この日仕事が休みだった雪子は駅前に用事があったので俊に留守を任せて午後から出かけていた。
午後3時になると俊は雪子が用意していたお茶菓子を持って行き職人たちが休憩を取った。
その時玄関からスーツ姿の若者が入って来た。若者は和真だった。
「えっと、一ノ瀬さんですか?」
「あ、はい。もしかして和真君?」
「はい、そうです。初めまして、母がいつもお世話になっております」
和真は挨拶をすると俊に頭を下げた。
「いえいえこちらこそ、初めまして一ノ瀬俊と申します。あれ? 今日仕事は?」
「小田原まで出張だったので少し早めに切り上げて寄ってみました。工事が始まったと母から聞いていたのでどんな感じかなーと」
和真は奥で休憩していた良や職人達にも挨拶をした。
そして祖父の書斎だった場所を見回すと驚いた顔をしている。
そこへ俊がお茶を入れて持って来た。
「お母さんはもうすぐ戻って来ると思うからまぁお茶でもどうぞ」
「ありがとうございます」
「あれ? 君の家なのになんか逆転してるな」
俊が笑ったので和真も釣られて笑う。
和真は急に真面目な顔をしてから俊に言った。
「あの…….母の事、よろしくお願いします」
和真は真剣に言うと再び頭を下げる。その言葉を受けて俊が言った。
「ありがとう。そう言って貰えて嬉しいです。私は父親代わりとしては頼りないかもしれないが何かあったら遠慮なく頼って下さい。多少は力になれると思うので」
俊からの思いがけない言葉を聞き和真は感激で目頭が熱くなる。
俊の事はメディア等の記事でしか知らなかったが、実際に会うとその大人の魅力にすっかり取り込まれていた。
同性から見てもカッコイイイケオジで、仕事に関しても尊敬できる一面を持っている。
この人ならきっと母を幸せに出来る……和真は直感でそう思った。
俊の言葉が嬉しかった和真はこう答えた。
「ありがとうとざいます。あーじゃあお言葉に甘えて早速お願いがあるのですが、一ノ瀬さんが最近作られた港区のローストビーフの店、あそこの席をなんとか取っていただけませんか? 2月にどうしても行きたいのに既に予約でいっぱいで……」
思いもかけず和真から頼まれ事をした俊は嬉しそうな表情を浮かべる。そして和真に聞いた。
「店長に聞いておくよ、いつが希望?」
「彼女の誕生日が2月24日なんです。出来ればそこで」
和真は手を合わせてお願いしますといったポーズをした。
「そういう事ならなんとかしないとな」
俊は和真に微笑むと、席が取れた時にはどこへ連絡すればいいかを和真に聞いた。
そこで二人は連絡先を交換した。
そこから二人は様々な話をした。
これからオープンするカフェの事や趣味の事、そして互いの仕事についての話で盛り上がる。
和真は今商社で飲食店系の仕事を受け持っているので俊から得る情報はかなり有益なものだった。
そして仕事を通じて同じ店と関りがある事もわかる。そこで更に意気投合した。
和真は俊と話しているとまるで父親と話しているような感覚になり少しくすぐったいような気持ちになった。
和真から見ても俊はとても魅力的だった。これなら自分の母親が惹かれるのも無理はない。
二人がすっかり盛り上がっていると雪子が用事を済ませて帰って来た。
その日の夜は和真を駅まで送りがてら途中うなぎ屋に寄り三人で楽しいひと時を過ごした。
コメント
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どんな時にも自分を優先し 守ってきてくれた母を思いやる、 息子和真くん✨ 俊さんなら、大切な母を 安心して任せられるね....✨ そして、和真くんにも 頼もしく イケオジな義父ができますね~😎👍️ これから家族になる3人に、幸せがいっぱい 訪れますように🙏🍀
どんな時も親子2人寄り添いながらお母さんの雪子さんを心配して見守ってきた和真君。 雪子さんの側に俊さんが寄り添ってくれて喜んでいた矢先の俊さんとのツーショットでの対面‼️ 話せば話すほどイケオジ俊さんの虜になるよね〜✨そしてこれから3人が家族となる日もそう遠くないよね🥰🥰🥰 元夫に甘えれなかった分男同士いろんな話をして楽しい時間を分かち合って欲しいな😊😊😊🫶
俊さん、雪子さんと和真くん。 新しい形の家族として楽しくてやっていけるね〜✨ 和真くん少しくすぐったい感じがしたみたいだけど、ここでも俊さんが自然体で接しているのがいい😊 父親というより男同士としてになるのかな〜。2人で飲みに行ったり色んなこと吸収して和真くんも将来イケオジだね😎✨