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※これ、暗い?バージョンだった……。25話から、てことで……。
焚き火がぱちぱちと静かに燃えている。昼の暑さが嘘みたいに引いて、山の空気はひんやりしていた。
蓮司(缶コーヒーを片手に)
「お前ら、火見てるとなんか語りたくなるタイプ?」
遥(火をじっと見ながら)
「……別に」
日下部(マシュマロを焼いてる)
「語る、ってほどでもないけど……静かなのはいいな」
蓮司「ほらな、こういう時“語らないやつほど何か抱えてる”って言うじゃん」
遥「おまえは何も抱えてないってことか?」
蓮司(笑いながら)
「俺はまあ、抱えてるっていうより、全部見えてるつもりってだけ。火も人間も、燃える前から煙臭い」
日下部「たまには、見えなくていいと思うけどな」
蓮司「お。意外と詩人?」
日下部「……別に」
缶詰のスープが煮え始める音。虫の声。誰も喋らない時間が少し流れる。
遥(ぼそりと)
「キャンプって、もうちょい……楽しそうなもんだと思ってた」
蓮司「それ、お前が言う?」
日下部(そっとスープをよそう)
「次は……もっと高い山に行こうか」
遥「え、また行くのかよ」
日下部「……嫌か?」
遥(スープを受け取りながら)
「……別に」
蓮司はスープを口にしながら、2人を横目で見ている。
蓮司「おまえらさ、焚き火の火って、人の記憶とか心とか、燃やしてくれるとか思う?」
遥「思わない」
日下部「少しは……軽くなるかもな」
夜が深くなる。
3人の間にあるものは、距離か、静けさか、それとも微かな温度か。
火だけが、何も言わずに燃えていた。