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神殿の応接室は、儀式の広間よりもずっと現実的な場所だった。
石壁は同じだが、長机が置かれ、椅子が並び、書類が積まれている。
窓から差し込む光は普通の昼の光で、ここが日常の延長にある場所だという感じがした。
陽和は椅子に座っていた。
向かいには昨日の老人神官がいる。
机の上には紙が置かれていた。
どう見ても契約書だった。
「勇者よ」
老人が言った。
「旅立ちの準備が整った」
あまり整っている気はしなかった。
「安全確保のため、専属の同行者をつける」
陽和はうなずいた。
それはありがたい。
暖かくするしかできない勇者が一人旅をするのは、どう考えても無理がある。
「入れ」
老人が言った。
扉が開いた。
三人が入ってきた。
最初に目に入ったのは剣士だった。
背が高く、鎧を着ている。姿勢がまっすぐで、歩き方も無駄がない。
いかにも強そうだった。
安心できる。
剣士は陽和の前で止まり、深く礼をした。
「剣士レオルです」
声も真面目だった。
「命に代えて勇者様をお守りします」
そこまでしなくていい気がした。
「よろしくお願いします」
陽和は言った。
レオルは真剣な顔でうなずいた。
次に出てきたのは魔法使いだった。
若い女性だった。
椅子を引いて座る。
すでに少し疲れているように見える。
「ミナ」
それだけ言った。
「魔法使い」
簡潔すぎた。
陽和は言った。
「よろしくお願いします」
ミナは陽和を見た。
少し間があった。
「能力は聞いた」
嫌な予感がした。
「ぬるいんでしょ」
核心だった。
陽和は言った。
「はい」
ミナはうなずいた。
「正直でいい」
評価された気がしなかった。
最後に神官服の青年が前に出た。
元気だった。
「神官フィルです!」
声が明るい。
「勇者様の祝福は偉大です!」
初対面なのに断言された。
陽和は言った。
「どのへんがですか」
フィルは迷わなかった。
「これから証明されます!」
未来の話だった。
老人神官がうなずいた。
「この三名が勇者専属パーティーとなる」
正式決定らしい。
「本日より行動を共にせよ」
陽和は言った。
「よろしくお願いします」
レオルは力強く言った。
「必ず魔王を討ちます」
陽和は言った。
「戦うのは主にそっちですよね」
レオルはうなずいた。
「勇者様には大きな役目があります」
何だろう。
フィルが言った。
「祝福です!」
それは知っている。
ミナが言った。
「暖かい人」
少し違う。
老人神官が紙を差し出した。
「任務書だ」
陽和は受け取った。
読んでみる。
勇者陽和。
魔王討伐任務。
同行者三名。
装備支給。
ここまでは普通だった。
最後の一行で手が止まった。
『特記事項:勇者は中央に配置すること』
陽和は顔を上げた。
「中央って何ですか」
老人神官は言った。
「祝福の有効範囲は半径三メートル程度と推定される」
具体的だった。
「よって常に中央に位置せよ」
命令だった。
陽和は言った。
「陣形の話ですか」
「そうだ」
レオルがうなずいた。
「理にかなっています」
そうだろうか。
ミナが言った。
「動かない方がいい」
陽和は言った。
「動きますよ」
フィルが言った。
「最小限でお願いします!」
制限がついた。
陽和は言った。
「勇者の扱いじゃないですよね」
老人神官は静かに言った。
「勇者に無駄な祝福はない」
またその言葉だった。
話が終わり、三人と一緒に廊下を歩く。
しばらく沈黙が続いた。
最初に話したのはレオルだった。
「勇者様」
「はい」
「一つお願いがあります」
真剣な顔だった。
「できるだけ近くにいてください」
理由は分かる。
だが言い方がひどい。
ミナが言った。
「三メートル以内」
正確だった。
フィルが言った。
「祝福の範囲です!」
知っている。
陽和は少し考えてから言った。
「つまり」
三人を見る。
「俺が暖房なんですね」
三人は同時にうなずいた。
一致していた。
その瞬間、陽和は理解した。
自分の勇者としての役割は、
どうやらかなり具体的に決まっているらしい。