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賢太郎様の一直線な愛❤️素敵です 鉄道写真家なだけあって線路みたく真っ直ぐで良いです この後の隙間デートも楽しみです😊 葉月ちゃん そろそろ賢太郎様に応えようよ❣️
もうお試しじゃない、本当の恋人同士ですね。
へプラーありかもと言った自分を消したい…笑 コレは無いわー 賢ちゃんのいいとこばかり浮き彫にしに来たのよね、へプラー
「葉月、迎えに来たよ」
「あ……」
竹之内は怪訝な表情で賢太郎を一瞥したあと、葉月に尋ねた。
「あちらは?」
葉月が答えに困っていると、賢太郎が答えた。
「葉月の恋人です」
「恋人?」
竹之内は驚いていた。
「葉月さんには、お付き合いしている方がいたの?」
「あ、はい……」
賢太郎とは『お試し交際期間中』だったが、この場を切り抜けるため、葉月ははっきりそう答えた。
しかし、竹之内は動じることなく、自信ありげに言った。
「なるほど。しかし、交際には時に別れや距離が生じることがありますよね? だから、僕にも入り込む余地があるんじゃないかなぁ?」
(うわっ! 超ナルシスト! よほど自分に自信があるのね)
竹之内の物言いに、葉月は元夫の啓介の面影を重ねていた。
思えば、啓介もいつも自信過剰で、今の竹之内と全く同じだった。
葉月がすぐに「YES」と言わなかったため、啓介は必死に葉月を手に入れようとした。
結果、葉月は押し切られて啓介と一緒になったのだ。
(流されちゃだめよ、葉月! 二度と同じ過ちは繰り返さないで!)
その時、賢太郎が竹之内にこう尋ねた。
「お聞きしますが、あなたは葉月さんとのことを、将来的にどうお考えですか?」
「もちろん、自立した大人同士、素敵なお付き合いを継続できたらと思っていますよ」
「では、もし交際がスタートしたとして、その先にあるものは?」
「その先ですか? それは、付き合ってみないとわからないなぁ。それを確かめるために、交際期間があるんでしょう?」
「無責任ですね」
「ハッ? 何が無責任なんだ? 互いをよく知った上で、先のことを考えるのが普通だろう? それのどこが無責任なんだ?」
「あなたは今までそのやり方で来たのかもしれませんが、結果的に三度失敗していますよね?」
竹之内は、ズバリ言われたので激高した。
「失礼だな、君は! 何で君にそんなことを言われなくちゃならないんだ!」
「失礼。でも、事実ですよね?」
賢太郎は余裕の笑みを浮かべて、言い返した。
竹之内はかなり不愉快そうだったが、これ以上怒るのはみっともないと考えたのだろう。
そこで、急に作り笑いを浮かべながらこう言った。
「私には財力がある。だから、交際期間中、彼女を十分満足させられるだけの力はあると思いますよ? それは彼女にとって決して損な話じゃない。まぁ、若い君にはわからないかもしれないけどね」
竹之内は勝ち誇ったように言うと、フフッと笑った。
しかしその言葉は、葉月の心に大きく引っかかった。
(つまり、金で贅沢させれば、そのあとは振ろうが捨てようが構わないってこと? ハァッ? 馬鹿じゃないの!)
葉月は思わず反吐が出そうになった。
その時、賢太郎が竹之内に問いかけた。
「彼女に子供がいることをご存知ですか?」
「もちろん知っていますよ」
「じゃあ、それについては、どうお考えですか?」
「もちろん、私は彼女のお子さんを交えて、オープンな付き合いをしてもいいと思っていますよ」
「彼女との将来が何も決まっていないのに、無責任に彼女の子供に会うつもりですか?」
「ハハッ、海外では、そういった付き合い方はごく普通ですよ! 君は随分と頭が固いんだねぇ」
煽られても、賢太郎はびくともしなかった。
それどころか、余裕の笑みを浮かべながら話を続けた。
「もちろん知っていますが、ここは日本ですよ?」
「だからなんだ?」
「あなたの仰る形式は、日本ではまだ主流じゃないってことです。それに、子供がいる女性と付き合う時は、まずは子供の心を考えてあげるのが最優先なんじゃないですか?」
「ハッ? 君のような若造に何がわかるというんだ! 君は彼女より年下なんだろう? 君こそ彼女とどういう気持ちで付き合ってるんだ?」
「もちろん、私は彼女と彼女の子供のことを、すべて引き受けるつもりですよ」
「ハァ? 引き受けるって、ど、どういう意味だ?」
「彼女と結婚すると言ってるんです」
その言葉に驚いたのは、竹之内だけではなかった。
葉月も驚いて、思わず息を飲んだ。
「そんな浮ついた言葉なら、誰だって言えるさ。若いやつは情熱だけで突き進むから、絶対に失敗するさ」
「そう思いたければご自由に。でも、私はあなたと同じような過ちは繰り返しません。結婚は一度きりと決めていますからね。だから、もう二度と葉月に近づかないでください。もしまた彼女に手を出したら、絶対に許しませんよ」
賢太郎の鋭い視線が竹之内に刺さる。その気迫に竹之内は思わず身震いした。
一方で、葉月は賢太郎の言葉に感動を覚えた。
たとえそれが竹之内を追い払うための常套句だったとしても、その言葉は葉月の心に深く響いていた。
竹之内は、急にソワソワしながら、葉月に向かってぎこちなく言った。
「あっ! 葉月さん、すみません。ち、ちょっと急用を思い出しましたので、失礼します」
竹之内は慌てて真っ赤なスポーツカーに乗り込むと、逃げるようにその場を後にした。
車が見えなくなると、葉月は思わずクスッと笑った。
「逃げ足だけは、早いのね」
「意外と小心者?」
「そうかも。それに、あんな真っ赤で派手なスポーツカーには、絶対に乗りたくないわ」
「ハハッ、俺もだよ」
「実は千尋も赤いスポーツカーに乗っているんだけど、彼女の方が全然似合ってるわ」
「千尋さん、やるなぁ……」
思わず葉月は、クスッと笑う。
賢太郎の強い口調は、いつの間にかいつもの甘いソフトな声色に戻っていた。
「あんなに力強く話すあなたを見たのは、初めてだわ」
「そう?」
「でも、助かったわ。ありがとう」
「間一髪でよかったよ。でも、なんであいつはここにいたの?」
「偶然うちの支社に来て、バッタリ会っちゃったの」
「それは嫌な偶然だな」
「うん。え? でも、桐生さんはなぜここへ?」
「看病してもらったお礼に、迎えにきた。ついでに、葉月とお茶でもして帰ろうかなと思ってさ」
「お茶?」
「航太郎が帰るまでの隙間時間に、ちょこっとデートできるだろう?」
葉月は『デート』というフレーズにドキッとした。
それと同時に、航太郎の帰る時間を気にしてくれていることにも感動していた。
「いいわね! じゃあオススメのカフェを教えてあげる」
「いいねぇ」
賢太郎は穏やかに微笑むと、車の方へ歩き始めたので、葉月はその後ろを楽しそうに着いて行った。