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叩かれた頬に、じんわりと熱がこもる。だが遥は声を上げなかった。涙も、こぼれなかった。

「……やっぱ、鈍いんじゃね?」


ひとりが呟くと、別のひとりが笑った。


「じゃ、さ──鈍い奴には“分かるまで”教えてやるべきじゃね?」


誰かの膝が、遥の脇腹にねじ込まれた。  骨と骨の間に鋭い痛みが走り、声が漏れそうになるのを遥は歯を食いしばって堪えた。  それが彼らには面白かったようで、すぐに次の一撃が飛んできた。


「……はっ、意地張ってんじゃねぇよ」 「でも、その顔いいな。ちょっと歪んできた」 「じゃあ、さ。次、順番な。ちゃんと一人ずつやろうぜ」


順番、という言葉に、遥の背中に冷たい汗が滲む。  彼らにとってこれは「遊び」だ。手順があり、ルールがある。彼らの理屈で、彼らの支配で動く小さな世界。  その中心に、遥はいる。


スラックスのベルトに指がかかる感触に、全身が跳ねる。


「やめろって……!」


叫びが漏れた。  その瞬間、彼らの動きがわずかに止まる。だがそれは、沈黙ではなく──「音」を味わうための間だった。


「うわ、いい声。録れた? さっきの」


「まじで、これ、今日のハイライトだな」


スマートフォンの光が再び遥の顔に向けられる。


「次、もうちょい恥ずかしいセリフ言わせてみる? てか、自分で言わせた方がリアルじゃね?」


「……言うわけ、ねえだろ」


遥は低く答えた。震えていたが、言葉ははっきりしていた。


「そーいうとこがさ。ダメなんだよ、お前」


ひとりが拳を握り直し、無造作に腹部へと打ち込んだ。


息が詰まる。肺の中の空気が押し出され、喉が痙攣する。  それでも、叫びはあげなかった。


「……なあ。あいつ、ほんとに“壊れて”ないのか?」


小さくそう呟かれた声が、遥の耳に届く。


「違うよ。これ、ちゃんと壊れてる。だから、ちゃんと“泣くように”作られてんの」


誰かの囁きが、耳元で笑う。


「壊れるのは、一回じゃないからさ。何回でも、試せばいい」


次の瞬間、背中が個室の壁に叩きつけられ、肩を押さえつけられたまま、彼の制服の第一ボタンが外された。


「お前がどこまで堪えられるか──試してやるよ」


その言葉に、遥は口を開いた。  だが、悲鳴ではなかった。


「……死ぬ気、ねぇよ。だからって、黙ってる気も、ねぇ」


その声は掠れていて、けれど、凍るほど冷たかった。


嘲りも、怒りも、あざけりも飲み込んだその声に、空気が微かに揺れた。  誰かが、ため息を吐く。


「──めんどくせえな、こいつ」


そう言った生徒の手が、遥の喉元に伸びる。


そして、次の「ゲーム」が始まる合図のように──、誰かの笑い声が、個室の薄い壁に反響した。


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