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次の日奈緒が出社すると、省吾は既に外出していた。

昨日あんな事があったので、奈緒は省吾がいなくて少しホッとする。

今日から省吾はまた過密スケジュールが続くので、顔を合わせるのも少ないだろう。



奈緒は誰もいないCEO室へ行き机の上に置いてある書類を手にすると、秘書室へ持ち帰る。

そして早速省吾の指示通りに書類の整理を始める。

奈緒は作業しながらチラリと時計を見てさおりに言った。



「恵子さんが遅刻って珍しいですね」

「うん。具合が悪いなら無理しないで休みなさいって言ったんだけど、病気じゃないから来るって。どうしたんだろうね?」



さおりが心配そうに言ったので奈緒は頷く。

今まで恵子は遅刻などした事がないので心配になる。


そして恵子がいない静かな秘書室で、奈緒は仕事を続けた。




その頃、技術統括本部の無人AI重機プロジェクトチームではトラブルが発生していた。



「課長、三上さんはどうしたんですか?」

「三上は今日休暇を取るって言ってたぞ?」

「ええっ? こんな大事な日に休み!?」



三上と同じチームの香川(かがわ)が声を張り上げる。



「何か問題でもあるのか?」

「今日だったんですよ! 三上の案件の追加の実証実験が! 今日は無人重機の修正プログラムを入れて微調整する予定だったんですっ! 朝来ないから直接現場へ行ったのかと思っていましたが、三上が来ないって今、大豊建設から電話があって……先方はもうスタンバイしているそうです」

「なにぃー!? 実証実験は来週じゃなかったのか? 三上は今日の事は何も言ってなかったぞ?」

「日程を一週間間違えていたみたいですね。ったく、どうしたらいいんだ……」

「なんて事だ! 大至急三上に連絡しろっ!」

「それがさっきから何度もかけてるんですけど、繋がらないんです」

「ハァッ? どうなってるんだ? と、とにかく代わりの者を至急派遣しろっ」

「無理です。三上が作ったITC建機の修正プログラムを把握している人間は他にはいませんから」

「ハァー? なんでだ? その案件はチームでやってたんだろう?」

「後から組み込む修正プログラムについては、三上しか知りません。誰にも共有されていないんです。あれは三上さんが単独で進めていましたから」

「なぜそんな事になってる? チームでやる場合、情報は共有するのが決まりだろう?」

「もちろんそうなんですが、三上さんに何度聞いても誰も教えてもらえなくて……」

「ハァーッ? なんて事だ!!!」



技術統括本部の課長の本田(ほんだ)は、信じられないといった顔で叫ぶ。



「と、とにかく誰か代わりの者を派遣しろ! じゃないとえらい事になっちまうぞ。大豊建設さんは今日の為に業務を全て停止してスタンバイしてくれているんだ。それに今日修正をかけないと納期までに間に合わない……」



そこで本田は声を張り上げる。



「誰か大豊建設に行ける者はいないか?」

「課長、無理ですよー! 俺達、改良プログラムの件は一切知らされていないんですから。だからもし行ったとしても何も出来ません」

「それに大豊建設技術部の担当者は結構うるさい人で有名ですから、もし開発者本人がいなくて何も出来ないとわかったら相当お怒りになるかと……」

「なぜ三上さんはこんな大事な時に急に休んだんだろう?」

「ホントです。休むなんて昨日は一言も言ってなかったのに……変ですよね?」



次々と口にしたメンバーは、突然ハッとした表情になる。そして顔を見合わせた。



「どうした?」

「いや、まさかとは思いますが……課長、もしかしたら三上さんはわざと姿をくらましたとか?」

「ハッ? どういう意味だ?」

「実は江本(えもと)が以前見たって言ってたんです」

「江本が? 何を見たんだ?」

「先週の土曜日、江本は友人の結婚式で新宿のホテルに行ったそうなんですが、その時三上がホテルの喫茶室で、サイバーソフトリンクの社長と会っていたのを見たって言ってました」



それを聞いた本田は愕然とする。


株式会社サイバーソフトリンクという会社は、最近勢いを増している外資系のIT企業だ。

このままのスピードで成長していけば、いずれ CyberSpaceの ライバル会社になる事は間違いなかった。

その会社の社長と三上が会っていたというのだ。



「引き抜きか?」

「あり得ますね。三上さん、最近やたらコソコソと電話をしていたから」



チームメンバーの一人が言う。そこでざわめきが広がった。



その時、遅出で出勤して来た井上がフロアへ入って来た。

井上はフロア内のただならぬ雰囲気を感じ取り、怪訝な顔をしながら耳につけていたイヤホンを外す。

そしてデスクの前に座ると、隣の席の同僚に聞いた。



「何かあったんすか?」



同僚は今までの経緯を井上に説明した。

その時、課長の本田がもう一度声を張り上げた。



「とりあえず誰か大豊建設へ行ってくれないか? 修正プログラムの件は延期してもらうよう私からも頼んでみるから、頼む! 誰か私と一緒に行ってくれないか?」



しかし返事はなく、フロア内はシーンと静まり返っている。

その時誰かの声がした。



「俺でよければ行きますよ」



皆が一斉に声の方を見た。その声は井上だった。



「え? 井上君大丈夫なのか? 君はこのプロジェクトには途中からの参加だったろう?」

「大丈夫っすよ。途中からでしたが今はもう全部把握してますし。それに俺、既存のプログラムを見て色々と脆い部分を見つけちゃったんで、実はこっそり改良プログラムを作成していたんです。だから今日修正もかけられますよ。まあ俺のプログラムでいいって許可が出ればの話ですが」



井上の言葉にフロア内が騒めく。



「井上君、その修正プログラムは完璧なのか?」

「はい。自分的にはかなり自信があるので問題ないと思います」

「そうか! よしっ、じゃあ君を信じて任せたぞ! 行ってこいっ!」

「了解っす」

「あっ、香川、お前も一緒について行ってやれ」

「わかりました」



そして二人はバッグにパソコンと必要な資料を詰め込むと、大豊建設へ向かった。

銀色の雪が舞い落ちる浜辺で

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コメント

18

ユーザー

三上 確信犯だけど.... こんな社会人として失格な人、会社には不要‼️ 情報漏洩で訴えられてハイ、サヨウナラ~~😁✋✋ 期待のヒーロー井上君😎👍️、頑張って~~✊‼️❤️

ユーザー

さすが井上、三上より井上。「三」より「井」の方が、一画多い。それがどやねん。 それより、恵子ちゃんはどないしてん。三択の女王。あ、ありゃ「景子」か。

ユーザー

三上は社会人として終わってる💢 こんな人会社に不要だから、使えなくなったケーブルでぐるぐる巻きにしてサイバーソフトリンク社に送りつけたれ🤬 飄々と登場の救世主✨️井上くん♥ かっけぇ〜😍

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