テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#コメディ時々暗闇
奏音•*¨*•.¸¸♬︎💙
1,074
NGS_ヘビーなしっぽ
142
#妖怪
百はな🍑
756
コメント
1件
寺島あおいです🤍 第35話、一気に読ませていただきました。バッファの「脳に指を突っ込んで笑う」描写、本当に狂気が伝わってきてぞわっとしました……。そんな中でアレンが「無様だな」と冷静に指摘する姿、めちゃくちゃかっこよかったです。咆哮で鼓膜破壊する攻撃も鮮やかで、思わず声が出ました。最後のシオリとNo.2のやり取りに思わず苦笑。戦場なのに身内でロックかけるカオス、好きです。アレンの「チッ」に安堵が滲んでいて、いい距離感だなと思いました。続きが気になります!
「う、うへへ……。私は王を守る盾だ……。ゴミどもを、すべて、すべて排除するのだ……ッ!」
自分の脳に指を突っ込んで笑うバッファ。血と脳組織を垂らしながら白目を剥くその姿は、本当にイカれてるぜ。
次の瞬間、バッファの巨躯が爆発的な速度で地面を爆ぜさせ、俺の目の前へと肉薄してきた。
――オラァッ!!
突き出された巨大な拳を腕で受け止めたが、衝撃が骨の髄まで響く。一撃がクソ重い!ドーパミンとアドレナリンを自傷行為で最大出力まで暴走させたせいか、スピードもパワーもさっきまでとは桁違いに上がっていやがる。
「うへはははは! 死ね! 死んじゃえ! 反逆者ッ!」
嵐のような連続殴打が、俺の肉体を削りにくる。
「やるな……。バッファ、でもよ……」
「がぁああああッ!!」
奴が放った大振りの右ストレート。俺はその軌道を野生の直感で読み、紙一重の身のこなしで強硬に受け流した。
がら空きになった奴の脇腹へ、薬で強化したカウンターの拳を深々と殴りつける。
ドガァアンッ!!
肉がひしゃげる凄まじい手応え。だが、自傷ハックでエンドルフィンを過剰摂取しているバッファは、笑ったまま体勢すら崩さねぇ。
「人の話は、最後までちゃんと聞けよ」
俺はライオンの爪を構え直し、襲いかかる奴の拳を最小限の動きで次々と避けていく。
「確かに攻撃力やスピードは上がっている。だけどよ、テメェの脳みそが完全にバグっちまってるせいで、その攻撃――ただの単調な力任せなんだよ」
指示を失った人形が狂ったように暴れているだけだ。軌道が全部分かる。
「お前は自分の脳に、能力を直接流し込んだ。……それはな、バッファ。お前自身が『考えること』を完全に放棄しちまった証拠なんだよ」
由緒正しき王の側近を自称していたこの大男は、今までこんな危機的状況に陥ったことが一度も無いんだろう。だから、追い詰められてパニックを起こし、安易な考えで自分自身に能力を使った。それが、お前自身の敗北を決定付ける最大の選択になるとはな。
「無様だな」
俺はあえて、バッファが放った単調な一撃を真正面から肉体で受け止めた。
「が、あははは! 捕まえ……っ!?」
拳を受け止めたまま、俺は身動きの取れなくなったバッファの顔面へと自分の顔を極限まで近づけた。そして、大きく顎を開き――。
「うおぉおおおおおおーーーーーーーッッ!!!!」
ライオンとイルカの遺伝子が混ざり合った、至近距離での巨大な超音波咆哮を、奴の脳髄へダイレクトに叩き込んだ。大気の歪みがバッファの頭部を強襲する。
――パキィンッ!
「あ、ぶ、ぶへっ……あははは……っ!」
両の鼓膜を物理的に完全破壊され、平衡感覚を失ったバッファの巨躯が、ドサリと地面へ崩れ落ちた。奴は耳から血を流し、倒れたまま、脳のバグが直らずに未だに壊れたように笑い続けている。
バッファ本体が完全に戦闘不能になったことで、周囲を取り囲んでいた笑顔の住人たちも、操り糸を切られたようにその場に次々と崩れ落ちて倒れていった。
「……住人たちより、お前の方がよっぽど楽しそうに笑ってるな」
虚しく響く奴の笑い声にヘドを吐き捨て、俺はたてがみを揺らしながら地を蹴った。
へたり込んだままのNo.2へと駆け寄った。
「おい、大丈夫か?」
声をかけると、No.2がゆっくりと顔を上げた。瞳の焦点は戻っているが、冷や汗を流してガタガタと震えている。コルチゾールの絶望からは脱却できたようだが、精神的なダメージは残っているらしい。
「あ、ああ、怖かった……!! もう帰っていいかな……。ア、アレン君! ボク死にたくないから!」
「……チッ、大丈夫そうだな」
いつものウジウジしたヘタレ発言を聞いて、俺は逆に安堵した。五体満足で生きてるならそれでいい。
「おい、いつまでも座ってんじゃねぇ。まずはテレビ塔の入り口に取り残されているシオリを迎えに行くぞ」
俺がそう言った瞬間、ビルの奥から凄まじい勢いでこちらに向かって走ってくる人影があった。
「来たわよ! アーちゃん! ――って、その傷……っ!」
シオリだった。俺の全身に刻まれた、薬物の過剰摂取による肉体の亀裂と、バッファの猛攻を防いだ無数の打撃痕を見た彼女は、一瞬で顔を真っ青に染めた。
「こんなもん、ただの掠り傷だ。気にすんな」
強がって見せたが、本音を言えば体内のシステムはとっくに悲鳴を上げていた。ライオンとイルカの遺伝子を連続使用した反動は想像以上に重い。
やべぇ、視界がチカチカして、直立不動を維持することすらまともにしんどいな。情けねぇ。そんな俺の限界を察知したのか、シオリの視線が、俺の後ろで怯えているNo.2へと向く。その瞳に、冷酷な怒りのノイズが走る。
「……あなた、私がアーちゃんをしっかり守ってあげてねって、出発する前に何度も言ったわよね?」
「い、いや、あの、ボク、その……ごめ、ごめんなさい……っ!」
「許さないわよ……」
シオリが全身からどす黒い殺気を放射した瞬間、No.2の脳内は一瞬で「この女、本気でボクを殺しにくる……っ!」という恐怖と嫌悪(負の感情)で埋め尽くされた。
「うわっ……!?」
カケルの肉体が、ピキリと不自然に凍りつく。シオリの絶対ルール――自分に負の感情を抱いた者を細胞レベルで固定する能力。さっきまでバッファのせいで動けなかった男が、今度は身内の八つ当たりで物理的にシステムロックをかけられた訳だ。
「はぁ……。テメェら、こんな戦場で何やってんだよ……」
俺はたてがみに覆われた頭を押さえ、深く、深くため息を吐き捨てた。