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#ドロドロ
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コメント
1件
みぅです!読んだよ〜🤍 いやもう、今回の46話、めっちゃ重いし情報量すごかった…。三田村さん、やっぱりただの知り合いじゃなかったんだね。子どもの頃からずっと澪のそばにいて、運動会にも学芸会にも誕生日にもいて、しかも生まれた夜からいるって…。それでいて「父親じゃない」って言い切る雅彦。 あと、母が死ぬ前に死亡届を出してるって時系列おかしくない?しかも葬儀でずっと澪を見てたってラスト、ゾッとした。見送りじゃなくて「私を見に来てた」って解釈、核心だと思う。 三田村彰って一体誰なんだろう。ミツさんって呼ばれてて、本名が別にあるって伏線も気になる。続きが待ちきれない…!
――大きくなったね。
母の葬儀の日。
三田村彰は、
確かに私へそう言った。
知らない男から言われたと思っていた。
でも違う。
私は、
この男を知っている。
「思い出したんですか」
真壁刑事が訊いた。
「少しだけ」
私は葬儀の写真を拡大した。
眼鏡。
細い顔。
白髪。
十五年前の写真より、
当然老けている。
それでも、
目元は同じだった。
「子どもの頃、会ってる」
「いつです?」
「分からない」
記憶の奥。
母の家。
ダイニングテーブル。
男が座っている。
母がコーヒーを出す。
父はいない。
私はランドセルを床に置いて、
男へ言う。
――また来たの?
男が笑う。
――来ちゃ駄目か?
私は首を振る。
――おじさん、お菓子持ってくるからいい。
「おじさん……」
口に出した瞬間、
もう一つ思い出した。
「私、この人を三田村さんって呼んでない」
「何と?」
「……ミツさん」
佐伯課長が顔を上げた。
「ミツ?」
「たぶん」
三田村彰。
名前に「ミツ」はない。
「本名が別にある?」
真壁が言う。
母のメモ。
三田村さんだけは、本当の名前を知っている。
その意味が、
また変わる。
三田村が誰かの本名を知っているのではなく、
三田村彰そのものが偽名なのかもしれない。
「何歳くらいまで会っていました?」
私は記憶を探る。
小学校。
何度も家へ来た。
誕生日にも。
一度だけ、
運動会にもいた。
「父さん」
私は振り返る。
「三田村さん、私の運動会に来たことある?」
父の顔が固まった。
「ある」
やっぱり。
「何で?」
「千佳が呼んだ」
「母の友達だから?」
「……そうだ」
「嘘」
父は黙る。
「普通、母の友達が娘の運動会に毎年来る?」
「毎年じゃない」
「何回?」
「三回くらいだ」
十分多い。
「写真ありますか」
母の家。
押し入れから、
昔のアルバムを出す。
小学校一年。
運動会。
母。
父。
私。
少し離れた場所に、
三田村がいる。
小学校三年。
学芸会。
客席に、
三田村。
小学五年。
誕生日。
母の家。
ケーキを囲む私たち三人。
その後ろに、
三田村。
「家族みたい……」
私は呟いた。
父は何も言わなかった。
「父さん、この人のこと嫌いだった?」
「……ああ」
「どうして」
「千佳と近すぎた」
「浮気?」
「違う」
即答。
「じゃあ何」
父が写真を見る。
「俺より澪のことを知ってた」
意味が分からない。
「どういうこと?」
「お前が熱を出したとき」
父が言う。
「俺より先に病院へ来てた」
「母が呼んだ?」
「たぶんな」
「入学式は?」
「いた」
「七五三」
「いた」
「私が生まれたときは?」
父が黙った。
それが、
一番聞きたかった。
「いたの?」
長い沈黙。
「ああ」
胸が強く打った。
「岸本総合病院に?」
「いた」
「二十九年前から?」
「ああ」
三田村彰。
偽名を使う男。
母の死亡届を提出した男。
そして、
私が生まれた夜から、
ずっと私の近くにいた男。
「父親みたいな顔をしないで」
母は三田村への手紙に、
そう書いていた。
「本当に私の父親なの?」
私は訊いた。
雅彦は首を振った。
「違う」
「どうして言い切れるの」
「俺は知ってるからだ」
「何を」
「三田村は」
父が言いかけて、
止まった。
「三田村は何?」
「……お前の父親じゃない」
「なら誰なの!」
父は口を閉じる。
その瞬間、
記憶がまた戻った。
十四歳。
母が血のついた服で帰ってきた夜。
父が皿を割った。
私は階段に立っていた。
玄関。
母の後ろに、
もう一人いた。
男。
――千佳、もう無理だ。
――帰って。
――澪ちゃんに話す。
――帰って!
三田村だ。
私は頭を押さえた。
「いた……」
「澪?」
「十五年前の夜」
父の表情が変わる。
「母が血まみれで帰ってきたとき」
「……」
「三田村さんもいた」
誰も答えない。
「父さんも知ってたよね」
「ああ」
「何があったの」
父は写真を閉じた。
「その夜、三田村は千佳を病院から連れて帰ってきた」
「母が心停止した日?」
「ああ」
「どうして三田村さんが?」
「迎えに行ったからだ」
「誰に頼まれて」
「千佳に」
母と三田村は、
ずっと繋がっていた。
「その夜、三田村さんは私に何を話そうとしたの?」
父は答えない。
でも、
私は少し思い出していた。
男が階段の下から、
私を見る。
母が止める。
そして男は言った。
――澪ちゃんには、自分が誰の子か知る権利がある。
私は息を止めた。
「この人」
私は写真を指した。
「十五年前から、私の出生を知ってた」
父が頷く。
「二十九年前からだ」
「どうして?」
「その夜にいたから」
「病院に?」
「ああ」
「医師でもない。家族でもないのに?」
父の顔が歪んだ。
「家族だったんだ」
「誰の?」
父は答えなかった。
そのとき、
真壁のスマートフォンが鳴った。
「はい」
短いやり取り。
「分かりました」
電話を切る。
「三田村彰について、顔認証で過去の映像を洗っていました」
「見つかった?」
「はい」
「どこで」
真壁が画面を見せる。
母の葬儀。
通夜。
告別式。
火葬場。
そこまでは知っている。
でも、
その前。
母が死亡する前日の映像。
岸本総合病院。
午後四時十三分。
三田村が入っていく。
「母に会った?」
「可能性があります」
さらに。
母が死んだ当日。
午後九時五十六分。
母の家近く。
三田村。
午後十一時二十九分。
家から出る。
午後十一時四十分。
市役所で死亡届を提出。
そして。
翌朝。
午前六時二十分。
再び、
母の家。
「何しに戻ったの?」
真壁が次の映像を出す。
男の手には、
紙袋。
そのまま家へ入る。
出てきたのは、
二十分後。
何も持っていない。
「母の遺品を置いた?」
私は呟いた。
死亡通知。
七枚。
母の手紙。
もし。
「最初から母の家にあったんじゃない?」
全員が黙った。
私は母の遺品を整理して、
死亡通知を見つけた。
だから、
母が残したものだと思った。
でも三田村は、
母が死んだあと、
葬儀より前に、
母の家へ入っている。
「三田村さんが七枚を置いた?」
真壁が言う。
「可能性があります」
「じゃあ」
死亡通知を送ったのは、
母ではない。
その証拠が、
ここにあるのかもしれない。
三田村彰。
私が子どもの頃から知っている男。
母が死ぬ前に会い、
まだ生きている母の死亡届を出し、
死後には母の家へ戻り、
そして。
母の葬儀に、
最初から最後までいた。
私は葬儀写真をもう一度見る。
通夜。
三田村は、
祭壇ではなく、
私を見ている。
告別式。
やはり、
私を見ている。
出棺。
火葬場。
全部。
「この人」
私は呟いた。
「母を見送りに来たんじゃない」
真壁が私を見る。
「じゃあ何を?」
答えは、
写真の中にあった。
三田村は、
どの写真でも、
母の遺影ではなく、
私のすぐ近くにいる。
「私を見に来てたんだ」