テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
放課後。
教室の窓から、部活帰りの声が聞こえてくる。
相談者は両手でペットボトルを握ったまま口を開いた。
「俺、本音を言うと後悔するんです」
遥は視線を向ける。
「どんなふうに」
「その時は『言ってよかった』って思うんです。でも、少し時間が経つと、『やっぱり言わなきゃよかった』って」
少し笑う。
「全部取り消したくなる」
教室が静まる。
「何を話した」
遥が聞く。
相談者は少し考えた。
「つらかったこととか、不安なこととかです。普段あんまり話さないから思い切って話すんです」
一拍。
「でも家に帰ると、『重かったかな』『困らせたかな』『余計なこと言ったかな』って考え始める」
視線が落ちる。
「相手から何も言われてないのに一人で勝手に恥ずかしくなってる」
沈黙。
遥は尋ねる。
「その相手は」
少し間。
「聞いてくれたのか」
「はい」
「嫌そうだったか」
「そんな感じはしなかったです」
「責められたか」
「それもないです」
教室が静まる。
遥は少し考える。
「じゃあ」
静かに言う。
「取り消したくなる理由は、相手じゃない」
相談者は顔を上げた。
「え」
「本音を見られた自分だ」
沈黙。
相談者は言葉を失う。
遥は続ける。
「話した内容より『弱い自分を見せた』って感覚の方が残ってる」
教室が静まる。
相談者は小さく息を吐いた。
「……あります」
「本音を言った後って何か急に恥ずかしくなるんです。何であんな顔して話したんだろうとか、何であそこまで言ったんだろうとか」
苦笑する。
「思い出したくなくなる」
遥は机に手を置く。
「本音を言うと」
少し間。
「相手との距離は近くなる。その代わり自分は無防備になる」
教室が静まる。
「だから怖い」
相談者は黙って聞いていた。
「でも」
少しして言う。
「本音を言わないと誰にも分かってもらえない気もするんです」
遥は頷く。
「その通りだ」
短く。
「だから迷う」
一拍。
「言っても怖い。言わなくても苦しい」
教室は静かなままだった。
相談者は窓の外を眺める。
「俺」
少し笑う。
「本音を話したことを後悔してるんじゃなくて、本音を話せるくらい弱ってた自分を見たくなかったのかもしれない」
遥は立ち上がる。
「そういうこともある」
鞄を肩にかける。
「本音を話したことまで否定しなくていい」
夕日が教室をゆっくり染めていく。
本音を話した後、急に全部なかったことにしたくなる。
それは、相手を信じられなかったからではなく、弱さを見せた自分にまだ慣れていないからなのかもしれない。
本音は、勇気を出して終わるものではない。
話した後の不安まで含めて、少しずつ受け止めていくものなのかもしれない。
コメント
1件
うわああ…このエピソード、心に刺さりすぎて泣きそう😭💦 「本音を話した後の不安」って、めっちゃわかる…!言った直後はスッキリするのに、帰宅後に「重かったかな」って一人で後悔し始めるの、まさにそれ! 遥さんの「相手じゃない、本音を見られた自分が恥ずかしいんだ」って分析、えぐいくらい的確で鳥肌立った…👏 最後の「話した後の不安まで含めて受け止める」って言葉に救われたよ。完全な正解じゃなくて、そうやって少しずつ慣れていくしかないんだね…。 めっちゃ共感できる話をありがとう、ruruhaさん!!🌸
#一次創作
ruruha
360
ruruha
440
ruruha
316
☘️
34