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デザートを食べ終えると時間もだいぶ遅くなっていたので、省吾と奈緒は帰る事にした。
「奈緒ちゃんまた来てね! 今度はゆっくり泊まっていって!」
「ありがとうございます」
「省吾君、帰り道気を付けて」
「はい。義兄さん、東京に来た時はまた連絡下さい」
「うん、連絡する」
「冬真は勉強頑張れよー」
「うん。僕も東京行ったら連絡していい?」
「おうっ、待ってるぞ」
そして省吾と奈緒は三人に別れを告げ松倉家を後にした。
省吾の家族と過ごした時間はとても楽しかった。
つい時間を忘れて話し込んでしまった。
車に乗った奈緒は、シートベルトを締めると薬指のルビーにそっと触れる。
確かに感じるその重みに、奈緒の心は安らぐ。
省吾が車をスタートさせるとすぐに、奈緒が言った。
「あの……今日はありがとうございました。こんなに素敵な指輪を……」
「気に入ったのが見つかって良かったね」
「はい。ずっと……ずっと大切にします」
「うん。ちゃんと毎日着けろよ」
奈緒はコクリと頷く。
「あ、一つ言っておくけど、俺と喧嘩しても海にだけは捨てるなよ!」
省吾はニヤリと笑って言った。
「もうあんな事はしませんっ」
ムキになっている奈緒を見て省吾が笑う。
そして続けた。
「もう、前の指輪の事は忘れるんだ」
「え?」
「海に捨てた指輪の事だよ。婚約指輪だったんだろう?」
「…………」
「まだあの指輪に未練があるのか? それとも婚約者に?」
「み……未練なんかありませんっ」
「じゃあなぜあの時指輪を探してたんだ? 未練がなかったら探さないだろう?」
「それは……」
「やっぱりまだ未練があるのか?」
「違いますっ!」
奈緒は省吾が何か勘違いをしていると思い、正直に話す事にした。
「指輪を探していたのは、彼に未練があったからじゃないんです。あの時はちょっと色々あって、彼のご両親から指輪を返せと言われるかもしれないと思い、探していただけなんです。まあ結局言われませんでしたが」
奈緒の説明を聞いた途端、省吾は「なんだ!」と言う顔をしていた。
「そういう事だったのか。俺はてっきりまだ未練があって、指輪を捨てた事を後悔してるのかなと思ったよ」
「違います。もし彼に対してまだ何か残っているとしたら、それは『未練』ではなく『情』のようなものだと思います」
「そっか」
「それに彼は浮気をしていたんですよ? そして何も言わずに浮気相手と一緒に突然いなくなっちゃったんです。そんな人に未練なんてこれっぽっちもありませんから」
「そうだよな。だったら俺の勘違いだったんだな」
その時奈緒は急に、自分の中から激しい怒りが湧き上がってくるのを感じた。
そして初めて気付く。
(そっか……私は怒ってたんだ……私は徹に対しての怒りでいっぱいだったんだわ……)
徹の死後、奈緒は二人に対する怒りをずっと胸の内にしまい込んでいた。
そうでもしないと、自分が壊れてしまいそうだったからだ。
二人を責めたくても責められない。二人はもうこの世にいないのだ。
その怒りをどこにもぶつけられずに、奈緒はずっと心の奥にしまい込んでいた。
その怒りが漸く姿を現したのだ。
自分を欺いた徹を許さない。あの二人を許さない。奈緒は自分の気持ちを素直に認める事で、一気に心が解放されるような気がした。
奈緒は無意識にルビーに触れる。そしてバッグから携帯を取り出すと、
【ルビー 石の意味 効果】
と検索をかけてみる。
検索結果にはこう書かれていた。
●不屈の精神を育む
●魔除けの効果
●自信を高め、信念を持って行動出来るようになる
●気力を高め、前へ進むよう導いてくれる
(これからはこの指輪が守ってくれる……)
奈緒はそう思うと指輪をギュッと握り締めた。
奈緒があまりにも静かなので省吾は隣をチラリと見た。
すると、奈緒は清々しい表情をしていたので安心する。
その後車は順調に走り続ける。
しばらくすると、助手席からスース―と言う寝息が聞こえてきた。
奈緒が窓にもたれかかるようにして眠っている。
「寝ちゃったか」
省吾はそう呟いてから無意識に顎髭を触る。
そしてこう呟いた。
「少しずつでいいんだよ奈緒、少しずつ、ゆっくりでいいから……俺の元へ来い」
奈緒の穏やかな寝顔を見ながら、省吾は優しく微笑んでいた。
コメント
23件
心の傷が癒え、婚約者と その浮気相手に対する怒りの気持ちが 素直に表せるようになってきた奈緒ちゃん....🍀 さまざまな新しい出会いや、新たなお守りの効果も じわじわと出て来ているかも⁉️ 省吾さんの、 奈緒ちゃんへの純粋な想いに ドキドキ キュンキュン....💖✨ きっと情熱的な赤い石のパワーが、二人を結びつけてくれるよ✨💍✨
きゃーん💕聞いちゃった聞いちゃった♪ 省吾さんの想いが早く伝われー😊
省吾さん、やっぱり奈緒ちゃんの事好き🩷だったんですね~😆 寒い日に指輪💍を海に捨てたら、もう出会いが有ったんですね~🥰