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放課後、昇降口そばのベンチ。夕焼け気味。3人が他愛もない感じで座っている。靴音が響く中、遠くから誰かの話し声が近づく。
通りがかりの男子生徒(声のみ)
「——あいつ、リレー出るらしいよ。脚速いんだって」
別の声
「え、あいつ?あんましゃべらねえし、キャラちげぇくね?」
3人の視線が合う。名指しされなかったが、何となく察している空気。
蓮司(靴の踵をトントン鳴らしながら)
「……選ばれたじゃん、遥。おめでとう?」
遥(無表情で)
「出てない」
日下部
「推薦されたんだろ?リストに名前あったって、担任言ってた」
遥(短く)
「勝手に入れられた。断った」
蓮司(あくびしながら)
「断っても、クラス内で話題になるだろ。“なんで?”って」
遥(ぽつり)
「そういうの、めんどくさい。目立つの、やだ」
日下部(少し考えて)
「でも、お前、運動できるのに。体育のとき、わりと速かったろ」
遥(首をふる)
「速くても、見られるのが無理。……評価されるの、無理」
蓮司(軽く吹き出す)
「褒められるのが嫌い、ってやつ?珍しい趣味だね」
遥(無言。視線を落としたまま)
日下部(小声で)
「……違うだろ。たぶん、“褒められた先”が怖いんだよ」
蓮司(珍しく黙る。少し目を伏せてから、冗談ぽく)
「ま、走った瞬間に“空気読め”とか言われたら最悪だしな」
遥(ふっと笑う)
「あるかもね、“調子乗んな”って」
日下部
「……誰も言わねぇよ、そんなこと」
遥(目線だけで日下部を見る)
「そう思うでしょ?」
蓮司
「うん。俺は言わないけど、言うやつは言うよ」
日下部(歯を食いしばりそうな顔で、俯く)
蓮司(肩をすくめて)
「出たら目立つ、断ったら気まずい、無視したら文句言われる。どの選択肢も地雷原。やっぱ、面白い学校だよ」
遥
「選ばれたって言われるの、こわいよ。“名前を出された”ってだけで、何かが落ちる感じする」
日下部
「……落ちないように、俺はそばにいるよ」
蓮司(ふっと鼻で笑って)
「お、らしいね。……でも、それで巻き込まれる覚悟も、しときなよ?」
日下部(静かに)
「もうしてる」