コメント
3件
まだ出会ってたったの3回目だけれど、 お互い 自然に 自分の素の部分をさらけだすことができましたね....✨ 色んな想いが溢れてくる すてきなシーンに ドキドキさせられました🥺💖
もう海斗さんの気持ちは自分で気づいていて敢えて確認したんですね。美月ちゃんへの言葉に裏表はなさそうだから美月ちゃんも信頼してあげて🌙
美月ちゃんへの自分の気持ちをしっかりと確認し、自分が守っていこうと星に向かって決心し誓ったんですね💖
「月はもう沈んじゃったかな。だいぶ欠けているよね」
と、海斗が言うと、美月が言った。
「今は、夕方のブルーモーメントの中に沈む三日月が見ごろかも」
「ブルーモーメントか。ロマンティックな響きだな」
海斗はそう言って笑った。
「そう言えば、君のブレスレットも三日月モチーフだよね」
「三日月、好きなんです。細くて繊細なところが」
美月はそう言うとミルクティーを一口飲む。
「地球照って光と影だよね。細くなって輝いている部分が三日月で、影になった部分が地球照」
(彼女は月で俺は地球照……彼女はしっかり者に見えるけれど、実は三日月のように繊細なんだ)
海斗は心の中でそんな事を思っていた。
「もしかして、ずっと我慢してた?」
海斗がそう聞くと、美月は少し間を置いてから答えた。
「はい」
「お父さんが亡くなってまだ間もないんだったよね。辛かったね」
「はい」
「失礼な事をあえて聞くけど、離婚はいつ頃したの?」
美月は少しの間黙っていたが、
「二年前です」
と答えた。
「そっか。立て続けに色々あったんだね」
そう言って缶コーヒーをぐいっと飲む。
「私、昔から溜め込んじゃうタイプで…」
「我慢強いんだね。でもそれってしんどいだろう?」
「はい。でもどうやっても変われなくて」
美月は悲しそうに言った。
「よし、その悪い癖は俺が治してあげるよ」
海斗が突然そんな事を言ったので美月はびっくりする。
「今後俺の前では無理はしない事! 我慢しない事! をルールにしよう。言いたいことがあったらすぐに言う事、聞きたい事
があったらすぐに聞くこと!」
海斗はそう言ってうんうんと満足気に頷いている。
「えっ、でも……」
と美月が戸惑っていると、
「簡単なことだよ。やってごらん」
「無理です……」
美月は消え入りそうな声で呟く。そしてもう一口ミルクティーを飲んだ。
海斗が買ってくれたミルクティーはなんだかとても甘く感じた。
その後海斗は色々な話をしてくれた。
海斗のスクープ記事で事務所が大パニックになった事、
テレビ局からも取材の電話が入った事、
知り合いから一斉にメッセージが届いて対応が大変だった事、
親や兄弟からも電話が来て、真実を伝えたらがっかりしていた事などを、
美月におもしろおかしく話してくれる。
美月は声をあげて笑い、先ほどまで泣いていたのが噓のように元気になった。
一時間ほど話をした後、もう遅いから帰ろうかと海斗が言った。
「通り道だから送っていくよ」
海斗がそう申し出たので、美月はそれを受け入れアパートまでの道のりを一緒に歩いた。
そして二人がアパートの前に着いた時、美月が言った。
「ここです」
薄オレンジ色のアパートを見た海斗は言った。
「かわいい建物だね。部屋は二階?」
「はい。一番手前の201です。」
海斗が201号室を見上げると、窓の明かりは消えていた。
「望遠鏡をいつも二階から降ろして持って行くの、大変だろう?」
「はい。重いのでいつも二つに分解してから運んでいます」
「望遠鏡、結構重いからね。実はうちの兄貴が子供の頃天体好きだったんだ。兄貴の望遠鏡も結構重かった記憶があるから」
「お兄様が……、そうだったんですね。部屋からは向かいの建物が邪魔して月が一瞬しか見えないので、あの公園に行って見
るようになりました」
「そっか。でも深夜は一人だと危ないよ。今度うちのベランダから撮ったら?」
海斗はなんでもない事のようにさらっと言う。
そして驚いている美月を見て慌てて言った。
「おっと、下心はないので安心して! 俺、こう見えてもジェントルマンだから」
美月はまさか有名アーティストの自宅に行くなんてとんでもないと思っていた。
それも高級マンションだ。そんな所へは恐れ多くて行ける訳ないと思っていた。
でもこの場を無難にやり過ごそうとして礼を言う。
「ありがとうございます」
そんな美月の心を見抜いたかのように海斗は言った。
「社交辞令じゃないよ。本当に今度撮りにおいで」
と言って微笑んだ。
「じゃあおやすみ」
「おやすみなさい」
海斗はニッコリ笑うと、自分のマンションの方へ歩き始めた。
美月は遠ざかって行く海斗の後ろ姿をその場で見送った。
その後マンションへ戻った海斗は、ソファーに座って目を閉じる。
さっきは、美月の泣く姿を見て思わず抱きしめてしまった。
激しく泣く彼女を見ていたら胸が締め付けられるようだった。
こんな感情は久しぶりかもしれない。いや、初めてか?
彼女は、まるで生まれたての小鳥のヒナのように弱々しかった。
きっと今までは必死にこらえていたのだろう。
だから張りつめていた糸がぷつんと切れ、堰を切ったように泣いたのだ。
(彼女には守ってあげる人が必要なんだ…)
海斗はなぜかそう思った。
そしてソファーから力強く立ち上がると窓辺へと向かう。
その時海斗は何かを決心したように夜空を見上げた。
すると夜空には一粒のキラリと輝く星があった。