テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

鎌倉へ戻る車中で二人は手を握りながら楽しい会話を繰り広げる。

我慢出来ずに車でしてしまった事を俊は思春期の高校生のようだと言うと雪子が反論した。


「私の高校時代は真面目だったからそういう事とは無縁だったわ」

「え? そうなの?」

「当たり前じゃない。あの時代はそんなに早熟じゃなかったわ。もしかして俊さんは違うの?」


雪子が逆に問い返すと俊は笑ってごまかそうとする。それに対し雪子はずるいと言って俊の腕を軽く叩いた。

それから俊がしみじみと言った。


「俺を思春期の高校生に戻したのは雪子なんだよ」

「そんな事ないわ」

「いや、酔うと色っぽくなる雪子のせいだ」

「違いますー」

「ハハッ、しかしこの歳になってまさかあんなに燃えるとは思わなかったよ。参ったな」


俊はそう言ってフッと微笑んだ。


鎌倉の俊の家へ戻ると二人はもう一度だけベッドで愛し合った。

帰りの車中では平静を装っていたが実はまだ互いを求め合っていた。二人はもつれるようにベッドへ倒れ込むと俊は丁寧に雪子を愛した。


その後少し仮眠を取った後今度は一緒に風呂へ入る。雪子は後ろから俊に抱え込まれるようにして湯船に身体を沈めた。


ゆっくりと湯に浸かりながら二人は未来について語り合った。

それはカフェの事、そして俊の仕事の事から始まりこれからどんな事にチャレンジしたいか、どんな場所へ行ってみたいか、更にはどんな老後を迎えたいか等話はどんどん広がっていく。


入浴を終えた二人は雪子が持って来たケーキをデザートに食べた。ケーキは想像通りとても美味しく俊からも合格をもらった。雪子はケーキを仕入れる店が決まったので心からホッとしていた。


その後二人は一緒にベッドに入った。眠りにつくまでまた少しお喋りをする。

ベッドで愛し合う事も素敵だがこうやって身体を寄せ合い他愛もない話をするのも楽しい。

そして俊の落ち着いた低い声を聞いているうちに雪子はとうとし始めた。

雪子は俊の爽やかな香りを感じながら深い眠りに落ちていく。


薄れゆく意識の中で雪子はぼんやりと自分の店を頭の中に思い描いていた。そのイメージの中には常に笑顔の俊がいた。俊はいつも雪子に寄り添っていた。


いつの間にか雪子はすやすやと寝息を立てている。その寝顔はとても穏やかだった。

俊はベッドサイドの明かりを消すと雪子のおでこへそっとキスをしてから穏やかな眠りへ落ちていった。



それから雪子のカフェオープンに向けての動きが一気に動き出した。

俊の家をリフォームした良の工務店による改築工事が始まった。

それまでの間雪子と俊と良は三人で何度も綿密な打ち合わせを重ねていた。そして漸く店舗の設計図が出来上がり工事を迎えた。


父の書斎の解体工事が始まると雪子はほんの少し胸が痛んだがそれも一瞬だった。今は夢の実現に向けて期待が膨らむ。


改築工事を良に任せながら俊と雪子も行動を始めた。

俊の知り合いがやっている中古の厨房機器の店へ出向きカフェに必要な物を購入する。

ラッキーな事にたまたま新品に近いものが入庫していたのでそれを格安で手に入れた。


それ以外にも大型展示場で開催していた『Cafe Show』にも顔を出した。そしてカフェ経営に関する様々な情報を入手する。


家の改築工事がだいぶ進んだ頃カフェ店内の壁の漆喰塗りに雪子は挑戦した。

一人だと大変なので俊は修と優子、そして滝田と萌香にも声をかけ助っ人として来てもらう。

作業の途中6人は頬や鼻に漆喰をつけながら作業をした。そして互いの顔を見ながら声を出して笑い合う。


5人の応援のお陰で店内の壁は全てライトベージュの素敵な漆喰壁に仕上がった。

漆喰が乾ききらないうちに皆それぞれの名前を壁に刻んだ。仲間と共に作業した記念だ。

そのアイディアに萌香が嬉しそうに言う。


「まるで隠れミッキーみたいね」


萌香の言葉に滝田が奮闘し自分の名前の横にミッキーらしきものを描く。しかしどう見てもそれはミッキーには見えなかったので萌香が文句を言うと滝田は「参ったな―」と言って頭を掻いた。思わず他の四人は声を出して笑った。


こんな楽しいひと時も後で思い返せば店造りの良い思い出になるのだろう…雪子はそんな風に思った。


店が徐々に出来上がって来ると雪子は保健所への申請など事務的な手続きを始めた。その後は店で使う物の用意を始める。

テーブルや椅子などの家具、食器、ディスプレイ用品など細かい物を上げればきりがない。


雪子は店内を北欧風のインテリアで統一する事に決めた。

家具は北欧の大型家具店へ俊と買いに行きついでにディスプレイや食器も購入する。持ち帰った家具は店が完成してから俊が組み立ててくれると言った。


自分の店を持つという事は全てを自分好みにする事が可能なのだ。雪子はその楽しい作業にすっかりはまっていた。


スーパーの仕事についてはシフトを一日減らせないかと店長へ問い合わせた。するとちょうどその頃パートの一人がシフトを一日増やしたいと希望していたようで雪子が減らした分をその人に回す事になった。雪子の心配をよそに希望はあっさりと通った。


そしてカフェのオープン日は週3日。営業時間は午前11時~午後4時の無理のない営業時間に設定した。


家の改築工事が始まってから俊は毎日顔を出してくれた。俊の年内の仕事は既に終了しているので時間はいっぱいあるようだ。

雪子がパートや用事で外出する時は留守番も買って出た。


こうして雪子の夢の実現に向けて準備は着々と整っていった。

loading

この作品はいかがでしたか?

203

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚