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次の土曜日、葉月は海沿いの創作イタリアンの店で、千尋とディナーを楽しんでいた。


今日、賢太郎と航太郎は、大井川鉄道を撮影するために、一泊で静岡へ出かけた。

SLを一度も見たことがない航太郎のために、賢太郎が連れて行ってくれた。





葉月と千尋は、シェフおすすめのコース料理とワインを注文した。






「電話で聞いたときは驚いたよぉ。いきなり再婚するって言うからさぁ」

「ごめんね、驚かせて」

「うん。でもびっくりしたけど、すごく嬉しかったよ。私は二人がそうなればいいなぁって思ってから」

「千尋……ありがとう」





千尋の言葉を聞いて、葉月は胸がいっぱいになる。





「でも航ちゃんが歓迎してくれて良かったよね。息子の応援があれば、きっと上手くいくよ」

「そうかな?」

「絶対そうだよ。だって桐生さんは航ちゃんの憧れの人なんでしょう?」

「うん」

「今日だって二人仲良く撮り鉄旅に行ってるし。最高じゃない? 桐生さんのお陰で、私たちもこうしてゆっくりディナーを楽しめるんだから」

「そうだね。啓介のときは、航太郎のお守りなんて頼めなかったから、ほんとこういう時間が持てるのは嬉しいよね」

「桐生さんは、ちゃんと子育ての大変さを理解してくれてるんじゃない? だから、結婚してもきっといい旦那さんになると思うなぁ」

「うん、私もそう思うよ」

「キャーッ! さり気なくのろけたな―っ!」

「こんなの、のろけのうちに入んないよ」

「十分のろけてますぅ! それよりもさ、あっちの方はどうだったの?」





突然、声を潜めて千尋が聞いた。





「あっちって何よ?」

「そりゃ、あっちって言ったらアレでしょ? ベッドの上よ!」





千尋がストレートに聞いてきたので、葉月は驚いた。





「随分、直球じゃない?」

「そりゃそうよ。同世代の女としては、いろいろと情報は仕入れておかないとね」

「ハァ? 何それ!」

「で? で? どうだったの?」





そこで、葉月はニヤリとして言った。





「うーん、これまでの中では、一番最高……ってとこかな?」

「キャーッ! テクニシャン? 若いのに?」

「うん。啓介とのアレはなんだったのっていうくらい……もう、ね」

「ハァ? あの自称モテモテパイロットよりも上手って……一体どこでそんな技を身に着けたのかな?」

「なんかね、学生時代に12歳年上の人と、付き合ったことがあるんだって」

「え? 一回りも上? すごいね」

「うん」

「だから、葉月が年上でも気にしなかったんだ! で、技はその女性が伝授? 一体どんな人なんだろう?」

「知らないよ、聞いてないもん」

「なんで聞かないの? 気にならないの?」

「そりゃ気になるけど、聞くタイミングがなかなかないから……」





実は、葉月はずっと気になっていた。

昔、賢太郎が交際していたという12歳上の女性が、どんな人なのか。



そこで千尋が葉月にこう言った。





「葉月が求めている『理想の恋人』は、『どんな時でもきちんと向き合い話をしてくれる人』……だったよね?」

「うん」

「だったら、ちゃんと聞いてみなよ」

「うーん……」

「葉月はさ、言いたいことがあっても我慢する癖があるから、そこをちゃんと直さないと!」

「わかってる……」

「じゃあ、聞いてごらん。桐生さんなら、きちんと答えてくれるから」

「……うん」





その時、料理が運ばれてきたので、二人は話を中断して食事を始めた。

ソテーしたホタテとアプリコットのバジルソース仕立ては、絶品だった。



美味しい料理に舌鼓を打っていると、今度は千尋がこう言った。





「私も報告があるんだ」

「え? 何? あらたまって」

「うん、実は今ね、宮本さんと付き合ってるの」

「ハァ?」





葉月は驚きのあまり、大きな声を出した。





「ち、ちょっと、いつの間に? ちゃんと話してよ!」





葉月がまくし立てると、千尋は観念したように、宮本と交際に至る経緯を話し始めた。



それを聞き終えた葉月は、まだ信じられないという顔をして呟く。





「びっくりしたぁ! まさか千尋が子持ちの男性と付き合うなんて! だって、ずっと子供は興味ないって言ってたよね?」

「そう。でも、それは出産が痛そうだからって話!」

「そうだったの?」

「うん。長い妊娠期間のあとに痛みを伴う出産……私、ちょっとの怪我でも大騒ぎするタイプだから絶対無理だと思ったの。それに、妊娠や出産で仕事のキャリアが滞るのも怖かったし。だから『産みたくない』って思いが強かったかも」

「そうなんだ。私てっきり、千尋は子供が嫌いなんだと思ってた」

「嫌いってわけじゃないよ。航太郎のことは可愛いと思ったしね。でも、もしかしたら、出産と子育てに自信がないだけだったのかもしれない」

「でも、宮本さんにはお嬢さんがいるんでしょ?」

「うん。いるよ。でも、もう大きいし。それに私、娘っていう存在には、ちょっと憧れがあるんだよね」

「憧れ?」

「うん。女同士、買い物やカフェに行ったりできるじゃん!」

「それならピッタリじゃん! もし千尋が宮本さんと結婚したら、娘ができるんだよ? まさに好都合じゃない?」





葉月は思わず微笑んだ。





「で? 娘さんとは? 会うの?」

「うん。今度の土曜日にね」

「わ、そうなんだ。心の準備は大丈夫?」

「それがさ、お嬢さん、インテリアコーディネーターに興味があるらしくて、私に会えるのを楽しみにしてるんだって」

「えーっ? それって、最高じゃん!」

「うん。私もびっくり!」

「じゃあきっとうまくいくよ。頑張れ千尋!」

「うん、頑張る」





千尋は、心から幸せそうな笑みを浮かべた。

その笑顔を見た葉月は、こう思った。





(千尋ったら、なんだか表情が優しくて穏やかになってる……。これもきっと宮本さんのお陰ね)





葉月は思わず、胸がジーンと熱くなった。




その後も二人のおしゃべりは止まらなかった。




「でさ、宮本さんに聞いたんだけど、合コンにいた舟木さん、彼にも彼女ができたんだって!」

「え? そうなの?」

「そう。なんでも、葉月の家のバーベキューで知り合ったらしいわよ」

「えぇっ? まさか、彩香ちゃん?」

「あやか……うん、たしかそんな名前だった」




葉月は驚きのあまり、思わずポカンと口を開けていた。




「葉月の友達なの?」

「ううん、うちのアパートに住んでる子」

「ああ、だから、バーベキューにいたんだ」

「そう。えー、でも、みんななんか素敵!」

「ん?」

「千尋も宮本さんも舟木さんも彩香ちゃんも……みんな幸せになって嬉しいよ」

「あ、そういう意味ね。確かに、急にあちこちでカップルが誕生したよね」

「そう。それってすごくない?」

「それはきっと、葉月のせいよ」

「え? どうして?」

「葉月の幸せオーラが、みんなに伝染したのかも」

「まさか、千尋もオーラが見えるの?」

「『も』……って。他に誰か見える人いるの?」

「うん……会社にね……」

「ふーん。あ、でも私、お化けは見えないわよ。霊感はゼロだから」

「だよね。千尋は鈍感だもん」

「ちょっとぉ、鈍感って失礼じゃない?」

「だってさ、修学旅行の時さぁ……」





女同士の話は、尽きることがなかった。



二人が笑顔で語り合う窓の外には、月明かりを浴びて煌々と輝く夜の海が広がっていた。

恋人の条件 ~恋に懲りたシングルマザーですがなぜか急にモテ期がきました~

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