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チロリラン初めて知りました。杏樹に癒されるゆーやさん💖
美奈子先輩の推理にびっくり!でもほのぼの、うふふなお話でほっとしています。杏樹ちゃんをチャージした優弥さん、おバカ🍄(可哀想になってきた😅) やクズ家具屋兄妹に、どんな対策をするのか?楽しみですね! 個人的な事ですが、愛猫が急に具合悪くなり看病の為、少し離れます🥲回復できるといいな🥲
チーンの音と同時に昇天したのかと思いました(*´艸`*) もう二人、どう見ても新婚さんですね♡いらっしゃーい⤴⤴ 喜びを与えられ悦びを感じ、正輝を気の(こ)毒に思う程の余裕のある女性、杏樹( ´罒`*) 優弥さんの手によって、これから更に身も心も満たされていくのね〜ʚïɞ.•*¨*•.¸¸♬
金曜日、杏樹は先輩の美奈子と食事をした後21時過ぎに電車に乗っていた。
(あ、そうだ、スマホ見てなかった)
杏樹がバッグからスマホを取り出すと優弥からメッセージが入っていた。
【急に出張になった。帰るのは土曜の夜になりそうだ。帰ったら杏樹の家にすぐに行くからよろしく!】
杏樹はドキッとする。
(え? うちに来るの? 帰ってすぐに?)
杏樹はドキドキしながら返信した。
【わかりました。お仕事頑張ってね】
(出張は早乙女家具の件でかな?)
今日美奈子と食事をしながら杏樹は色々な話を聞いた。
先日優弥と得意先課長と融資課長の三人が血相を変えて会議室へ行った時、たまたま沙織が備品庫に伝票を取りに行ったらしい。本当にたまたまかどうかは怪しいがその時沙織は会議室から漏れてくる会話を聞いたようだ。
沙織によるとその内容は早乙女家具が数字を改ざんしていたという話だったらしい。
そこで美奈子はこう推理する。
「数字を改ざんって言ったら大抵は売上よね? 実際よりも大きい売上額を報告して銀行から多めに融資を引き出そうとしたんじゃない? でもさぁ、そんな事したらうちの銀行とは取引停止になると思うよ。そうなったらあの家具屋どうなるんだろう? 全国展開…ううん、海外まで店舗があるのによ?」
美奈子は大きなため息をついてから続けた。
「でさ、私思ったんだけど、莉乃が森田さんと付き合ったのはもしかして融資の為だったんじゃない?」
「え? でもそんな事をわざわざしなくてもあそこには昔から普通に融資していましたよね?」
「そうだけどもし改ざんの事がバレたら森田さんに手を打ってもらおうとでも思ったんじゃない?」
「…………」
杏樹は驚いた。そんな事の為に男を利用する女性がいるのかと思ったら同じ女として軽い衝撃を覚える。
しかし杏樹は別れ際に正輝が言っていた事を思い出した。
「でも森田さんは莉乃さんの事を好きになったって言ってましたよ。だから本気なんじゃ?」
「森田さん側はね。でも相手が同じとは限らないじゃない」
「そうでしょうか?」
もし美奈子の言うように莉乃が会社の利益の為だけに正輝と付き合っていたとしたら?
自分達の利益の為に懇意にしている銀行員を騙すなんてなんてひどい事をするのだろう。
杏樹にとって正輝はもう既に過去の人で未練は全くないが、もしそれが本当だとしたら気の毒だ。
その時杏樹は自分が正輝に同情している事に気付きハッとした。
(私ったらあんなひどい振られ方をしたのに何で同情なんてしているの? 『いい気味ね』くらいに思ったっていいのに)
そこで杏樹は気付いた。自分を傷付けたひどい男に対し杏樹が同情出来るのは全て優弥のお陰だという事に。
(副支店長のお陰で私はこんなにも余裕を持てるのかな? 副支店長が沢山の愛を惜しみなく注いでくれるから私はこんなにも優しい気持ちになれるのかも…)
そう気付いた杏樹はニッコリ微笑む。その時ちょうど駅に着いたので杏樹は笑顔のまま電車を降りた。
翌日、杏樹は朝から掃除をしたりスーパーへ買い物に行ったりバタバタとしていた。
(夜に来るって言ってたけど一体何時頃なんだろう?)
そう思いながら日が暮れ始めると夕食の支度を始めた。
優弥が何時に来るかわからないので、先に作っておいて温めるだけですぐに食べられるメニューにした。
メイン料理には電気圧力鍋のクッカーを使ってビーフシチューを作る事にした。クッカーでじっくり煮込めば牛スネ肉もホロホロになり美味しい。完成したら保温モードにしておけばいつでもすぐ食べられる。
今日はスーパーでかぼちゃが安かったので杏樹はかぼちゃのハニーナッツサラダも作る事にした。これも冷蔵庫で冷やしておけばすぐに食べられる。
(でもこれだけじゃなんかさみしいな……あとは何を作ろう?)
冷蔵庫を覗いた杏樹は卵を見てひらめく。
(そうだ、じゃがいもとひき肉もあるからスペイン風オムレツでも作ろうっと)
オムレツはレンジで少し温めれば美味しく食べられる。
メニューが決まると早速料理に取り掛かった。
料理が出来上がると美味しいパン屋で買って来たフランスパンを切り分けラップをかけておく。
酒のつまみにもう一品欲しいと思った杏樹はササッとカプレーゼも作った。
「これでいいかな?」
その時スマホが鳴った。
【今駅についたよ】
優弥からメッセージが届く。
(えっ? 嘘っ、いきなり? でもさすがに一度自宅に帰ってから来るわよね?)
そう思いつつ念の為杏樹は料理を温め始める。
それから5分後杏樹の部屋のインターフォンが鳴った。
杏樹が液晶画面を見ると優弥が玄関の前に立っている。
(えっ? 自宅に戻らずにいきなり来たの?)
驚いた杏樹は慌てて玄関へ向かった。
玄関のドアを開けるとスーツ姿の優弥が立っていた。手にはビジネスバッグと土産物の袋を持っている。
優弥はエプロンをつけた杏樹を見ると嬉しそうに微笑む。
「ただいま」
「おかえりなさい。着替えて来なくていいの?」
「いや、このままでいい…あ、これお土産」
「ありがとうございます」
杏樹が袋を見るとそれは福岡で有名な『チロリラン』という洋菓子だった。
杏樹は小さい頃からこの『チロリラン』が好きだったので喜ぶ。
「うわぁ、『チロリラン』嬉しい!」
「杏樹の好きなお菓子だったか…それなら良かった」
優弥は中に入るとドアの鍵をかける。
そしてスリッパを履くとすぐに杏樹を抱き締めた。
「あーっホッとする。一刻も早くこうしたくて急いで帰って来たんだ」
「え? じゃあ本当はもっと遅くなる予定だったの?」
「うん。ちなみに向こうでは得意先課長と寝る間も惜しんでホテルでずっと数字と睨めっこだったからな、疲れたよ」
それを聞いた杏樹は今回の福岡出張はやはり早乙女家具の件で行ったのだなと確信する。
早乙女家具は福岡に何店舗も出店していた。
そこでふいに優弥が杏樹の唇を奪う。
「あっっ」
声はすぐにかき消され杏樹は優弥の熱のこもったキスに襲われる。そしてキスはどんどん激しくなり廊下には二人のリップ音が響き続けた。
(あ…なんかいつもよりも激しい……どうして?)
杏樹はあっという間に巧みなキスに飲み込まれていく。そして次第に杏樹の息は荒くなり身体の奥が疼き始めた。
杏樹の膝がガクガクと震え出し立っていられずその場にへたり込みそうになった時、突然キッチンから『チーン』という音が響いた。
そこで優弥は笑い始める。
「電子レンジに邪魔されたな。今すぐ杏樹を押し倒したい気分だがそれと同じくらい腹もペコペコだよ。なんだか美味しそうな匂いもするし先に飯にするか?」
優弥は杏樹のおでこにチュッとキスをすると杏樹の手を握りリビングへ向かった。
杏樹は頬を紅潮させたままよろよろと優弥についていく。
リビングに入った杏樹は優弥から上着とコートを受け取るとハンガーへ掛けた。そしてキッチンへ行き夕食の準備を始める。
「ちょっと一件だけ処理しちゃっていい?」
優弥はソファーへ座るとノートパソコンを取り出して電源を入れた。
「あ、どうぞ。その間に用意しますから」
「うん、ありがとう」
優弥は早速作業を始めた。
(なんか大変そう……)
そう思いながら杏樹は夕食の支度を続けた。
杏樹が用意した食事はどれも好評だった。優弥は美味しいと言ってシチューをおかわりした。
二人は食事と共にワインを楽しみながら福岡の話で盛り上がる。杏樹は昔一度だけ福岡へ旅行した事があるので興味津々だ。
食後はコーヒーと共に優弥がお土産に買って来てくれたお菓子を食べた。杏樹は久しぶりに食べるその味に感動する。
「この『チロリラン』を初めて食べたのは小学生の時だったの。その時すっかりハマっちゃって福岡旅行に行った時に沢山買って帰ったわ。昔から味が全然変わらないなぁ…なんか懐かしい」
「そんなに好きだったならこれにして良かったよ」
優弥は満足気に頷く。その時壁にかかっている絵に気付いた。
「あの絵は涼平の奥さんのかな?」
「そうです。海に落ちているシーグラスの絵……」
その時優弥が何かを思い出したように立ち上がった。それと同時に今度はリビングボードの上のシーグラスが入った瓶に気付いた。優弥はその瓶を手に取ると中に入っているシーグラスを見つめる。
そしてハンガーにかかっている上着の傍まで行くとポケットの中をごそごそと探る。
「そういえば福岡で泊まったホテルが海に近くてさ…早朝散歩してたらこれを見つけたんだ。これだろ? シーグラスって」
優弥はその小さな欠片を杏樹に渡した。
杏樹の手のひらに載った小さな欠片は確かにシーグラスだった。
シーグラスは全ての角が丸みを帯びすべすべしている。色は淡いブルーでとても優しい色をしていた。
それを見た杏樹は感動していた。
「わざわざ拾って持って来てくれたの?」
「うん…だって集めてるんだろう?」
優弥はもう一度リビングボードの上の瓶を手に取るとシーグラスを見つめながら言った。
「この中の一つ一つに杏樹の思い出があるんだろう? 素敵じゃないか! それに三浦半島へ行った時は砂浜に寄ってやれなかったからせめてこれで我慢してもらおうと思ってさ。まあ砂浜のある海にはまた連れて行ってやるから」
優弥はそう言った後瓶を元の位置に戻す。その瞬間優弥は背中に軽い衝撃を受けた。それは杏樹が優弥の背中に抱き着いてきたからだった。
「ありがとう……そういうの凄く嬉しい」
杏樹は優弥の背中に顔を押し付けながら言う。
「ハハッ、杏樹から抱き着いてくれるなんて感激だな。そんなに嬉しかったのか? でもただのガラスだぞ? そんなんで嬉しいのか?」
「嬉しいに決まってるわ! だってわざわざ拾って持って帰ってくれたのよ…私にとっては宝物だわ」
杏樹は更に優弥にギュッとしがみつく。
「おいおい、どうせなら正面からが良かったな―」
優弥は優しく杏樹の手を引き剥がすと今度は正面から杏樹を抱き締めた。
「ベッドはあっち?」
優弥が耳元で囁いたので杏樹はコクリと頷いた。
「よしっ、杏樹覚悟しろよ! 今夜は寝かせないからな」
優弥は笑顔でそう言うと、杏樹を軽々と抱き上げてから寝室へ向かった。