ダイイチワ:技術キョウテイを夢見て(カズサ編)
午後の工業専門校。
作業場の机には分解されたヤマトタブレットが並び、蛍光灯の光が鉄鋼片を照らしていた。
カズサ(19)は、水色の作業着に灰色の安全靴を履き、額には汗をにじませながら端末の内部を覗き込んでいた。短く切った前髪が揺れ、真剣な眼差しで工具を握る。
「よし……修理完了!」
彼は組み上げたタブレットを立て、笑顔でカメラに向かって両手を広げた。
机の隅には中古の小型カメラが設置され、撮影用の緑色ランプが光る。
「今日も直せました! 協賛ありがとう!」
明るい声で締めると、画面に向かって小さく頭を下げる。
夢は「技術紹介系のキョウテイ」になること。
協賛エンターテイナーで人気を得て、未来の子どもたちに「安心の技術」を広めることだった。
しかし、背後の大型モニターには「未認可使用監視ログ」という赤い文字が点滅していた。
学校に設置された監視システムが、許可証なしの撮影を検知していたのだ。
廊下を歩く教師は緑の作業着に濃い色の腕章をつけ、タブレット端末を見ながら言った。
「機材利用は必ず申請しなさい。協賛の許可がない配信は記録されるからね」
カズサは曖昧に笑って頷いたが、胸の奥で焦りを覚えた。
窓の外では、工業区の煙突から蒸気が立ち上り、その下に「協賛工業地帯」と大きく掲げられた看板が輝いている。街頭スクリーンではキョウテイの若者が元気よく叫んでいた。
「直せる! 見せられる! 協賛ありがとう!」
同級生たちは憧れの眼差しで画面を見つめ、口々に言った。
「俺もキョウテイになりたい」
「協賛機材を扱えるってかっこいいよな」
カズサは工具を握ったまま呟いた。
「ぼくだって……安心の未来を見せたいんだ」
だがその横で、監視ログは消えることなく、淡々と点滅を続けていた。
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