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柊様 押せ押せな感じしますけど(╹◡╹)♡ 花梨ちゃんとコーヒー飲みながらもっと押していくのかな⁇このあとが楽しみ😊
何度も挨拶を無視するような萌香の事はモヤモヤするよね( ˘•ω•˘ ).。oஇこれは話してスッキリしちゃえ💪 柊さんは花梨ちゃんが気になってたんだよね(*´罒`*)ニヒヒ♡ しっかり相談に乗ってあげてね🫶
チクっちゃお〜😊 ふふふっ😎
翌週の月曜日、営業第二課のメンバーは駅前の居酒屋で花梨の歓迎会を開いていた。
不動産業界は、火曜日と水曜日が休みのため、飲み会は月曜日に行われることが多い。
係長の乾杯の音頭が終わると、それぞれが食事をしながら会話を楽しんだ。
花梨は指導係の小林美桜の隣に座りビールを飲んでいると、美桜が彼女に声をかけた。
「どう? もうすぐ一週間経つけど、慣れた?」
「はい。全体の流れは前の会社とほぼ同じなので」
「同じ不動産会社だものね。多少違いはあっても、水島さんならきっとすぐ慣れるわよ」
「小林さんが丁寧に教えてくださるので心強いです」
「それなら良かった!」
その時、前の席に座る佐竹則之(さたけのりゆき)が花梨に声をかける。
「水島さん、以前は村田トラストにいたんですよね?」
「はい」
「社長賞を取ったって本当ですか?」
「はい……。でも、たまたまで運が良かっただけです」
「またまた、謙遜しないでください。運だけじゃ表彰なんてされませんから」
佐竹は笑顔でそう言った。
すると、今度は佐竹の隣に座っていた中谷明人(なかたにあきと)が口を挟む。
「その若さで社長賞なんてすごいよなあ。俺なんか、まだ一度もトップを取れたことないのに」
中谷のボヤキを聞いていた美桜が、花梨の隣からピシャリと言った。
「中谷さんは、外回りでサボってばかりいるからですよ」
「えーっ、サボってなんかいませんよー。僕は現地調査に時間をかけているだけです!」
「それが、サボりなんだよ!」
佐竹の突っ込みに、花梨と美桜が声を上げて笑う。
少し離れた席で酒を飲んでいた柊は、楽しそうな四人の様子を静かに眺めていた。
(すっかり馴染んだようだな……)
新入りの花梨が同僚たちとざっくばらんに話す様子を見て、柊はほっと安堵した。
その時、隣に座っていた係長の沼田が声をかける。
「課長、実は社を出る少し前に、浜田様からお電話がありまして……」
「浜田様が? 何て?」
「ご実家の件で、もう一度来てもらえないかと」
「そうか。他社とも話をすると言ってたが、どうなったんだろうな?」
「さあ……電話口であれこれ聞いて、また気分を害されても困るので聞きませんでしたが……」
「わかった。休み明けに連絡を取ってみるよ」
「よろしくお願いします」
(今度は何としても契約を取らなければ……)
そう思いながら、柊はグラスに残ったビールをぐいと飲み干した。
歓迎会が終わり、居酒屋の前で解散すると、参加者の半数は二次会へ向かった。
花梨も誘われたが、会社での飲み会は一次会までと決めているので、やんわり断って駅へ向かう。
美桜と肩を並べて歩きながら、花梨は尋ねた。
「小林さんは、ご結婚されているんですよね?」
「そうよ。2歳の娘が一人いるの」
「わあ、可愛い盛りですね。今日はお嬢さんは?」
「夫が保育園へ迎えに行ったわ。夫は公務員で定時に上がれるから」
「そうだったんですか。ご主人、お優しいですね」
「ふふっ、結婚当初はそうでもなかったんだけど、娘が生まれたら豹変しちゃって」
「へぇ~。きっとお嬢さんにデレデレなんでしょうね~」
「そうなの」
その時、駅へ到着したので、路線の違う二人はそこで別れることにした。
「じゃあ、また木曜日に! 明日明後日はしっかり休んでね」
「はい。小林さんも、良い休日を!」
二人は笑顔で手を振り合うと、それぞれの路線へと向かった。
改札を抜け、ホームに降りた花梨はホッと息を吐いた。
(みんないい人でよかった……。ただ、一人だけ微妙な感じの人がいるけど……)
花梨は、まだ挨拶も交わしたことのない円城寺萌香の顔を思い浮かべた。
出社して挨拶をしても、萌香にはいつも無視される。
最初から敵意をむき出しにされているのがわかり、花梨は頭を悩ませていた。
(今はあまり関わりがなくても、いずれ仕事で話すこともあるのに……困ったな……)
そう思いながら花梨が深いため息をついた時、突然低い声が響いた。
「どうした? 深刻な顔をして」
驚いた花梨が振り向くと、そこには課長の城咲柊が立っていた。
「課長!」
「同じ路線みたいだな」
「あ、はい……」
「電車が来た。乗るぞ」
「は、はい……」
思いのほか車内は空いていたので、二人は椅子に座ることにした。
並んで腰を下ろすと、柊が花梨に尋ねる。
「何か悩みがあるなら、聞くぞ」
その言葉に、花梨は驚いてこう返した。
「いえ……特に悩みというわけでは……」
「言ってみろ。部下がホームでため息をついていたら、気になって今夜眠れないじゃないか」
「え? 課長が? 課長なら、大地がひっくり返っても眠れそうですが……」
花梨は少し酔っていたのか、ついそんな軽口を叩いてしまう。しかし、それを聞いた柊は、突然声を出して笑った。
「ははははっ、君は面白いことを言うなあ」
「あっ、す、すみませんっ! 昔から酔うととんでもないことを言ってしまう節があって……すみませんっ」
「謝らなくてもいいよ。で、どんな悩みなんだ?」
「だから、大したことでは……」
ちょうどその時、電車が花梨の下車する駅に到着した。
「あ、課長! 私、この駅なので……」
「ん」
柊は花梨と一緒に立ち上がると、彼女の後に続いて一緒に電車を降りた。
「え? 課長もこの駅なんですか?」
「いや、俺はもう一つ手前の駅だ」
「え? 乗り過ごし……?」
「いや、わざとだ。部下の悩みを聞いてからじゃないと、帰るに帰れないからな」
「そんなことのために、わざわざ乗り過ごしたんですか?」
花梨は驚きのあまり、素っ頓狂な声を上げた。
「お、ちょうどそこにカフェがあるな。よし、あそこでコーヒーを飲んでいくか」
「か……課長!」
「なんだ?」
「悩みなんて、本当にないですから!」
「うん、わかったよ。でも、一杯コーヒーが飲みたくなったから付き合え」
「…………」
柊がまったく引き下がる様子がないので、花梨は小さくため息をついて、仕方なく後に続いた。