ダイハチワ:AIコメントの影
夜の配信スタジオ。
人気配信者キョウテイの リオ(24) は、淡い水色のパーカーに細身のパンツ姿でカメラの前に座っていた。髪は柔らかな茶色で、首元には小さな緑のアクセサリーが光っている。
画面越しには数万人のエンターテイマーが集まり、コメント欄には「協賛ありがとう!」「安心だね!」と流れ続けていた。
「みんな、今日も来てくれて協賛ありがとう!」
リオは笑顔を作り、元気よく手を振った。
だがその裏で、モニターの片隅に表示される管理者用パネルには、赤いログが次々と点滅していた。
《統制外語フィルタ作動:削除済み》
《危険フレーズ検知:ユーザー強制退出》
観客の目には見えないその画面で、AIが即座に「統制外語」をはじき、残されたのは「安心ワード」だけになっていた。
リオは笑顔を保ちながら、目だけで管理パネルを追った。
「また今日も……」心の奥で小さく呟く。
同時に、別室のモデレーターが灰色の制服で並び、AIの判定をチェックしていた。
「今日は削除率が高いな」「でも市民には“安心”しか見えてない」
無機質な会話が飛び交う。
配信が終わり、リオは小さく息を吐いた。
「協賛ありがとう……でも、本当の声はどこへ行ったんだろう」
画面の外では、街頭スクリーンにダイジェスト映像が流れ、子どもたちが無邪気に唱和していた。
「協賛ありがとう!」「安心だね!」
リオは窓の外の緑色に照らされた街を見つめ、手のひらを強く握りしめた。
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