涼しくなった夜風が通り過ぎていった。押し付けられた胸板は、思っていたよりも硬くて、柔軟剤の爽やかな香りが鼻を 掠(かす)めた。
知るはずのなかった熱い体温、ドクドクと脈打つ心音。
遠くで鳴った車のクラクションの音で、やっと我に帰る。
私、雨宮くんに抱きしめられているんだ。
「雨宮くん、ダメッ……なんでっ」
「……なんでって、分かんないの?」
「私彼氏が……」
どんなに突き放そうとしても、雨宮くんの腕の力は緩まない。
「彼氏って、小田を泣かす彼氏だろ」
「……それはっ」
「ずっと考えてた。穏やかに見守ってやりたいって確かにそう思ってたんだ。……だけど、もう物分かりがいいフリなんてできない」
肩に雨宮くんの額が乗る。浅い呼吸で、雨宮くんが緊張しているのが伝わってくる。
「俺だって、こうやって小田を抱き締めたかった……!」
この言葉が持つ意味を私は知っている。
だ********
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