テラーノベル
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空がほんのり青くなってきた頃。森の空気がゆるく動いて、小鳥の声がぽつぽつ混じり始める。
焚き火の跡には、まだふたり分の座った痕が残っていた。
テントのジッパーががさっと開く。
蓮司「……おはよーございまーす……って、うわ、寝ぐせひど。オレ」
遥「……知らねーよ」
日下部「……朝、早いな」
蓮司「いや、鳥がうるさくて目ぇ覚めた。こちとら文明人なんで、自然に弱いの」
遥「パーカー裏返しだぞ」
蓮司「……うそだろ」
日下部「マジ」
蓮司「だっさ。あ〜……ていうか、君ら、夜ずっと外いたっしょ?」
遥「……なんでわかった」
蓮司「火の跡、まだちょっとぬくいし、足元に地面の跡。あと……空気感? 湿ってるけど、冷たくない」
遥「観察力、きもい」
蓮司「うん、自覚ある。あと、朝の遥は若干だけ機嫌がマシだよね。ツッコミ入れてる」
遥「は?」
日下部「そうかもな。いつもはもうちょっと……無」
遥「……」
蓮司「こわ、今の沈黙。おれ、今、軽く殺意を感じた」
遥「別に。めんどいだけ」
蓮司「それがいいんすよねぇ〜、君は。昨日の夜、なに語り合ってたの? 恋バナ? 将来の話?」
遥「……」
日下部「……夢の話した」
蓮司「あ〜〜〜!そういう“重い話”を二人で先にしてんのね!置いてけぼり!まじで!」
遥「お前いたら話せねーよ」
蓮司「それ正しい。ほんと正しい。おれ、たぶん焚き火にポテチ投げてた」
日下部「……火、消す気なさすぎだろ」
蓮司「え、逆に日下部がボケてくんのこわ。朝こわ。キャンプこわ」
遥「うるせぇな」
蓮司「いや、でもさ――お前ら二人がちゃんとしゃべってくれて、ちょっとだけ安心したわ。何も解決してないけど、“まだ壊れてない”ってわかると、ちょっとだけ救われるっていうか」
遥「……お前が言うなよ」
蓮司「ほんとそれ」
火の跡に、朝日が差し込んできた。
テントの影がのびて、背中をじんわり温める。
今日もたぶん、まとまりはない。
でも、“そこにいる”ことだけは、なぜか続いていた。
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