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しかし次の瞬間、美琴は外からドアノブを何度も力強くガチャガチャと力強く回す。
「ひぃ!」天馬はあまりの恐怖でその場にうずくまる。
「ねぇ?天馬くん?なんで開けてくれないの?なんで?なんで?私は彼女でしょ?」
(やめてくれ・・やめてくれよ・・)
天馬の血の気の引いた真っ青な顔で、ただただ震えることしか出来なかった。
「私の事嫌いになっちゃったの?ねぇ?ちゃんとお話ししようよ!天馬くんは何か勘違いしてるだけだよ私は天馬くんを心の底から愛してるんだよ?なんでそんな私を拒絶するの?」
美琴は何度もインターフォンを連打する。
天馬は恐怖により硬直した体をやっとの思いで動かし
部屋へと戻り今の美琴に何を言っても無駄なのだと確信し、意を決してスマホを手に取り
「け、警察に電話だ!美琴さんには悪いけど、もうこうするしかない・・・
えっと、119だったかな?117だったかな?」
天馬は今、人生で一番の恐怖を味わっているせいで、とてもでないが正常な判断ができる状態では無かった。
「あ!そうだ!崇矢に電話しよう!頼む!出てくれ!お願い!お願い!」
幼い頃から苦楽を共にした親友である崇矢ならば、なにか助言をしてくれるのではないか?
という期待を胸に、崇矢に電話をかける。
「もしもし?」崇矢は2コール足らずで電話に出てくれた。
「あっ、出た!崇矢!助けてくれ!頼む!」
天馬は藁にもすがる思いで崇矢に助けを求める。
「助け?なんだよ!まさか愛しの美琴ちゃんトラブルか?」
「そんな冗談言ってる場合じゃないんだよ!」
普段激情する事が滅多いない天馬が、感情的になっている事に何かを察する崇矢。
真面目な口調で「何かあったのか?」尋ねる。
「家に帰ったらオムライスが準備されててでもおれは鍵を締めで家を出て行ったしピッキングで開けたのかな?とも思ったんだけど鍵は閉まってたしそう思ってたら美琴さんが来ていきなり私は彼女だなんて言い出すしドアノブガチャガチャするしドアをドンドンするしもうどうしたら・・・」
天馬は震える声で必死に自分のおかれた状況を説明するが
早く伝えなければという気持ちと恐怖が先行し、早口になってしまっている。
当然いきなり、早口でそんな事を言われたとしても、崇矢に通じるはずがなく
「待て!待て!早口すぎて何言ってるかわからねぇょ!
一旦落ち着け!要するになんだ!」
崇矢の言葉で我にかえり、ゆっくりと深呼吸をする天馬。
落ち着いた天馬がゆっくりと口を開く
「やっぱり美琴さんは崇矢が言ったようにやばいストーカーだったんだよ!」
「はぁ?どういう意味だ?」
天馬は、自宅に帰ると鍵を閉めて出たはずの部屋に美琴かがつくったオムライスが準備されていた事。
家の外で美琴がドアノブをガチャガチャと力強く回しながら、私を部屋に入れろと騒いでいる事。
私は天馬の彼女だと言い張っている事。全てを事細かに話した。
「やっぱり警察に通報するべきかな?」
「いや、へたに通報なんかしたりしたらさらに暴走しかねねぇよ!
どうせ警察に通報したって注意を受けるだけで、すぐ釈放されちまう!」
だったらどうすればいいんだと言う天馬に崇矢は
俺が助けに行ってやるから絶対にドアを開けるなと忠告する。
天馬はベッドの上で恐怖に震えながら、崇矢が助けに来てくれるのを待っていた。
そんな天馬を知る由もない美琴は、相も変わらずドアノブをガチャガチャと強く回し
ドアをドンドンと叩いている
(崇矢が来るまで耐えるんだ!)
「こんなもんでいいかな?」
美琴はまるで一仕事を終えたサラリーマンのような満足そうな表情を浮かべていた。
(天馬くんには申し訳ないけど、こうするしかないから)
そう心の中で呟きながら、美琴がその場を立ち去ろうとした瞬間
「柊美琴ってのはあんたか?」
崇矢が美琴を呼び止める。
「そうだけど・・あなだだれ?」
「俺は天馬の友人の鳥丸崇矢ってもんだ!」
崇矢はインターフォンを鳴らし、天馬に語りかける
「大丈夫か?天馬!」
天馬は崇矢の声を聞き安心したのか、ベッドからとび起き、玄関先へ向かう。
「崇矢?大丈夫?何もされてない?」
「あぁ!俺は大丈夫だからよ!とりあえずドア開けてくれねぇか?」
「うん、わかった」
天馬は崇矢の顔を見るやいなや、目にうっすらと涙を浮かべながら崇矢に抱きつく
。「おい!おい!どうしたんだよ!」
「怖かった・・すげぇ怖かった・・・」
「わかったから!一旦離れろ!やろう同士で抱き合ってどうすんだ!」
天馬は、崇矢から渡されたコーヒーを飲み干して一息つく。
どうやら落ち着きを取り戻したようだ。
「大丈夫か?落ち着いたか?」
「う、うん・・ありがとう崇矢」
「やっぱ俺の取り越し苦労じゃなかったじゃねぇか!」
崇矢は天馬の頭を優しくポンポンと叩きながら、優しい瞳で語りかける。
美琴は大人しく帰ってくれたのかと尋ねる天馬。
どうやら警察に通報するとおどしたらすんなり帰ったそうだ。
「あの女相当やばいぞ!ありゃ相当思い込み激しいな」
崇矢の話によると、美琴はうわ言のように
「私は天馬くんの彼女」
「彼女が彼氏の家に来て何が悪いの?」
「私はお料理の感想を聞きたいから来ただけ」
こればかりを口にしていたようだ。
「災難だったなぁ天馬・・ただ財布を落としただけなのにこんな羽目になっちまうなんて」
「う、うん・・・」
しかし崇矢はある可能性を危惧していた。
それは再び美琴が天馬の自宅にやってくる可能性があるのではないか?という事だ。
今回の一件で、美琴は天馬の免許証を確認した際に
予め住所を控えていたという事が事実と判明したからだ。
美琴がいつ来るかもわからない家で、恐怖に怯えながら生活する事は
天馬にとって耐え難い苦痛でしかないだろう。
それにあまりにもリスキーすぎる。そこで崇矢はある提案を天馬に投げかける。
「もし、天馬が嫌じゃねぇならさしばらく俺の家に来ねぇか?」
「え?崇矢の家に?」
「ああ!このままこの家で柊美琴の影に怯えて暮らすのは
天馬にとってもよくねぇだろ?それに・・・」
「それに?」
「いや、なんでもねぇよ」
「な、何だよそれ!気になるだろ!」
「んな事はいいから!どうすんだ?」
天馬は少し考えて「うー・・ん、崇矢が迷惑じゃないなら、しばらく厄介になろうかな」と答えた。
「なら決まりだな!じゃあ早速着替え準備していこうぜ!」
天馬は崇矢と共に、一駅先にある崇矢の自宅に向かっていた。
しかし天馬は先ほどの恐怖心が残っているのだろうか?しきりに周囲をキョロキョロしていた。
「落ち着きねぇな。ちょっと怪しいぞ?」
「変な言い方するなよ!美琴さんが居ないか確認してるんだよ!
すげぇ怖かったんだから」
「仕方ねぇな!ほら!」崇矢は天馬の手を握り、天馬の体を自らに抱き寄せる。
「ちょ、なんだよ崇矢!」
「これなら安心だろ?お前は一人じゃねぇんだから安心しろ」
「崇矢・・」天馬は頬を桜色に染めていた。
そんな二人を尾行している人影があった。柊美琴だ。
「天馬くんにあんな男友達が居たなんて誤算だった。
何?あの鳥丸とかいうヤツ!私の邪魔はさせないから!」