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#コメディ時々暗闇
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NGS_ヘビーなしっぽ
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#妖怪
百はな🍑
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白昼の空中を真っ逆さまに落下しながら、僕は上空を見上げた。四角い形状を保ったまま、コンクリートの巨躯を強引に軋ませて、巨大なビルが生き物のようにうねりながら僕を押し潰そうと追ってくる。
「……エグいかも」
まともに食らえば肉体が消し飛ぶ質量暴力。だけど、足場のない空中だからって、僕がそのまま重力にハめ殺されると思うなよ。――影を展開。
僕は落下する速度の中で、限界まで視線を真下へと向けた。遥か下方に広がる、アスファルトの『地面』。そこへ、数秒後の未来の影をあらかじめ設置する。そして、自身の肉体を同期。
――ドンッ!!
空間を跳び越える無音の瞬間移動。高層ビルの最上階から地表までの距離を一瞬で縮め、僕はアスファルトの地面へと無傷で着地していた。直後、頭上から凄まじい風圧が押し寄せる。
しかし、僕を追ってのたうち回っていたビルの不気味な動きは、地上に届く直前で急激に弱まり、何事もなかったかのように元の大人しい高層ビルへと戻っていった。
「……ふぅ。ギリギリかわせた」
冷や汗を拭い、正面に視線を戻す。砂煙の向こう側、いつの間にか地上へと先回りしていたガイアが不敵に笑って立っていた。
「すごいね、ガイア。本当に死ぬかと思ったよ」
「ええ。一撃でやれるとは最初から思っていなかったしな」
「ねえ、一つ教えてよ。なぜあのビルは、僕に噛みつくのを辞めて元に戻ったの?」
僕が淡々と問い詰めると、ガイアは隠す様子もなく冷徹に答えた。
「制限時間が来たからだ」
制限時間、か……。出し惜しみせず、自らの手の内を平然と提示してくる女王の余裕。僕がその不自由な檻から勝率を逆算しようとした、その刹那。
ガイアは冷徹な瞳で僕を見据え、手のひらの傷から溢れる血を、僕の足元のアスファルトと、すぐ横に植えられている街路樹の木へと同時に振り払った。
「次、行くぞ」
「え?」
次の瞬間、僕が立っていたはずのアスファルトの地面が、生き物のようにドロドロとうねり始めた。
「嘘だー」
噛まれたら一撃で終わる。僕は考えるより早く、『過去の影』を選択した。空中へ目を向ける。さっきガイアのビルから真っ逆さまに飛び降りた、あの瞬間の空中に残っている過去の影だ。自身の肉体を、その過去の座標へと同期させる。
――ドンッ!!
空間を跳び越える無音の瞬間移動。地表から突き上げてきたアスファルトのワニを、僕は空中へと退避することでギリギリで回避してみせた。足場のない空中。だけど、下を見下ろせばワニの動きはすでに止まっている。……避けれた。
そう思った瞬間、僕の視界を、白昼の光を浴びてギラギラと輝く『緑色の濁流』が埋め尽くした。
「――なっ!?」
横に植えられていた街路樹の木。その枝に生い茂っていた何千、何万枚もの葉っぱが、猛烈な突風に乗って、空中へ逃げた僕の身体を目がけて弾丸のように一斉に襲いかかってきたのだ。
空中という逃げ場のない空間。これは、すべてを避けることはできない……。僕は即座に、覚醒者の絶対的な弱点である『脳(頭部)』だけを両腕で死守する最低限の防御姿勢を取った。
――ザザザザザザザァッッ!!!
「痛っ、た……あ、ぐっ……!」
全身の肉体に、硬質化した木の葉の弾丸が容赦なく突き刺さる。肉が裂ける激痛と衝撃に視界が歪み、僕は防戦一方のまま、重力に従って地面へと激しく叩きつけられた。アスファルトに砂煙が舞い上がる。
「まだ死んでいないか……。だが分かっただろう? 私に勝てない事が」
砂煙の向こうから、傷一つないガイアが冷徹に見下ろしてくる。圧倒的な格の違い。だけど、地面に倒れ伏したまま、僕は血を吐き捨てて不敵に笑い返した。
「いや……攻略して見せるよ、ガイア」
僕はただ無様に叩きつけられていたわけじゃない。地面に激突する不自由な瞬間の隙を突いて、僕は自分の『影』をガイアの真後ろの空間へと密かに飛ばしていたんだ。
寝た体勢のまま、自身の肉体をその影へと同期させる。
――ドンッ!!
無音の瞬間移動。ガイアの死角である真後ろへと一瞬で回り込んだ僕は、寝そべった姿勢のまま、奴の軸足をへし折るべく強力な足払いを繰り出した。不意を突いた完璧なカウンター。決まった。そう確信した瞬間
「甘いな、レイ」
ガイアはそれすらも最初から分かっていたかのように、事前に自らの血を付着させていた足元の『石ころ』を強く踏みつけた。その瞬間、ただの小石が推進力を持ったロケットのように凄まじい速度で真上へと飛び上がったのだ。
ガイアはその石の勢いに掴まれるようにして、僕の足払いを軽々と飛び越え、空中へと自らの身体を浮かせて一気に距離を取った。
(……避けられた。でも、おかしいな。なんでわざわざ僕から距離を取る必要があるんだ?)
着地を決め、僕はすぐに頭脳の計算回路を高速で回転させた。さっきの状況、寝そべった体勢のまま足払いを仕掛けた僕に対してなら、圧倒的な能力を持つガイアならそのまま攻撃を防ぎ、逆に上から強烈なカウンターを叩き込んで僕を潰すこともできたはずだ。
それなのに、奴はわざわざ石をロケットに変えてまで、僕から離れる道を選んだ。
(……まさか、近距離での肉弾戦が苦手なのかな。環境を書き換える能力は強力だけど、自分の肉体そのものを強化しているわけじゃない。懐に潜り込まれるのが、王の最大の不自由というわけだね)
だったら、その弱点を徹底的に突かせてもらうよ。空中へ逃げて距離を取ろうとするガイアを、そのまま見送ってあげるほど僕は優しくない。
――影を二つ、同時に展開。僕は今ある手札の中から、『過去の影』と『未来の影』を僕の目の前の同じ空間へと同時に投射した。異なる時間の座標を持つ二つの影を、無理やりその一点で重ね合わせ、同期させる。
――ズ、ズズズッ……!!!時間の歪みによって空間が極限まで圧縮され、僕の目の前に、光すらも吸い込む『漆黒の極小ブラックホール』が出現した。
突如として地上に発生した凄まじい引力の渦に、空中へと逃げていたガイアの強靭な身体が強硬に引っ張られ、軌道を狂わされて僕の元へと引き戻され始める。これで、ガイアを無理やり近距離に連れてくる……! 近接戦闘が苦手な君の不自由な檻が、ここさ。王としての余裕を崩されたガイアは、引力に抗いながら、不快そうに顔を歪めた。
「はぁ……。本当に、面倒だな、」
しかし、男は引きずり込まれながらも、驚くほど冷静に自らの手のひらの傷口を強く握りしめた。溢れ出た鮮血を、そのまま引力の中心である漆黒の球体へと容赦なく振りかける。
その瞬間、僕のブラックホールが、嘘のようにその場にピタリと静止した。引力も、大気の歪みも、空間の圧縮もすべてが消滅し、それはまるでアスファルトの上にただ転がっている『ただの石ころ』のように、何一つ機能しない無機質な塊へと上書きされてしまったのだ。
ガイアは空中から地表へと軽着地すると、残った血を再び周囲の街路樹の木へと叩きつけた。一度は避けたはずの緑の葉が、再び硬質な鉄片へと変貌し、容赦ない突風と共に僕の五体を狙って牙を剥く。
「それを使う時、貴様は『過去』と『未来』の影を同時に使用している。つまり、その技を維持している間、貴様は逃げるための影を他の場所へ一切出せないんだろう?」
「すごいね。流石、王様」
「能力の弱点を晒したのはお前の方だ。――少しは考えて使え」
コメント
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うわあ、めちゃくちゃハラハラしました……! 第37話、もう本当に息つく暇がなくて、読んでるこっちまで必死になっちゃいました。 特に好きだったのは、レイくんが空中落下中に未来の影を地面に設置して瞬間移動するところ。アイデア勝負な感じがかっこよくて、思わず「やった!」って声が出ました。でもガイアの「制限時間」「近接戦が苦手」というヒラリとかわす余裕もすごくて、王様らしい格の違いを感じます。お互いの能力の読み合いが本当に緻密で、次の一手が気になって仕方ない終わり方でした。ぽたおさん、今回は特にテンポが良くて引き込まれました!