部
状態を見るなら、一部分だけで決めない。
学校でどうだったか、帰ってからどうなるか、翌日にどう影響しているかまで含めて考えればいい。
コメント
1件
よかった……この話、すごく刺さりました。 「学校で笑えたから平気」って、自分に言い聞かせてる声が痛いくらいわかって。 でも遥くんの「どっちも本当でいい」って言葉が、すごくやさしかった。 普段普通に出来てる人ほど、帰ってからひとりで倒れることのしんどさって誰にも言えないよね……。 「自分に『大丈夫』って言い聞かせなくていい」って、そう言ってもらえるだけでちょっと楽になる気がする。 Mさんの気持ちを無理に否定しない対応が、本当に温かかったです🤍