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ruruha
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きゆう
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中学3年・Tさん
私は、人から注意されるのが苦手です。
注意された内容については、「確かに自分が悪かったな」と思うこともあります。
でも、その瞬間から、その人のことが嫌になります。
それまで普通に話していた友達でも、急に全部嫌になる。
話し方とか、表情とか、前に言われたことまで思い出して、
「この人って前からこういうところ嫌だった」
と考え始めます。
あとで落ち着くと、そこまで嫌いじゃなかったことに気づきます。
でも、注意された直後は本当に無理になります。
注意されたことが嫌なのか、その人が嫌なのか、自分でも分かりません。
こんなふうに人を嫌いになる自分は、性格が悪いのでしょうか?
遥「……注意された瞬間に、その人の全部が嫌になるんだ」
T「はい」
遥「注意された内容については?」
T「自分が悪いと思うこともあります」
蓮司「じゃあ、そこは分かってるんだな」
T「はい」
蓮司「なのに、その人まで嫌になる」
T「そうです」
蓮司「面白いな」
T「面白いですか?」
蓮司「いや、悪い意味じゃない。感情が一気に別のところまで広がってる」
T「……」
日下部「注意されたことへの反発と、その人への評価が一緒になっている」
T「たぶん、そうです」
遥「俺も、何か言われた直後って、その人の言葉だけじゃなくて、存在そのものが嫌になることある」
T「遥くんも?」
遥「ある」
T「でも、自分が悪いって分かってても?」
遥「そこが一番嫌なんだと思う」
T「……」
遥「『分かってるのに言われた』って感じになるから」
T「それです」
蓮司「なるほど」
T「自分でも分かってるのに、わざわざ言われると腹が立つんです」
蓮司「それなら、人そのものが嫌というより、『今その言い方されたこと』が嫌なんじゃないか」
T「……」
蓮司「でも、その不快感を処理するのに、その人の評価まで下げてる」
T「評価を下げる?」
蓮司「『こんな言い方する人だから嫌い』とか、『前から嫌なところあった』とか」
T「あります」
蓮司「それ、後から理由を追加してるだけかもしれない」
T「……」
蓮司「最初にあるのは『注意されて嫌だった』」
T「はい」
蓮司「そこから『だからこの人は嫌な人』に変えてる」
T「……確かに」
日下部「ただ、注意の仕方が悪い場合まで全部おまえの問題にする必要はない」
T「え?」
日下部「同じ内容でも、言い方は別だ」
T「……」
日下部「必要な注意だったとしても、言い方まで正しいとは限らない」
T「それはあります」
日下部「なら、『内容は自分が悪かった。でも言い方は嫌だった』で分ければいい」
T「そんなふうに考えていいんですか?」
日下部「いい」
T「でも、それだと結局、その人を嫌ってることになりますよね」
蓮司「そこも違う」
T「?」
蓮司「『その言い方は嫌い』と『この人が嫌い』は別だろ」
T「……」
蓮司「人間って全部セットじゃないから」
T「……あ」
遥「その人の一部分が嫌だったからって、全部を嫌いにしなくてもいいんだと思う」
T「でも、一度嫌になると、昔のことまで全部嫌になってきます」
蓮司「それは記憶が後から味方してくるんだろ」
T「味方?」
蓮司「『ほら、やっぱり嫌な人だった』って納得するための材料を探す」
T「……」
蓮司「だから昔の些細なことまで出てくる」
T「あります。前にちょっと嫌だったこととか、急に思い出します」
蓮司「それ」
T「……」
蓮司「今の怒りを説明するために、過去から証拠を集めてる」
T「じゃあ、その過去のことは全部嘘なんですか?」
蓮司「そういう意味じゃない」
T「……」
蓮司「本当に嫌だったこともあるだろ。でも、それが今この瞬間に全部問題になったとは限らない」
T「……」
遥「たとえば、前にちょっと嫌だったことがあっても、そのときは普通に仲良くできてたんだよな?」
T「はい」
遥「じゃあ、今まで全部我慢してたわけでもない」
T「そうです」
遥「だったら、今の注意をきっかけに、過去まで全部『嫌だった』に塗り替えなくてもいいと思う」
T「……難しいです」
遥「うん」
T「注意されると、その人の顔を見るだけで腹が立つんです」
日下部「なら、その日は判断しなければいい」
T「判断?」
日下部「『この人が嫌いかどうか』を決めない」
T「……」
日下部「注意された直後に、人間関係の結論まで出す必要はない」
T「でも、嫌なんです」
日下部「嫌なのはそのままでいい」
T「……」
日下部「ただ、『嫌だから、この人とはもう無理』まで決めなくていい」
T「……なるほど」
蓮司「感情に有効期限をつける感じだな」
T「どういうことですか?」
蓮司「今日ムカついた。はい、それは今日の事実」
T「はい」
蓮司「でも、それを『この人はずっと嫌い』にするかどうかは別の日に決めればいい」
T「……」
蓮司「怒ってるときに、人生の人間関係まで整理するな」
T「それは確かに……」
遥「俺も、怒ってるときは全部嫌に見えることある」
T「じゃあ、どうしたらいいですか?」
遥「その場では、『今すごく嫌だ』だけにしておく」
T「だけ?」
遥「うん。
『この人が嫌い』じゃなくて、『今、この言われ方が嫌だった』って」
T「……」
遥「それなら、あとで変わってもおかしくないから」
T「もし翌日になっても嫌だったら?」
日下部「そのとき考えればいい」
T「もし一週間経っても嫌だったら?」
日下部「その時点でも嫌なら、距離を取るなり、付き合い方を変えるなりすればいい」
T「……」
日下部「時間を置いた結果まで否定する必要はない」
T「つまり、すぐ決めなくていい?」
日下部「そういうことだ」
蓮司「あと、おまえ」
T「はい」
蓮司「『注意された=自分を否定された』にもなってない?」
T「……なってると思います」
蓮司「だから余計に腹が立つ」
T「はい」
蓮司「『間違いを指摘された』じゃなくて、『自分そのものを否定された』に変わる」
T「……」
遥「それだと、注意した人まで敵に見えるよな」
T「はい」
日下部「そこも分ければいい」
T「どうやって?」
日下部「行動について注意されたのか、自分そのものを否定されたのか」
T「……」
日下部「前者なら、直すべきところだけ直せばいい」
T「後者だったら?」
日下部「その場合は、その発言自体を問題にすればいい」
T「……」
日下部「どちらにしても、『注意されたから自分には価値がない』にはならない」
T「……」
遥「それ、俺も気をつけたい」
蓮司「珍しく素直だな」
遥「うるさい」
Tが少し笑った。
T「なんか……人を嫌いになる前に、もう少し時間を置いてみようと思います」
蓮司「それでいいんじゃない」
T「でも、注意されたこと自体は嫌なので」
日下部「嫌だったことまで取り消す必要はない」
T「……はい」
遥「『言われた内容は納得できる。でも言われ方は嫌だった』でもいいし」
T「はい」
遥「『今日はこの人が嫌』でもいい」
T「それも?」
遥「うん。
明日の自分まで、今日の自分と同じ気持ちじゃなくていいから」
T「……それ、ちょっと楽です」
蓮司「感情って、毎回永久契約じゃないからな」
T「……ふふ」
日下部「今日嫌だったことを、今日のうちに人生の結論にしなくていい」
T「分かりました」
Tは相談用紙を鞄にしまった。
「ありがとうございました」
扉が閉じる。
遥「……注意されるのって、嫌だよな」
蓮司「おまえは特にだろ」
遥「……まあ」
日下部「ただ、注意されたことと、その人との関係は分けて考えた方がいい」
遥「うん」
蓮司「俺なら、注意された内容より、注意の仕方を覚えてるかもしれない」
日下部「そこも同じだ」
蓮司「何が?」
日下部「内容と、言い方を分ける」
遥「……今日、そればっかりだな」
日下部「必要だからな」
🗝 三人からのことば
遥
注意された直後に、その人の全部が嫌になることがあっても、その感情をすぐに「この人が嫌い」という結論にしなくていい。
「今、この言われ方が嫌だった」と分けて考えてもいい。
蓮司
怒っているときは、過去から「やっぱり嫌な人だった」という証拠を集めたくなる。
でも、今日の怒りと、これまでの関係全部を一緒にしなくていい。
日下部
注意された内容、言い方、自分の感情、その人との関係は別々に考えればいい。
その場で人間関係の結論まで出す必要はない。
コメント
1件
この話、めっちゃ刺さったわ……「分かってるのに言われると腹が立つ」って、めちゃくちゃ分かる。自分でも悪いって思ってるから余計にモヤるんだよな。蓮司の「感情に有効期限をつける」とか、日下部の「その場で人間関係の結論まで出さなくていい」って言葉、めっちゃ救われる。ruruhaさんの描く心理描写、解像度高すぎて好き🔥