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#幼なじみ
コメント
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新連載嬉しいです🥰 優人先生はまだ亡くなった美奈子さんを引きづって手術も見に入らないとは😢 これからどう出会いがあるのか楽しみです(*´꒳`*)
始まりましたね〜 また毎日が楽しみです🤗 よろしくお願いします☺️
優人さん 幸せの絶頂で奥様を亡くすなんて😢それも執刀したのに助けられなかったなんて😢辛すぎですね😢そんな傷心の優人さんに寄り添える方と出会えてまた自信を取り戻せると良いですね でもその相手が由希?ちょっと違う気がします🤔
――千葉県の海辺にある、とある総合病院。
「優人、よく決心してくれたな。待ってたぞ」
「野中先輩、お誘いありがとうございました。本日から、よろしくお願いします」
「うん。お前みたいな腕のいい脳外科医が、こんな辺鄙な場所に来てくれるなんて、本当に助かるよ」
「いえ……今の僕は、メスもまともに握れない、ただの無能な外科医ですから……」
「優人! そんなこと言うな。大学病院であれだけ腕を振るってたお前だ、必ず戻れる!」
「戻れる保証なんて、どこにもありません」
「まあ、焦るな。ここは自然が豊かで海も近いし、いい場所だろう? だから、きっとお前の心も少しずつ癒えるはずだ」
「……だといいんですが」
ここは、千葉県・南房総の海辺に佇む湊総合病院。
潮の香りがかすかに漂う静かな朝、白衣をまとった一人の医師が院長室にいた。
彼の名は尾崎優人・三十七歳。
優人はかつて東京の大学病院で名を馳せた脳神経外科医だったが、今の彼はその輝きを自ら否定するように、どこか影を落としている。
その理由は、三年前に最愛の妻・美奈子を亡くしたことにあった。
美奈子は、享年二十七歳。
優人より七歳年下で、明るく朗らかで、誰に対しても優しい女性だった。
彼女は優人が師と仰ぐ教授の娘で、二人は見合いの席で初めて出会った。
その瞬間、優人は美奈子に強く惹かれ、一年後には結婚へと至った。
しかし、幸せな日々は長くは続かなかった。
結婚して間もなく、美奈子はくも膜下出血で倒れてしまう。
早急に美奈子の父である教授が執刀し、優人も助手として手術室に入ったがーー
発見が遅く、すでに手の施しようがない状態だった。
国内でも有数の名医である教授をもってしても、娘を救うことはできなかった。
その無念は計り知れない。
最愛の妻を失った優人にとっても、それは到底受け入れられる現実ではなかった。
その日を境に、優人は大きな手術が怖くなった。
どんな難しい手術でも引き受け、成功させてきた自信は跡形もなく消え失せ、外科医としての自分を信じられなくなってしまった。
美奈子の死以降、優人はまるで抜け殻のようになってしまった。
かつて頼りにしていた同僚たちも、今では彼にそっと気遣いの視線を向けるようになり、その優しさですら彼を苦しめていた。
「このままでは、本当に駄目になる」
そう思い始めたころ、医学部時代の先輩であり、現在は実家の湊総合病院を継いで院長を務める野中啓介が、優人に声をかけてきた。
その誘いは、沈み続ける優人に差し込む、わずかな光のようだった。
優人はその光にすがるよう、この海辺の病院へと移ってきたのだった。
野中とともに院長室を出た優人は、これから働く外科病棟へと向かった。
そして朝礼の時間、職員たちの前で皆に紹介される。
「今日からここで外科医として勤務することになった尾崎優人くんです。私の大学の二期後輩で、かなり優秀な脳外科医なので、即戦力としてかなり期待できます。みんな、よろしくね! じゃあ、優人!」
「本日よりこちらで勤務させていただきます、尾崎優人です。よろしくお願いします」
優人が頭を下げると、同僚たちから大きな拍手が湧き起こった。
その音に紛れて、看護師たちの弾んだ声が飛び交う。
「うわっ、超イケメン!」
「独身かな~? 大学病院から来たエリートでしょう? だったら、結婚してるわよねぇ」
「あんな超絶イケメンに毎日会えるとか、最高じゃない?」
長身で端正な顔立ちの優人に、看護師たちだけでなく、通りかかった事務職員まで思わず足を止め見とれている。
女性からの熱い視線には普段から慣れている優人だったが、さすがにため息をつくほどだ。
もちろん、亡き妻を心の底から愛していた優人にとって、他の女性など視界に入らない。
妻を失ったあと、まだ若い優人は大学病院の他の教授たちから何度も縁談の話を持ち掛けられたが、正直うんざりしていた。
そういったことからも逃げたかった優人は、この田舎の病院に来ることを選んだのかもしれない。
しかし、ここで静かに過ごせると思っていたのは誤りだったようだ。
熱い視線を浴びながら、優人は軽く会釈をしてその場を離れ、野中とともに医局へ向かった。
その後ろ姿を、ひときわ熱いまなざしで見つめている女性がいた。
平子由希・二十七歳。
由希はこの病院一の美人看護師と評され、華やかな容姿と抜群のスタイルで男性医師や患者から絶大な人気を誇る存在だ。
由希はうっすらと笑みを浮かべながら、優人の後ろ姿をじっと見つめていた。
(やっと来たわ……、私にふさわしい、白馬に乗った王子様が!)
彼女は心の中でそう呟きながら、遠ざかっていく優人の背中を名残惜しそうに見つめ続けた。